公開日 2023/04/12 10:00
RIAAモードを新搭載
デジタル処理で「アナログレコードの原音再生」を実現。RMEから旗艦AD/DAコンバーター「ADI-2/4 Pro SE」登場
編集部:杉山康介
シンタックスジャパンは、RMEブランドのAD/DAコンバーター “ADI-2シリーズ” フラグシップモデル「ADI-2/4 Pro SE(Special Edition)」を3月15日より発売。本製品の発表会が都内の同社オフィスにて開催された。
■ユーザーの求める機能を多数搭載。RIAAモードにも注目
ADI-2/4 Pro SEは、RMEの新たなフラグシップ・最高峰のハイエンド機として、回路基板をはじめ随所をアップデートしたことで、ブランド史上最高のスペックを実現したというAD/DAコンバーター。
発表会の冒頭では、RME創業者であるマティアス・カーステンズ氏のビデオメッセージが公開。同社では2016年発表の「ADI-2 Pro」以降、さまざまなAD/DAコンバーター製品をリリースし、好評を博してきた。
それらの製品はホームスタジオからマスタリングスタジオまで、さまざまな制作現場で使われてきたが、全出力がバランス仕様であることや、バランスでのヘッドホン/スピーカー出力を同時に行えること、パワーアンプなど外部機器の電源オン/オフをできるトリガーアウト、バランスヘッドホンを簡単に接続できることを求める声が挙がっていたという。
そこで、これらの問題を一挙解決する良いタイミングと考え、「ADI-2 Pro」の上位機となるADI-2/4 Pro SEを開発。高価格なハイエンド機ということもあり、当初は500台限定生産にするつもりだったが、予想を遥かに超えた反響からレギュラーモデルとして販売することになったそうだ。
ちなみに、このビデオメッセージにはRMEのロゴが入った“電源機器らしきもの”が映り込んでいた。どういった仕様の機器なのか、いつ頃発表なのかなど具体的なことは一切教えてもらえなかったが、こうしてオフィシャルのビデオに映り込んでいるということは、詳細が明らかになる日もそう遠くないのだろう。続報に期待したい。
ADCチップには「ES9822Pro」、DACチップには「ES9038Q2M」2基を搭載し、回路基板もカスタムの10レイヤー設計へと刷新。10レイヤーの中にはグラウンドレイヤーを4枚入れてあるなど、機能性とコンパクトさに加え、超低ノイズ設計も実現した。
外観はほとんど前モデルと変わらないが、フロントに4.4mm5極ヘッドホン端子、リアにトリガーアウトを新搭載するほか、奥行きが3cm伸長。基板の刷新なども行なっているが、性能のグレードアップのためにはそれだけ容積が必要だったとのこと。
4.4mm5極ヘッドホン端子にはペンタコン製のものを採用し、接続を検知すると自動でバランスフォンモードになる「プラグ検出機能」を備える。
前モデルではバランスヘッドホンを接続すると、独自のAdvanced Balance回路がDACを各chに1基ずつ使っていたため、XLR出力が同時に使えなくなっていたが、本製品は最新のTrue Balancedモードにより、背面のXLR出力とは独立させて出力。バランスでのヘッドホン/スピーカー出力を同時に行えるようになった。
また、全ヘッドホン出力でハイ・インピーダンスモード/ロー・インピーダンスモード/IEMモードが使えるようになり、オーディオリスニングの幅が広がっただけでなく、クリエイターはあらゆる環境でモニタリングできるようになったとアピールする。
XLR/TRS出力で別のch信号を出力する機能も搭載。これはクリエイターからの要望が多かった機能とのことで、制作している音源に外部機器のエフェクトをかけたい場合、TRSから外部機器に繋ぎ、エフェクトをかけた信号をアナログ入力に戻し、XLRからモニタリング可能。従来機でもヘッドホン出力を使えば可能だったが、「やはり背面端子を使えた方が便利」ということで備えたという。
電源も新開発の、IECソケットを採用したスイッチング電源を採用。グランドピンを備えるものの、グランドループやハムノイズを防ぐため、グランド線とDCのマイナス極を直結せず間に1kΩの抵抗を設置。クラスII準拠なためグランドの保護設置は必要ないが、漏れ電流をほぼ0に抑えるために使うことで、スイッチング電源の弊害を完全に排除できるとする。
