公開日 2023/01/25 17:46
現代においてオーケストラという団体はどのように運営すべきかを考察
渋谷ゆう子著『ウィーン・フィルの哲学』 発売
季刊オーディオアクセサリー編集部
NHK出版より、渋谷ゆう子著『ウィーン・フィルの哲学』が1月10日に発売された。
渋谷ゆう子氏は、季刊オーディオアクセサリー176号でウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサート2020に潜入し、収録記事をレポートした音楽ジャーナリスト。世界最高峰のオーケストラ、ウィーン・フィルの公演の収録にも携わり、また楽団長や団員に密着して取材を行ってきた同氏が、ウィーン・フィルの180年続く歴史を踏まえ、その行動原理を解説している。
『ウィーン・フィルの哲学』各章は下記の通り。
第1章 音楽界のファーストペンギン
第2章 ウィーン・フィルとは何者か
第3章 ウィーン音楽文化と自主運営の歴史
第4章 戦争が落とした影
第5章 王たちの民主主義
第6章 アート・マネジメントの先駆として
世界最高峰の芸術を生み出す楽団は、「ベートーヴェンの交響曲を演奏技術高く聴かせてほしい」という市民の渇望に応える形で、1842年に生まれたものであった。その後に活躍したワーグナー、マーラー、ブルックナーなどの偉大な作曲家との関わりや、戦争という最大の危機における対応なども探った上で、伝統と民主的な改革をどのように展開していったのかを論じている。
質実剛健なイメージのあるウィーン・フィルが、前楽団長グロスバウアー氏の時代に、オーケストラの衣装や楽団の執務室のインテリアを改革したというエピソードが面白い。またニューイヤー・コンサートのほか、ウィーン・フィル舞踏会なるものが伝統的に行われているという解説がこの書のクライマックスだろう。女性は白いドレスとティアラ、男性は白い蝶ネクタイと燕尾服で、オーケストラの生演奏に合わせて踊る舞踏会が、現代も社交界、政財界の交流の場として開催されているという。
本書はウィーン・フィルの音楽・作品評ではなく、その歴史と経営に焦点を当てている。歌劇場で市民の親しむ芸術となり得た19世紀、そして音楽が一大産業となった20世紀を経て、21世紀のいま、音楽の受容の形は変容している。楽団という団体はどのようにあるべきかを、ウィーン・フィルを例にとり正面から考察した書と言える。ぜひ、お手にとってお読みいただきたい。
渋谷ゆう子氏は、季刊オーディオアクセサリー176号でウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサート2020に潜入し、収録記事をレポートした音楽ジャーナリスト。世界最高峰のオーケストラ、ウィーン・フィルの公演の収録にも携わり、また楽団長や団員に密着して取材を行ってきた同氏が、ウィーン・フィルの180年続く歴史を踏まえ、その行動原理を解説している。
『ウィーン・フィルの哲学』各章は下記の通り。
第1章 音楽界のファーストペンギン
第2章 ウィーン・フィルとは何者か
第3章 ウィーン音楽文化と自主運営の歴史
第4章 戦争が落とした影
第5章 王たちの民主主義
第6章 アート・マネジメントの先駆として
世界最高峰の芸術を生み出す楽団は、「ベートーヴェンの交響曲を演奏技術高く聴かせてほしい」という市民の渇望に応える形で、1842年に生まれたものであった。その後に活躍したワーグナー、マーラー、ブルックナーなどの偉大な作曲家との関わりや、戦争という最大の危機における対応なども探った上で、伝統と民主的な改革をどのように展開していったのかを論じている。
質実剛健なイメージのあるウィーン・フィルが、前楽団長グロスバウアー氏の時代に、オーケストラの衣装や楽団の執務室のインテリアを改革したというエピソードが面白い。またニューイヤー・コンサートのほか、ウィーン・フィル舞踏会なるものが伝統的に行われているという解説がこの書のクライマックスだろう。女性は白いドレスとティアラ、男性は白い蝶ネクタイと燕尾服で、オーケストラの生演奏に合わせて踊る舞踏会が、現代も社交界、政財界の交流の場として開催されているという。
本書はウィーン・フィルの音楽・作品評ではなく、その歴史と経営に焦点を当てている。歌劇場で市民の親しむ芸術となり得た19世紀、そして音楽が一大産業となった20世紀を経て、21世紀のいま、音楽の受容の形は変容している。楽団という団体はどのようにあるべきかを、ウィーン・フィルを例にとり正面から考察した書と言える。ぜひ、お手にとってお読みいただきたい。
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