公開日 2017/03/17 14:42
アジア代表に話を聞く
【インタビュー】あえて挑戦したTHX HD認証。BenQホームシアタープロジェクターは「体験」にこだわる
編集部:押野 由宇
BenQから発売された、DLP方式で4Kを実現する世界初のホームシアタープロジェクター「HT8050」。その製品発表会では、ベンキューアジアパシフィック社長のJeffrey Liang氏が来日。同社の世界的なプロジェクター市場および新製品の概要について解説した(関連ニュース)。
発表会後、Jeffrey氏のほか、ベンキュージャパン代表執行役社長の菊地 正志氏、Senior Technical ManagerのEric HC Tsai氏、Marcom DirectorのSunny Chang氏を交えたインタビューを実施。日本市場での今後の展開について伺った。
■カジュアルとハイエンド、それぞれを見据えたラインナップ
世界におけるBenQのDLPプロジェクターのビジネスは、2014〜2016年の売上ではシェア24.8%、販売台数は280万台を超える。またフルHDのプロジェクター販売実績は世界一のシェアとなり、グローバルにマーケット展開を行っている。そんな同社は、日本におけるプロジェクター市場をどう捉えているのだろうか。
Jeffrey氏は「実は『ホームシアターファイル』誌を読んで、日本のユーザーがどのようにプロジェクターを使っているのかを学んでいました。日本では本格的な視聴のためのAVルームでの使用、もしくはリビングなどでカジュアルに楽しむ用途が重要と考えています」と大きく2つにターゲットを絞っているという。
また「BenQの本国となる台湾では、日本と同様に住宅事情の関係で、ホームシアターのために割けるスペースに限りがあります。しかし、そういった方々にも、プロジェクターの大画面を体験していただきたいと考えています。そのために、リビングルームでも使用しやすいような製品群も用意しています」と、台湾と日本に通ずる視聴環境に触れた。
そして「実際にリビングルームでプロジェクターを使ってホームシアターを楽しむには、準備の煩わしさなどいくつかのハードルがあり、まだまだ普及率は高くありません。そういった障壁をなくしていくため、約1.5mの投射距離で100インチを映し出せるような短焦点モデルや、フルHDでワイヤレス接続を可能とする製品などを開発しています」と具体的な機能を紹介した。
そうした上で、「プロジェクターによって家族のつながり、団欒の機会ができれば嬉しいと考えています。これからも、カジュアルな製品群には力を入れていきます」と、プロジェクターを気軽に楽しんで欲しいという思いを述べた。
BenQのプロジェクターは、カジュアルかつコストパフォーマンスが高い製品ラインナップが豊富だ。その一方で、今回HT8050のようなハイエンドなモデルがリリースされた。その理由について、「我々はメーカーとして、より良いものを世に出していきたいと常に意識しています。そういった理由から、ハイエンド・ハイスペックなモデルを開発することは必然であると言えます」と開発理念を語った。
また、「中国やインドネシアなど、経済的に豊かになってきていることから、そうしたマーケットも見据えて製品を拡充しています。4Kというトピックは、プロジェクターにおいても注目されています。今後、4K対応製品の販売台数は、いまの5〜6倍にも到達するだろうと予想されます。4Kの大画面をAVルームに持ち込みたい、という希望は多く、それに応えたいと考えました」という。
菊地氏は「4Kというキーワードに対応すること、日本のハイエンドユーザーに自信を持って薦められる製品であること。そうしたハイエンドモデルのシリーズへのスタートを切るのがHT8050になります。その後、上位に位置付けられるHT9050を、我々の体制が整った段階で、製品の拡充として展開したいと考えています」と、ハイエンドの製品群についての展開に触れた。
一方でHDRについては、「HDRはプロジェクターの規格として確たるものが定まっていないのが現状。まずはその対応基準が決まってからと考えていますが、日本においてHDRというキーワードが重要であることも理解しています。慎重になりつつも、その対応について検討していきたいと想います」とした。
■THX HDディスプレイ認証を取得する意味