最も特筆すべきなのが「RIAAモード」だ。レコードプレーヤー(MMカートリッジのみ)をダイレクトに接続できる機能なのだが、ゲインやRIAA EQをデジタル領域で処理することで、小さなチャンネル偏差、正確なRIAA補正、完璧な周波数特性、超低歪み、ユーザーがヘッドルームを選択できることによる高いオーバーロード耐性など多くのメリットを生み出すという。
また、20Hz以下の低周波振動をカットする「ランブルフィルター」や、本来モノラルながら、カッティングシステムの制限でステレオ収録されている150Hz以下の低域成分をモノラル化する「RIAA Mono Bass」といった補正機能により、高品位なレコード再生とアーカイブ化を実現できるとのこと。
■編集部インプレッション
同社オフィスの試聴室にて、実際のサウンドを聴いてみた。スピーカーはジェネレックの同軸モニター“The Ones”「8351B」で、ジェネレックの音響補正ソフト「GLM」によるチューニングも施された状態だ。
まずはPCとUSB接続し、Tidalからハイレゾ音源を試聴。真っ先に感じるのが驚異的なS/Nの高さだ。それもピュアオーディオとは一味違う、真剣で斬り結ぶような緊張感を帯びたS/N感がありつつも、聴き疲れする感覚や分解的すぎてつまらない、といったモニターサウンドにつきまとうネガティブさは感じられない。リスニング向けの味付けもモニター向けの削ぎ落としもしない、本当に“音楽ソースをそのまま出力している”ような印象だ。
続いてRIAAモードでレコードを再生してみたが、レコードとは思えないほど瑞々しいビブラフォンの音に驚いた。おそらくデジタル補正の賜物だろうが、だからと言ってデジタル臭いツルッとした質感になっているわけでもなく、レコードらしい丸みや柔らかさもしっかり感じられる。ランブルフィルター/RIAA Mono Bassの効果も目覚ましく、これらを切ると低域がぼやけ、全体的に見通しが悪くなる。
「アナログレコードにデジタル変換を施す」というと、ともすればレコードの良さを消してしまうような印象を覚えるかもしれないが、本機のRIAAモードは「アナログレコードの情報を原音に忠実に再生している」ように思えた。今回は試していないものの、レコードのデジタルアーカイビングでも大いに力を発揮してくれそうだ。
またヘッドホン出力も高品位で、ヘッドホンアンプとしてもハイレベルに仕上がっている。「どの機能もリファレンスレベルのものを組み込んでいる」とのことで、想定売価で税込396,000円と決して安いとは言えない価格だが、USB-DAC/ヘッドホンアンプどちらとしても妥協のない性能、かつ単体でレコード再生もできると考えると、かなりコストパフォーマンスの高い製品ではないだろうか。
■ユーザーの求める機能を多数搭載。RIAAモードにも注目
ADI-2/4 Pro SEは、RMEの新たなフラグシップ・最高峰のハイエンド機として、回路基板をはじめ随所をアップデートしたことで、ブランド史上最高のスペックを実現したというAD/DAコンバーター。
発表会の冒頭では、RME創業者であるマティアス・カーステンズ氏のビデオメッセージが公開。同社では2016年発表の「ADI-2 Pro」以降、さまざまなAD/DAコンバーター製品をリリースし、好評を博してきた。
それらの製品はホームスタジオからマスタリングスタジオまで、さまざまな制作現場で使われてきたが、全出力がバランス仕様であることや、バランスでのヘッドホン/スピーカー出力を同時に行えること、パワーアンプなど外部機器の電源オン/オフをできるトリガーアウト、バランスヘッドホンを簡単に接続できることを求める声が挙がっていたという。
そこで、これらの問題を一挙解決する良いタイミングと考え、「ADI-2 Pro」の上位機となるADI-2/4 Pro SEを開発。高価格なハイエンド機ということもあり、当初は500台限定生産にするつもりだったが、予想を遥かに超えた反響からレギュラーモデルとして販売することになったそうだ。
ちなみに、このビデオメッセージにはRMEのロゴが入った“電源機器らしきもの”が映り込んでいた。どういった仕様の機器なのか、いつ頃発表なのかなど具体的なことは一切教えてもらえなかったが、こうしてオフィシャルのビデオに映り込んでいるということは、詳細が明らかになる日もそう遠くないのだろう。続報に期待したい。
ADCチップには「ES9822Pro」、DACチップには「ES9038Q2M」2基を搭載し、回路基板もカスタムの10レイヤー設計へと刷新。10レイヤーの中にはグラウンドレイヤーを4枚入れてあるなど、機能性とコンパクトさに加え、超低ノイズ設計も実現した。
