公開日 2024/04/01 06:35
自社ブランドの輸出にも力を入れる
【新社長インタビュー】アンダンテラルゴ(株)鈴木喜裕氏「“かっこいい趣味”としてのオーディオを再提案したい」
ファイルウェブオーディオ編集部・筑井真奈
オーディオの自社ブランド製品の開発・販売と、海外ブランドの輸入を事業の柱として展開するアンダンテラルゴ株式会社。同社は、2023年8月より鈴木喜裕氏が新たに代表取締役社長に就任している。この3月に30歳となったばかりの若い新社長は、会社をどのように発展させていくことを考えているのか、その意気込みを伺った。
ーー社長就任、誠におめでとうございます。
鈴木喜裕 ありがとうございます。以前から少しずつ父・鈴木 良より仕事の引き継ぎを開始しまして、8月に正式に社長に就任いたしました。
ーーアンダンテラルゴに入社されたのはいつからでしょうか?
鈴木喜裕 2013年、私が19歳の時からです。アンダンテラルゴは2006年に創業しましたが、最初はリジッドテーブルというラックの開発からスタートしました。時期を同じくしてスパイク受けを作り、クリーナーのハンルの取り扱いも開始しました。あとブラック・ラビオリ。特に初期にはハンルとブラック・ラビオリが大きな事業の柱であったようです。
ーーこれまではどのようなお仕事をメインに担当されてきたのでしょうか?
鈴木喜裕 小さな会社なのでなんでもやるしかない、というのが実情ではありますが、ホームページやカタログの作成、展示用の什器の作成などを主にやってきました。積極的に外に出るよりは、営業スタッフが働きやすいように、売りやすいようにするための素材作りが大きな役割です。
ーー「自社ブランド」と「輸入ブランド」が事業の2つの大きな柱と認識していますが、それは今後とも継続されるのでしょうか?
鈴木喜裕 はい、もちろんです。これまでの製品は継続しつつ、新規の製品開発も考えているところです。
ーー製品開発も以前から関わっていたのでしょうか? 以前鈴木 良さんから、「私よりも息子の方が製品開発に関しては手厳しい」とお話を伺ったこともあります。
鈴木喜裕 はい、製品開発も以前から関わっていました。オーディオ製品ですから「数値的」に判断できることばかりではありませんが、弊社は3つの「評価スケール」をご用意しています。ホームページに記載していますので詳しくはそちらをご覧いただければと思いますが、特に重視しているのは、(1)「楽器と楽器」のセパレーション(2)「一音一音」のセパレーション(3)「高い音と低い音」のセパレーション、という3点です。自社ブランドについても、輸入製品についても、これらがきちんと守られているものを取り扱っていることは矜持として大切にしています。
こういった「評価スケール」を公表することで、アンダンテラルゴはどういう考えで製品を作っているのか、あるいは製品を仕入れているのかを知っていただき、ひいては会社への信頼につなげていきたいと考えています。
ーーイギリスのコード・カンパニーは、鈴木 良さんの時代から厚い信頼関係があると感じています。喜裕さんから見てコード・カンパニーはどのような会社でしょうか?
鈴木喜裕 信頼できる会社である、ということは間違いなく言えますね。2023年7月にイギリスの本社を訪問しましたが、まずロケーションが最高です。ストーンヘンジに近いソールズベリーという小さな街に工場があるのですが、空の色や草の色、すべてが日本とは違いますね。
会社にはクリーンな風通しの良さがあり、スタッフの人柄の温かさも感じました。ビジネスではもちろんありますが、みな音楽が本当に好きな人たちですね。「大きなバンド」というか(笑)。それがちゃんと製品の開発や製作に生かされているように思います。
ーー研究開発も力を入れてやっていらっしゃる印象もあります。「アレイテクノロジー」による高周波ノイズ対策にもいちはやく取り組んできましたし、「XLPE」や「タイロン」など新素材も研究して、オーディオのノイズ対策に新しい提案をしてくれています。
鈴木喜裕 そうですね、技術革新をとても大切にしている会社だとも感じています。いくら高品質でも、それがなければ思考停止になってしまいますから。また機材の投資をしっかりやっている印象も受けました。職人芸に頼るだけではなくて、製品として規格化する工夫も重ねています。お客さんが満足する製品に仕上げるというのも大事ですし、そこまでしっかりできていることが、コード・カンパニーの大きな強みであると感じています。
それに、輸入商社に対するリスペクトも感じます。サポートもしっかりしていますし、ざっくばらんに話せるという信頼関係、一緒に課題を解決していこうという思いを感じます。
ーーEnglish Electricというサブブランドもスタートして、ネットワーク系のアクセサリーも力入れていますね。
鈴木喜裕 これからはネットワークが主流になっていきますから、その時代に合わせたアクセサリーも提案していかなければなりません。私たちも、試聴室をそのために新しく準備しました。まだまだ手を入れたい箇所はあるのですが、この部屋では、CDとネットワーク再生がメインです。いままでの歴史あるオーディオとこれからのオーディオ、その両方をみていかないといけないと思っています。
ーー「自宅貸し出しサービス」もコロナ禍の前から積極的に手がけていましたね。
鈴木喜裕 はい、ケーブルやラックは、自分の環境で試すのが難しい場合が多いですよね。そのために、弊社の製品はほぼ全製品について「1週間無料貸出サービス」を行っています。特に最近はネットワークオーディオ系製品の貸出依頼が増えていますね。コード・カンパニーのLANケーブルやノイズ対策アクセサリーの「EE1」、ネットワークスイッチの「8switch」も多いですね。もちろんラインケーブルやスピーカーケーブル、サイレントマウントなどはコンスタントにご依頼があります。
ーー今後のオーディオの市場はどのようになってくると考えていますか?
