公開日 2020/05/13 06:30
新ドライブメカ/ディスクリートDAC/電源を1つの筐体に
目指したのは“音楽寄り”の設計思想。エソテリック新旗艦SACDプレーヤー「Grandioso K1X」の魅力を開発陣と語る
山之内 正
エソテリックのセパレートプレーヤー「P1X/D1X」の計4筐体の技術を集約しながら、一体型の最高峰としての進化を遂げたフラグシップSACDプレーヤー「Grandioso K1X」。今回は山之内 正氏による開発陣へのインタビューをお届けしよう。K1Xに込められた技術や開発時の葛藤、音質的ポリシーなどをじっくりと語っていただいた内容となっている。
■開放的な音を引き出す締め付けすぎない構造
ーー 今回のSACDプレーヤー「K1X」は、ドライブメカもDACも電源も、すべてを1つの筺体に収めるということで、いろいろとご苦労があったと思いますが、実際にどんな部分を工夫されたのでしょうか?
新妻 まずシャーシに目を向けると、今回のK1Xは、1つの筺体にドライブメカがあり、トランスも4基あり、基板もかなりの枚数が入っています。これらの部品をすべてネジで留めなければいけないのですが、留めれば留めるほど、音はどんどん硬くなってしまう傾向がありますので、これだけのものを入れつつ、どうやって開放的な音を出していけるか? というのがひとつの大きなポイントとなりました。
そこで、P1X/D1Xにも採用されている、トップパネルをネジで締めつけないセミフローティング構造を採用しています。さらにシャーシ自体には一部に切り込みを入れて、振動をコントロールしています。これは底板やリアパネルでも採用しているのですが、各々のパーツ、例えばトランスやメカは、それぞれが別々に振動するものなので、その振動を妨げず、むしろ自由に振動させてあげるための機構です。
この切り込みはもう一つ、何らかのパーツが振動している場合、その隣のパーツに悪影響を与えないように遮断してあげる効果も狙っています。そこが今回一体型にする際のテーマのひとつになりました。
ーー 特にドライブメカと電源トランスには大きな振動源がありますよね? まずメカの方ですが、基本的にはリジッドに固定しているのでしょうか?
加藤 基本的にはリジッドなのですが、メカ自体の振動が脚部に逃げるような切り込みが底板に入っています。これによりメカの振動が電気回路に伝わるよりも速く、脚部に伝わっていくようになっています。
ーー 切り込みだけで、そこまで精密な制御ができるのですね。
加藤 これと同じような方法は基板にも採用しています。例えば電源回路などは50Hzや60Hzで振動するので、この振動が隣の回路に伝わってほしくはありません。その対策として要所に切り込みを入れて、振動を伝わりにくくするという配慮をしています。
ーー この切り込みを入れる手法には試行錯誤があったのでしょうか? それともシミュレーションみたいなものがあるのでしょうか?
加藤 シミュレーションもあるのですが、どんな音色になるのかはわからないので、結局は試行錯誤をしてみるしかないですね。最後は実物勝負です。試作機を何台か作るのですが、その時にシャーシの切り込みパターンをA、B、Cと3パターン用意して、いちばん気に入った音質のものを選んでいます。
■D1Xと同じ回路規模をコンパクトな基板に実装
ーー セパレート型だと基板の数も部品の点数も含め内部に余裕があるのでそこまでシビアにやらなくてもいいですが、一体型はむしろ大変ですね。でも、3つのパターンを選んで最終的には音で決めたというお話を聞くと安心しますね。
基板自体も、特にD1XのディスクリートDAC部はかなり大型でしたから、今回の一体型にはさすがに入らないですよね? だいぶコンパクトになりました。
加藤 コンパクトになりましたが、その分、密度がかなり高いです。この基板に関しては部内でも議論があって、「そんなにパーツを入れなくてもいいのでは」という意見もありました。無理して入れるのはよくないケースもありますが、電気担当が「入ります」と音質的にも自信を持って言いました。
4層の基板になっているのですが、内層の使い方なども吟味した結果「この大きさで大丈夫です」ということで、最終的にD1Xと同じ回路規模のものをほとんどそのまま入れることができました。でも実際はかなり苦労しましたよ(笑)。
ーー そうですよね。ご苦労のポイントがいろいろとありそうですが、DAC部は具体的には抵抗やコンデンサーでエレメントが構成されています。コンパクトながらエレメントの数はD1Xと同じ32個だと聞きましたが……。
加藤 その分1つ1つのエレメント同士の距離の取り方であったり、電源に必要な容量の大きいコンデンサーをどう配置していくか、というのが重要でした。D1Xでは1つ1つに電解コンデンサーを置きましたが、今回は共用ながらD1Xよりもかなり大きなコンデンサーを使っています。また、マスタークロックもダイレクトに接続しています。この点もディスクリートならではのメリットで、音質や性能的にも有利に働くポイントになりました。
■開放的な音を引き出す締め付けすぎない構造
ーー 今回のSACDプレーヤー「K1X」は、ドライブメカもDACも電源も、すべてを1つの筺体に収めるということで、いろいろとご苦労があったと思いますが、実際にどんな部分を工夫されたのでしょうか?