新たに発売されるHT8050やHT6050では、THX HDディスプレイ規格の認証取得がポイントとして挙げられる。そのことについて聞くと、「ホームシアターにおいては、“リアルな映画館体験”が大事と考えています。そのためには、映画作品の本当の色を再現する必要がありました。そうした理由から、量産が遅れる可能性もありましたが、あえてTHX HD認証にチャレンジしました」とJeffrey氏は力強く答える。
さらに菊地氏が「従来モデルでもRec.709に対応していましたが、ハイエンドモデルとして、よりシネマの再現性を獲得するためにTHX HDの技術が重要と考えました。また、正式に認証された製品を提供することで、ユーザーに安心して使用していただけるものと思います」と続ける。
そして「我々がいくら“再現性が素晴らしい”とアピールしても、それを伝えるのは難しいことです。THX HD認証を取得することは国際的な機関による保証として、皆さんに信用してもらえることにつながります」というJeffrey氏の言葉からは、ユーザーに素晴らしいホームシアターを提供したいという考えが伝わってくる。
事実、THX HDの認証を取得するということは、相当な労力を必要とする。約18ヶ月にわたっての製品開発期間では、国際標準規格であるRec.709への準拠に必要となるデータ分析の10倍の分析が行われ、7倍のエンジニアリングの取り組みとリソースが投入されたという。
実際にアメリカのTHXの試験場に足を運び、何度も製品を持ち込んだというEric氏は、「試験では、色々な基準に合致しないといけません。それに対応するために、ひとつひとつをクリアしていくトライ・アンド・エラーを幾度となく繰り返しました」と認証を得るための苦労に触れた。
そして「THX HDの認証を得たプロジェクターは非常に少ないのですが、それだけ解像度、レンズの品質、画像処理なども厳密にテストする画像品質に特化したものとなっています。つまり今回の取得は我々のテクノロジーの高さを認められたということですので、それは大変嬉しく思います」と語った。
さらに菊地氏は「ハイエンドユーザーは映像だけでなく、サウンドも含めてクオリティを求められると思います。そうした時に、少なくとも映像の再現性においては間違いない製品であるということは価値があるものと思います」として、ハイエンドモデルにふさわしい仕様に自信を見せた。
■これからの日本市場におけるプロジェクターの展開は
カジュアルとハイエンド、その両面において継続した製品展開を行うというBenQ。では、最上位機となるHT9050に搭載され、既存のLEDに比べ3〜4倍の輝度が提供できるというHLD(High Lumen Density)などの技術、またTHX HD認証をカジュアルなモデルに落とし込んでいくということはあるのだろうか。
その質問に対し、「我々もついスペックで製品を捉えてしまいがちなのですが、何よりユーザーがどういった環境でプロジェクターを使用するか、ということを考えています。ライフスタイルは国によって異なり、例えば映画を集中して鑑賞するのと、大勢でスポーツを観戦するのでは使用シーンも大きく変化します。そういったことを考え、ユーザーの視点に立った提案を行うことをブランドのフィロソフィーとして大切にしています」とJeffrey氏は言う。
その上で「そうすると、AVルームではなく普通のリビングルームで、ユーザーはTHX HDの再現性が発揮できるような環境が構築できるか、といったことが考えるべき要素となります。ローエンドやハイエンドといった区別ではなく、その用途に沿った技術を投入していきたいと思っています」とも述べた。
また「HLDを搭載することで明るさが確保できる一方で、サイズが大きくなってしまいます。ですが明るい環境でもプロジェクターを映し出せることは、カジュアルな使用ではとても重要なことです。HLDなのかLEDなのか、それを実現できる最適なテクノロジーで取り組んでいきたいと思います」と意欲を見せた。
BenQのプロジェクターのラインナップについて、Sunny氏は「例えばHT2150STのように、ゲームを大画面で楽しむことに適したモデルもあります(関連記事)。またLEDを搭載した小型プロジェクターGS1は、アウトドアでの活用もできます。それぞれの製品は、使用シーンに合った画作りや機能を持っています」とその幅広さをアピール。
最後に、今後の日本市場でのプロジェクターの展開について、菊地氏は「もともと日本では、プロジェクターで大きな画面を楽しんで欲しい、といったホームエンターテイメントとしての訴求を行ってきました。これからはもっと映画をキレイに見たい、こういった機能が欲しい、といったより上位の機種を求める声を製品開発にフィードバックしていきたい。今回発表した製品の反響を受けて、また次のステップに繋げていきたいと思います」とコメントした。