鈴木喜裕 そうですね、インテリア的側面がこれからますます重要になってくると思います。以前は大きなホーンがあって、アンプがあって、葉巻やコーヒーを片手に、みたいなイメージもありました。それもすごく素敵な世界ですが、今の若い人はスマホ的感覚、シンプルでクリーンなものを求めているように思います。ですから、妥協なき音質でありながら、ぜひ部屋に置きたい、と思ってもらえるような、ちょっと自慢できるようなオーディオにも目を向けていかないといけないと思っています。
ーー「かっこいい趣味」としてのオーディオ、という提案は大きな可能性を感じます。喜裕さんはオーディオ以外に、どのような趣味を持っているのでしょう?
鈴木喜裕 実は車が好きで、一番好きなのはイタリアのランチアという車ですね。イタリアらしいおしゃれさと気遣いがありつつ、主張しすぎない感じもあります。控えめな中に光るものが在る、という佇まいが好きですね。
ーー最後に、アンダンテラルゴの今後の展開について教えてください。
鈴木喜裕 代表になったのはゴールでなくてスタートですから、私自身まだまだ修行が必要です。日々の修行の積み重ね、それが信頼される会社につながっていくと感じています。
新製品の開発も進めていますし、新しいブランドの取り扱いも考えたいですね。色々と情報を集めている段階ですが、まずは信頼ベースで、矜持を持ったメーカーと組んでやりたいです。アンプやスピーカーももちろん選択肢としては考えています。
それともうひとつ、自社ブランド製品の海外輸出もこれから力を入れていきたいと考えています。まずはドイツの代理店とご縁ができましたので、サイレントマウントなどの輸出を開始します。こちらもまだまだこれからというところですが、製品には自信を持っていますから、販路を広げていきたいと考えています。
ーー貴重なお話をありがとうございました。今後のアンダンテラルゴの展開にも期待しております。
「自社ブランド」と「輸入ブランド」が事業の2つの大きな柱
ーー社長就任、誠におめでとうございます。
鈴木喜裕 ありがとうございます。以前から少しずつ父・鈴木 良より仕事の引き継ぎを開始しまして、8月に正式に社長に就任いたしました。
ーーアンダンテラルゴに入社されたのはいつからでしょうか?
鈴木喜裕 2013年、私が19歳の時からです。アンダンテラルゴは2006年に創業しましたが、最初はリジッドテーブルというラックの開発からスタートしました。時期を同じくしてスパイク受けを作り、クリーナーのハンルの取り扱いも開始しました。あとブラック・ラビオリ。特に初期にはハンルとブラック・ラビオリが大きな事業の柱であったようです。
ーーこれまではどのようなお仕事をメインに担当されてきたのでしょうか?
鈴木喜裕 小さな会社なのでなんでもやるしかない、というのが実情ではありますが、ホームページやカタログの作成、展示用の什器の作成などを主にやってきました。積極的に外に出るよりは、営業スタッフが働きやすいように、売りやすいようにするための素材作りが大きな役割です。
ーー「自社ブランド」と「輸入ブランド」が事業の2つの大きな柱と認識していますが、それは今後とも継続されるのでしょうか?
鈴木喜裕 はい、もちろんです。これまでの製品は継続しつつ、新規の製品開発も考えているところです。
ーー製品開発も以前から関わっていたのでしょうか? 以前鈴木 良さんから、「私よりも息子の方が製品開発に関しては手厳しい」とお話を伺ったこともあります。
鈴木喜裕 はい、製品開発も以前から関わっていました。オーディオ製品ですから「数値的」に判断できることばかりではありませんが、弊社は3つの「評価スケール」をご用意しています。ホームページに記載していますので詳しくはそちらをご覧いただければと思いますが、特に重視しているのは、(1)「楽器と楽器」のセパレーション(2)「一音一音」のセパレーション(3)「高い音と低い音」のセパレーション、という3点です。自社ブランドについても、輸入製品についても、これらがきちんと守られているものを取り扱っていることは矜持として大切にしています。
こういった「評価スケール」を公表することで、アンダンテラルゴはどういう考えで製品を作っているのか、あるいは製品を仕入れているのかを知っていただき、ひいては会社への信頼につなげていきたいと考えています。
音楽を楽しむことと技術革新を大切にするコード・カンパニー
ーーイギリスのコード・カンパニーは、鈴木 良さんの時代から厚い信頼関係があると感じています。喜裕さんから見てコード・カンパニーはどのような会社でしょうか?
