公開日 2019/01/10 11:46
SL-1200MK7と兄弟機
<CES>テクニクスCTO・井谷氏に聞く。新ターンテーブル「SL-1500C」は単なるエントリー機ではない
編集部:風間雄介
米ラスベガスで開催されている「2019 international CES」においてTechnics(テクニクス)は、2台のターンテーブルと2つのヘッドホンを新たに発表した(関連ニュース)。本稿ではターンテーブルに関する詳細をお伝えする。テクニクスのCTOである井谷哲也氏に話を聞いた。
CESで同ブランドが発表したターンテーブルは、主にDJ向けの「SL-1200MK7」とハイファイオーディオ向けの「SL-1500C」の2モデルだ。
発表時のニュースにも書いたとおり、両機の見た目はかなり異なるが、中身は兄弟機と言っても差し支えないほど共通部分が多いという。
井谷氏に、2台それぞれ別に企画していたものがあとから合流したのか、初めから兄弟機として構想したのか尋ねると、後者だという。
「SL-1200GRよりさらに安いモデルを作って欲しいという市場からの要求、そしてDJ用モデルを作って欲しいという要望は、どちらも以前からありました。特にDJ用モデルを作って欲しいという要望は、ものすごく強かったですね」(井谷氏)。
実際、SL-1200MK6が生産終了したのは2010年。今回のSL-1200MK7は、約9年ぶりの新モデルということになる。
「いまだにSL-1200MK6やMK5、なかにはMK2を使っているなどという方もいらっしゃいます。中古で手に入れたという方も多いようです。今回のMK7はそういった方々の期待を裏切らないよう、国内外のDJの方々に先行して使ってもらい、フィードバックを受けることを繰り返しました。操作感覚はMK5やMK6に近く、そして音質は結果的に、それらのモデルに比べて大きく進化しました」。
■フラグシップ機の開発を通して得たノウハウを投入
さて、もう一方の「SL-1500C」についてはコンセプトが明確だ。「これまでの1200シリーズをベースにして、音質をキープしながら、どこまで価格を下げられるかにチャレンジしました」と井谷氏は説明する。なおモーターやシャーシは「SL-1200MK7」と「SL-1500C」でほぼ同じだ。
「最上位機のSL-1000Rの開発を通して、我々にもかなりノウハウが溜まりました。特に、回転を安定させるサーボの学習機能などですね。以前から我々は、ブルーレイなどで培ったデジタル制御技術を使ってモーターの回転をコントロールしていましたが、最後はアナログ信号に変換しなければなりません。その精度を高めると、音質に大きく効くことがわかったのです」。
このあたりのノウハウが積み上がったことで、たとえば「SL-1200G」と同じワウ・フラッターのスペックを出そうとしたとき、物量を投入しなくても、コストを抑えながら実現できるようになったという。言い換えれば、コストダウンしても音質や性能をある程度キープできるということだ。
井谷氏は「もうひとつ、SL-1500Cで大きなチャレンジを行った部分があります。フォノイコライザーの搭載です」と付け加える。「G700に搭載したものをベースにチューニングを加えたもの」とのことで、「個人的にはけっこういい出来だと思います。フォノイコを内蔵することで、フォノケーブルの影響を抑えられる利点もあります」と語る。もちろん、これまでどおりフォノ出力も選択できる。
またオートアームリフターを搭載したことも新たなチャレンジだ。「アームが内周まで行ったら、光で検出してマイコンに伝え、アームを上げます。以前はメカニカルに制御するものもありましたが、それらに比べて音質への影響が圧倒的に少ないのが利点です」。なお、このオートアームリフターについても、背面にあるスイッチでオン/オフが選べる。
そのほか、ストロボやピッチコントローラーを外したことも、音質的には良い方向に影響しているという。
またSL-1500Cはカートリッジにオルトフォンの2M Redを同梱しているが、これも、もちろん様々な製品を聴き比べた結果選んだものだという。
「私はもちろん、テクニクスのトップである小川など、多くの開発陣がいろいろなカートリッジを聴き込み、テクニクスらしいサウンドを実現できるものとして選択させていただきました」と語る。
なお、テクニクスのターンテーブルはこれまで日本生産だったが、今回の2機種はマレーシアで生産している。トーンアームの設計工程も含め、マレーシアで行っているという。
とはいえ、マレーシアはパナソニックのオーディオ製造をこれまでも多く手がけている場所。また、テクニクス製品の製造を行う宇都宮工場で働いていた方が、現在マレーシアの生産拠点の責任者を務めているとのこと。製造クオリティについて心配は無用だろう。