発表会後、Jeffrey氏のほか、ベンキュージャパン代表執行役社長の菊地 正志氏、Senior Technical ManagerのEric HC Tsai氏、Marcom DirectorのSunny Chang氏を交えたインタビューを実施。日本市場での今後の展開について伺った。
■カジュアルとハイエンド、それぞれを見据えたラインナップ
世界におけるBenQのDLPプロジェクターのビジネスは、2014〜2016年の売上ではシェア24.8%、販売台数は280万台を超える。またフルHDのプロジェクター販売実績は世界一のシェアとなり、グローバルにマーケット展開を行っている。そんな同社は、日本におけるプロジェクター市場をどう捉えているのだろうか。
Jeffrey氏は「実は『ホームシアターファイル』誌を読んで、日本のユーザーがどのようにプロジェクターを使っているのかを学んでいました。日本では本格的な視聴のためのAVルームでの使用、もしくはリビングなどでカジュアルに楽しむ用途が重要と考えています」と大きく2つにターゲットを絞っているという。
また「BenQの本国となる台湾では、日本と同様に住宅事情の関係で、ホームシアターのために割けるスペースに限りがあります。しかし、そういった方々にも、プロジェクターの大画面を体験していただきたいと考えています。そのために、リビングルームでも使用しやすいような製品群も用意しています」と、台湾と日本に通ずる視聴環境に触れた。
そして「実際にリビングルームでプロジェクターを使ってホームシアターを楽しむには、準備の煩わしさなどいくつかのハードルがあり、まだまだ普及率は高くありません。そういった障壁をなくしていくため、約1.5mの投射距離で100インチを映し出せるような短焦点モデルや、フルHDでワイヤレス接続を可能とする製品などを開発しています」と具体的な機能を紹介した。
そうした上で、「プロジェクターによって家族のつながり、団欒の機会ができれば嬉しいと考えています。これからも、カジュアルな製品群には力を入れていきます」と、プロジェクターを気軽に楽しんで欲しいという思いを述べた。
BenQのプロジェクターは、カジュアルかつコストパフォーマンスが高い製品ラインナップが豊富だ。その一方で、今回HT8050のようなハイエンドなモデルがリリースされた。その理由について、「我々はメーカーとして、より良いものを世に出していきたいと常に意識しています。そういった理由から、ハイエンド・ハイスペックなモデルを開発することは必然であると言えます」と開発理念を語った。
また、「中国やインドネシアなど、経済的に豊かになってきていることから、そうしたマーケットも見据えて製品を拡充しています。4Kというトピックは、プロジェクターにおいても注目されています。今後、4K対応製品の販売台数は、いまの5〜6倍にも到達するだろうと予想されます。4Kの大画面をAVルームに持ち込みたい、という希望は多く、それに応えたいと考えました」という。
菊地氏は「4Kというキーワードに対応すること、日本のハイエンドユーザーに自信を持って薦められる製品であること。そうしたハイエンドモデルのシリーズへのスタートを切るのがHT8050になります。その後、上位に位置付けられるHT9050を、我々の体制が整った段階で、製品の拡充として展開したいと考えています」と、ハイエンドの製品群についての展開に触れた。
一方でHDRについては、「HDRはプロジェクターの規格として確たるものが定まっていないのが現状。まずはその対応基準が決まってからと考えていますが、日本においてHDRというキーワードが重要であることも理解しています。慎重になりつつも、その対応について検討していきたいと想います」とした。
■THX HDディスプレイ認証を取得する意味
新たに発売されるHT8050やHT6050では、THX HDディスプレイ規格の認証取得がポイントとして挙げられる。そのことについて聞くと、「ホームシアターにおいては、“リアルな映画館体験”が大事と考えています。そのためには、映画作品の本当の色を再現する必要がありました。そうした理由から、量産が遅れる可能性もありましたが、あえてTHX HD認証にチャレンジしました」とJeffrey氏は力強く答える。