鈴木喜裕 信頼できる会社である、ということは間違いなく言えますね。2023年7月にイギリスの本社を訪問しましたが、まずロケーションが最高です。ストーンヘンジに近いソールズベリーという小さな街に工場があるのですが、空の色や草の色、すべてが日本とは違いますね。
会社にはクリーンな風通しの良さがあり、スタッフの人柄の温かさも感じました。ビジネスではもちろんありますが、みな音楽が本当に好きな人たちですね。「大きなバンド」というか(笑)。それがちゃんと製品の開発や製作に生かされているように思います。
ーー研究開発も力を入れてやっていらっしゃる印象もあります。「アレイテクノロジー」による高周波ノイズ対策にもいちはやく取り組んできましたし、「XLPE」や「タイロン」など新素材も研究して、オーディオのノイズ対策に新しい提案をしてくれています。
鈴木喜裕 そうですね、技術革新をとても大切にしている会社だとも感じています。いくら高品質でも、それがなければ思考停止になってしまいますから。また機材の投資をしっかりやっている印象も受けました。職人芸に頼るだけではなくて、製品として規格化する工夫も重ねています。お客さんが満足する製品に仕上げるというのも大事ですし、そこまでしっかりできていることが、コード・カンパニーの大きな強みであると感じています。
それに、輸入商社に対するリスペクトも感じます。サポートもしっかりしていますし、ざっくばらんに話せるという信頼関係、一緒に課題を解決していこうという思いを感じます。
ーーEnglish Electricというサブブランドもスタートして、ネットワーク系のアクセサリーも力入れていますね。
鈴木喜裕 これからはネットワークが主流になっていきますから、その時代に合わせたアクセサリーも提案していかなければなりません。私たちも、試聴室をそのために新しく準備しました。まだまだ手を入れたい箇所はあるのですが、この部屋では、CDとネットワーク再生がメインです。いままでの歴史あるオーディオとこれからのオーディオ、その両方をみていかないといけないと思っています。
今後のオーディオ市場についての課題
ーー「自宅貸し出しサービス」もコロナ禍の前から積極的に手がけていましたね。
鈴木喜裕 はい、ケーブルやラックは、自分の環境で試すのが難しい場合が多いですよね。そのために、弊社の製品はほぼ全製品について「1週間無料貸出サービス」を行っています。特に最近はネットワークオーディオ系製品の貸出依頼が増えていますね。コード・カンパニーのLANケーブルやノイズ対策アクセサリーの「EE1」、ネットワークスイッチの「8switch」も多いですね。もちろんラインケーブルやスピーカーケーブル、サイレントマウントなどはコンスタントにご依頼があります。
ーー今後のオーディオの市場はどのようになってくると考えていますか?
鈴木喜裕 そうですね、インテリア的側面がこれからますます重要になってくると思います。以前は大きなホーンがあって、アンプがあって、葉巻やコーヒーを片手に、みたいなイメージもありました。それもすごく素敵な世界ですが、今の若い人はスマホ的感覚、シンプルでクリーンなものを求めているように思います。ですから、妥協なき音質でありながら、ぜひ部屋に置きたい、と思ってもらえるような、ちょっと自慢できるようなオーディオにも目を向けていかないといけないと思っています。
ーー「かっこいい趣味」としてのオーディオ、という提案は大きな可能性を感じます。喜裕さんはオーディオ以外に、どのような趣味を持っているのでしょう?
鈴木喜裕 実は車が好きで、一番好きなのはイタリアのランチアという車ですね。イタリアらしいおしゃれさと気遣いがありつつ、主張しすぎない感じもあります。控えめな中に光るものが在る、という佇まいが好きですね。
ーー最後に、アンダンテラルゴの今後の展開について教えてください。
鈴木喜裕 代表になったのはゴールでなくてスタートですから、私自身まだまだ修行が必要です。日々の修行の積み重ね、それが信頼される会社につながっていくと感じています。
新製品の開発も進めていますし、新しいブランドの取り扱いも考えたいですね。色々と情報を集めている段階ですが、まずは信頼ベースで、矜持を持ったメーカーと組んでやりたいです。アンプやスピーカーももちろん選択肢としては考えています。
それともうひとつ、自社ブランド製品の海外輸出もこれから力を入れていきたいと考えています。まずはドイツの代理店とご縁ができましたので、サイレントマウントなどの輸出を開始します。こちらもまだまだこれからというところですが、製品には自信を持っていますから、販路を広げていきたいと考えています。
ーー貴重なお話をありがとうございました。今後のアンダンテラルゴの展開にも期待しております。
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