外観はほとんど前モデルと変わらないが、フロントに4.4mm5極ヘッドホン端子、リアにトリガーアウトを新搭載するほか、奥行きが3cm伸長。基板の刷新なども行なっているが、性能のグレードアップのためにはそれだけ容積が必要だったとのこと。
4.4mm5極ヘッドホン端子にはペンタコン製のものを採用し、接続を検知すると自動でバランスフォンモードになる「プラグ検出機能」を備える。
前モデルではバランスヘッドホンを接続すると、独自のAdvanced Balance回路がDACを各chに1基ずつ使っていたため、XLR出力が同時に使えなくなっていたが、本製品は最新のTrue Balancedモードにより、背面のXLR出力とは独立させて出力。バランスでのヘッドホン/スピーカー出力を同時に行えるようになった。
また、全ヘッドホン出力でハイ・インピーダンスモード/ロー・インピーダンスモード/IEMモードが使えるようになり、オーディオリスニングの幅が広がっただけでなく、クリエイターはあらゆる環境でモニタリングできるようになったとアピールする。
XLR/TRS出力で別のch信号を出力する機能も搭載。これはクリエイターからの要望が多かった機能とのことで、制作している音源に外部機器のエフェクトをかけたい場合、TRSから外部機器に繋ぎ、エフェクトをかけた信号をアナログ入力に戻し、XLRからモニタリング可能。従来機でもヘッドホン出力を使えば可能だったが、「やはり背面端子を使えた方が便利」ということで備えたという。
電源も新開発の、IECソケットを採用したスイッチング電源を採用。グランドピンを備えるものの、グランドループやハムノイズを防ぐため、グランド線とDCのマイナス極を直結せず間に1kΩの抵抗を設置。クラスII準拠なためグランドの保護設置は必要ないが、漏れ電流をほぼ0に抑えるために使うことで、スイッチング電源の弊害を完全に排除できるとする。
最も特筆すべきなのが「RIAAモード」だ。レコードプレーヤー(MMカートリッジのみ)をダイレクトに接続できる機能なのだが、ゲインやRIAA EQをデジタル領域で処理することで、小さなチャンネル偏差、正確なRIAA補正、完璧な周波数特性、超低歪み、ユーザーがヘッドルームを選択できることによる高いオーバーロード耐性など多くのメリットを生み出すという。
また、20Hz以下の低周波振動をカットする「ランブルフィルター」や、本来モノラルながら、カッティングシステムの制限でステレオ収録されている150Hz以下の低域成分をモノラル化する「RIAA Mono Bass」といった補正機能により、高品位なレコード再生とアーカイブ化を実現できるとのこと。
■編集部インプレッション
同社オフィスの試聴室にて、実際のサウンドを聴いてみた。スピーカーはジェネレックの同軸モニター“The Ones”「8351B」で、ジェネレックの音響補正ソフト「GLM」によるチューニングも施された状態だ。
まずはPCとUSB接続し、Tidalからハイレゾ音源を試聴。真っ先に感じるのが驚異的なS/Nの高さだ。それもピュアオーディオとは一味違う、真剣で斬り結ぶような緊張感を帯びたS/N感がありつつも、聴き疲れする感覚や分解的すぎてつまらない、といったモニターサウンドにつきまとうネガティブさは感じられない。リスニング向けの味付けもモニター向けの削ぎ落としもしない、本当に“音楽ソースをそのまま出力している”ような印象だ。
続いてRIAAモードでレコードを再生してみたが、レコードとは思えないほど瑞々しいビブラフォンの音に驚いた。おそらくデジタル補正の賜物だろうが、だからと言ってデジタル臭いツルッとした質感になっているわけでもなく、レコードらしい丸みや柔らかさもしっかり感じられる。ランブルフィルター/RIAA Mono Bassの効果も目覚ましく、これらを切ると低域がぼやけ、全体的に見通しが悪くなる。
「アナログレコードにデジタル変換を施す」というと、ともすればレコードの良さを消してしまうような印象を覚えるかもしれないが、本機のRIAAモードは「アナログレコードの情報を原音に忠実に再生している」ように思えた。今回は試していないものの、レコードのデジタルアーカイビングでも大いに力を発揮してくれそうだ。
またヘッドホン出力も高品位で、ヘッドホンアンプとしてもハイレベルに仕上がっている。「どの機能もリファレンスレベルのものを組み込んでいる」とのことで、想定売価で税込396,000円と決して安いとは言えない価格だが、USB-DAC/ヘッドホンアンプどちらとしても妥協のない性能、かつ単体でレコード再生もできると考えると、かなりコストパフォーマンスの高い製品ではないだろうか。