あと気になるのは、いったい価格がどの程度になるかということだ。アメリカでの販売価格は1,200ドル以下と発表されているが、テクニクス製品のこれまでの価格設定を振り返ると、米ドルをそのまま日本円に計算し直した金額より、日本での価格設定は安くなる場合が多い。10万円以下という価格帯が一つの目安になりそうだ。
CESで同ブランドが発表したターンテーブルは、主にDJ向けの「SL-1200MK7」とハイファイオーディオ向けの「SL-1500C」の2モデルだ。
発表時のニュースにも書いたとおり、両機の見た目はかなり異なるが、中身は兄弟機と言っても差し支えないほど共通部分が多いという。
井谷氏に、2台それぞれ別に企画していたものがあとから合流したのか、初めから兄弟機として構想したのか尋ねると、後者だという。
「SL-1200GRよりさらに安いモデルを作って欲しいという市場からの要求、そしてDJ用モデルを作って欲しいという要望は、どちらも以前からありました。特にDJ用モデルを作って欲しいという要望は、ものすごく強かったですね」(井谷氏)。
実際、SL-1200MK6が生産終了したのは2010年。今回のSL-1200MK7は、約9年ぶりの新モデルということになる。
「いまだにSL-1200MK6やMK5、なかにはMK2を使っているなどという方もいらっしゃいます。中古で手に入れたという方も多いようです。今回のMK7はそういった方々の期待を裏切らないよう、国内外のDJの方々に先行して使ってもらい、フィードバックを受けることを繰り返しました。操作感覚はMK5やMK6に近く、そして音質は結果的に、それらのモデルに比べて大きく進化しました」。
■フラグシップ機の開発を通して得たノウハウを投入
さて、もう一方の「SL-1500C」についてはコンセプトが明確だ。「これまでの1200シリーズをベースにして、音質をキープしながら、どこまで価格を下げられるかにチャレンジしました」と井谷氏は説明する。なおモーターやシャーシは「SL-1200MK7」と「SL-1500C」でほぼ同じだ。
「最上位機のSL-1000Rの開発を通して、我々にもかなりノウハウが溜まりました。特に、回転を安定させるサーボの学習機能などですね。以前から我々は、ブルーレイなどで培ったデジタル制御技術を使ってモーターの回転をコントロールしていましたが、最後はアナログ信号に変換しなければなりません。その精度を高めると、音質に大きく効くことがわかったのです」。
このあたりのノウハウが積み上がったことで、たとえば「SL-1200G」と同じワウ・フラッターのスペックを出そうとしたとき、物量を投入しなくても、コストを抑えながら実現できるようになったという。言い換えれば、コストダウンしても音質や性能をある程度キープできるということだ。
井谷氏は「もうひとつ、SL-1500Cで大きなチャレンジを行った部分があります。フォノイコライザーの搭載です」と付け加える。「G700に搭載したものをベースにチューニングを加えたもの」とのことで、「個人的にはけっこういい出来だと思います。フォノイコを内蔵することで、フォノケーブルの影響を抑えられる利点もあります」と語る。もちろん、これまでどおりフォノ出力も選択できる。
またオートアームリフターを搭載したことも新たなチャレンジだ。「アームが内周まで行ったら、光で検出してマイコンに伝え、アームを上げます。以前はメカニカルに制御するものもありましたが、それらに比べて音質への影響が圧倒的に少ないのが利点です」。なお、このオートアームリフターについても、背面にあるスイッチでオン/オフが選べる。
そのほか、ストロボやピッチコントローラーを外したことも、音質的には良い方向に影響しているという。
またSL-1500Cはカートリッジにオルトフォンの2M Redを同梱しているが、これも、もちろん様々な製品を聴き比べた結果選んだものだという。
「私はもちろん、テクニクスのトップである小川など、多くの開発陣がいろいろなカートリッジを聴き込み、テクニクスらしいサウンドを実現できるものとして選択させていただきました」と語る。
なお、テクニクスのターンテーブルはこれまで日本生産だったが、今回の2機種はマレーシアで生産している。トーンアームの設計工程も含め、マレーシアで行っているという。
とはいえ、マレーシアはパナソニックのオーディオ製造をこれまでも多く手がけている場所。また、テクニクス製品の製造を行う宇都宮工場で働いていた方が、現在マレーシアの生産拠点の責任者を務めているとのこと。製造クオリティについて心配は無用だろう。
あと気になるのは、いったい価格がどの程度になるかということだ。アメリカでの販売価格は1,200ドル以下と発表されているが、テクニクス製品のこれまでの価格設定を振り返ると、米ドルをそのまま日本円に計算し直した金額より、日本での価格設定は安くなる場合が多い。10万円以下という価格帯が一つの目安になりそうだ。