さらに菊地氏が「従来モデルでもRec.709に対応していましたが、ハイエンドモデルとして、よりシネマの再現性を獲得するためにTHX HDの技術が重要と考えました。また、正式に認証された製品を提供することで、ユーザーに安心して使用していただけるものと思います」と続ける。
そして「我々がいくら“再現性が素晴らしい”とアピールしても、それを伝えるのは難しいことです。THX HD認証を取得することは国際的な機関による保証として、皆さんに信用してもらえることにつながります」というJeffrey氏の言葉からは、ユーザーに素晴らしいホームシアターを提供したいという考えが伝わってくる。
事実、THX HDの認証を取得するということは、相当な労力を必要とする。約18ヶ月にわたっての製品開発期間では、国際標準規格であるRec.709への準拠に必要となるデータ分析の10倍の分析が行われ、7倍のエンジニアリングの取り組みとリソースが投入されたという。
実際にアメリカのTHXの試験場に足を運び、何度も製品を持ち込んだというEric氏は、「試験では、色々な基準に合致しないといけません。それに対応するために、ひとつひとつをクリアしていくトライ・アンド・エラーを幾度となく繰り返しました」と認証を得るための苦労に触れた。
そして「THX HDの認証を得たプロジェクターは非常に少ないのですが、それだけ解像度、レンズの品質、画像処理なども厳密にテストする画像品質に特化したものとなっています。つまり今回の取得は我々のテクノロジーの高さを認められたということですので、それは大変嬉しく思います」と語った。
さらに菊地氏は「ハイエンドユーザーは映像だけでなく、サウンドも含めてクオリティを求められると思います。そうした時に、少なくとも映像の再現性においては間違いない製品であるということは価値があるものと思います」として、ハイエンドモデルにふさわしい仕様に自信を見せた。
■これからの日本市場におけるプロジェクターの展開は
カジュアルとハイエンド、その両面において継続した製品展開を行うというBenQ。では、最上位機となるHT9050に搭載され、既存のLEDに比べ3〜4倍の輝度が提供できるというHLD(High Lumen Density)などの技術、またTHX HD認証をカジュアルなモデルに落とし込んでいくということはあるのだろうか。
その質問に対し、「我々もついスペックで製品を捉えてしまいがちなのですが、何よりユーザーがどういった環境でプロジェクターを使用するか、ということを考えています。ライフスタイルは国によって異なり、例えば映画を集中して鑑賞するのと、大勢でスポーツを観戦するのでは使用シーンも大きく変化します。そういったことを考え、ユーザーの視点に立った提案を行うことをブランドのフィロソフィーとして大切にしています」とJeffrey氏は言う。
その上で「そうすると、AVルームではなく普通のリビングルームで、ユーザーはTHX HDの再現性が発揮できるような環境が構築できるか、といったことが考えるべき要素となります。ローエンドやハイエンドといった区別ではなく、その用途に沿った技術を投入していきたいと思っています」とも述べた。
また「HLDを搭載することで明るさが確保できる一方で、サイズが大きくなってしまいます。ですが明るい環境でもプロジェクターを映し出せることは、カジュアルな使用ではとても重要なことです。HLDなのかLEDなのか、それを実現できる最適なテクノロジーで取り組んでいきたいと思います」と意欲を見せた。
BenQのプロジェクターのラインナップについて、Sunny氏は「例えばHT2150STのように、ゲームを大画面で楽しむことに適したモデルもあります(関連記事)。またLEDを搭載した小型プロジェクターGS1は、アウトドアでの活用もできます。それぞれの製品は、使用シーンに合った画作りや機能を持っています」とその幅広さをアピール。
最後に、今後の日本市場でのプロジェクターの展開について、菊地氏は「もともと日本では、プロジェクターで大きな画面を楽しんで欲しい、といったホームエンターテイメントとしての訴求を行ってきました。これからはもっと映画をキレイに見たい、こういった機能が欲しい、といったより上位の機種を求める声を製品開発にフィードバックしていきたい。今回発表した製品の反響を受けて、また次のステップに繋げていきたいと思います」とコメントした。
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