新妻 まずシャーシに目を向けると、今回のK1Xは、1つの筺体にドライブメカがあり、トランスも4基あり、基板もかなりの枚数が入っています。これらの部品をすべてネジで留めなければいけないのですが、留めれば留めるほど、音はどんどん硬くなってしまう傾向がありますので、これだけのものを入れつつ、どうやって開放的な音を出していけるか? というのがひとつの大きなポイントとなりました。
そこで、P1X/D1Xにも採用されている、トップパネルをネジで締めつけないセミフローティング構造を採用しています。さらにシャーシ自体には一部に切り込みを入れて、振動をコントロールしています。これは底板やリアパネルでも採用しているのですが、各々のパーツ、例えばトランスやメカは、それぞれが別々に振動するものなので、その振動を妨げず、むしろ自由に振動させてあげるための機構です。
この切り込みはもう一つ、何らかのパーツが振動している場合、その隣のパーツに悪影響を与えないように遮断してあげる効果も狙っています。そこが今回一体型にする際のテーマのひとつになりました。
ーー 特にドライブメカと電源トランスには大きな振動源がありますよね? まずメカの方ですが、基本的にはリジッドに固定しているのでしょうか?
加藤 基本的にはリジッドなのですが、メカ自体の振動が脚部に逃げるような切り込みが底板に入っています。これによりメカの振動が電気回路に伝わるよりも速く、脚部に伝わっていくようになっています。
ーー 切り込みだけで、そこまで精密な制御ができるのですね。
加藤 これと同じような方法は基板にも採用しています。例えば電源回路などは50Hzや60Hzで振動するので、この振動が隣の回路に伝わってほしくはありません。その対策として要所に切り込みを入れて、振動を伝わりにくくするという配慮をしています。
ーー この切り込みを入れる手法には試行錯誤があったのでしょうか? それともシミュレーションみたいなものがあるのでしょうか?
加藤 シミュレーションもあるのですが、どんな音色になるのかはわからないので、結局は試行錯誤をしてみるしかないですね。最後は実物勝負です。試作機を何台か作るのですが、その時にシャーシの切り込みパターンをA、B、Cと3パターン用意して、いちばん気に入った音質のものを選んでいます。
■D1Xと同じ回路規模をコンパクトな基板に実装
ーー セパレート型だと基板の数も部品の点数も含め内部に余裕があるのでそこまでシビアにやらなくてもいいですが、一体型はむしろ大変ですね。でも、3つのパターンを選んで最終的には音で決めたというお話を聞くと安心しますね。
基板自体も、特にD1XのディスクリートDAC部はかなり大型でしたから、今回の一体型にはさすがに入らないですよね? だいぶコンパクトになりました。
加藤 コンパクトになりましたが、その分、密度がかなり高いです。この基板に関しては部内でも議論があって、「そんなにパーツを入れなくてもいいのでは」という意見もありました。無理して入れるのはよくないケースもありますが、電気担当が「入ります」と音質的にも自信を持って言いました。
4層の基板になっているのですが、内層の使い方なども吟味した結果「この大きさで大丈夫です」ということで、最終的にD1Xと同じ回路規模のものをほとんどそのまま入れることができました。でも実際はかなり苦労しましたよ(笑)。
ーー そうですよね。ご苦労のポイントがいろいろとありそうですが、DAC部は具体的には抵抗やコンデンサーでエレメントが構成されています。コンパクトながらエレメントの数はD1Xと同じ32個だと聞きましたが……。
加藤 その分1つ1つのエレメント同士の距離の取り方であったり、電源に必要な容量の大きいコンデンサーをどう配置していくか、というのが重要でした。D1Xでは1つ1つに電解コンデンサーを置きましたが、今回は共用ながらD1Xよりもかなり大きなコンデンサーを使っています。また、マスタークロックもダイレクトに接続しています。この点もディスクリートならではのメリットで、音質や性能的にも有利に働くポイントになりました。