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公開日 2019/11/20 06:30
8人の名指揮者が集う「ブルックナー:交響曲全集」も発売
ベルリン・フィルと来日公演中のメータが会見。ブル8は「オケにも自分にも合う」パワフルな指揮披露
編集部:小澤麻実
世界最高峰の音楽性と人気を誇るオーケストラのひとつ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が来日公演中だ。今回は11月13日の名古屋を皮切りに、大阪、福岡(なんと21年ぶり!)、川崎、東京の5都市をツアー。指揮者はズービン・メータ氏で、R.シュトラウス『ドン・キホーテ』とベートーヴェン『交響曲第3番〈英雄〉』、そしてブルックナー『交響曲第8番』というふたつのプログラムを披露している。
また、自主レーベル「ベルリンフィル・レコーディングス」からは、ブルックナーの交響曲全集も11月20日に発売となる(既に各コンサートホールでは先行販売中)。さらに先日引退した名指揮者 ベルナルド・ハイティンク氏との最後の共演を収めたダイレクトカットLPなど、パッケージソフトも注目すべきものの発売を控えている。
メータ氏らは19日、都内で会見を実施。来日公演についてやベルリン・フィルの目指す姿、ペトレンコ氏との来日予定などについて語った。
■パワフルな指揮を披露するメータ氏。ブル8は「オケにも自分にも非常に合う」
「Gruess Gott」とゆかりの深い南ドイツ風の挨拶で語りはじめたメータ氏。一時体調が心配されていたが、これまでの3都市では(着席ではあるが)パワフルな指揮を披露。今日の会見でも杖をついて歩いて席につき、笑顔を見せながら質問に答えた。
メータ氏は「ベルリン・フィルと日本に来られて、素晴らしい聴衆である日本の皆さんの前で演奏できることを大変嬉しく思っています。今回の2つのプログラムは、オーケストラにとっても私にとっても非常に合っているものです」と日本のファンにメッセージ。今回のプログラムのひとつであるブルックナー『交響曲第8番』は、ノヴァーク版の第2稿を使用。来日公演前に既にベルリンでも6回公演を行っており、そのもようはデジタルコンサートホールのアーカイブで見ることができる。
「ベルリン・フィルと初めて共演したのは1961年、私が25歳のときでした。以来このオーケストラとの共演は、毎回私に色々な教えとインスピレーションを与えてくれる場です」と語るメータ氏。「1961年のプログラムはフォン・アイネムの『オーケストラのための音楽』とマーラーの交響曲第1番だったんですが、実はそれが初めて振るマーラーだったんです。今ならそんなこと考えられない(笑)25歳だったからできたんですね」と、若き日の思い出も振り返った。
チェロ奏者でオーケストラ代表を務めるクヌート・ヴェーバー氏は「ベルリン・フィルはメータ氏と毎シーズン必ず共演しており、メンバーの多くは氏と長年一緒にやってきています。メータ氏は単なる客演指揮者という存在を超えた、頼りになる錨のような存在なのです」と密接な関係性を紹介。なおベルリン・フィルは今年2月に、長年におよぶ芸術面での貢献への感謝の意を込めて、メータ氏に名誉団員の称号を授与している。
ヴェーバー氏は「2019年は既に20回も氏と共演しており、量的な面でも質的な面でも今年が一番だと自信を持っています」とも語っていた。
■8人の名指揮者がブルックナーを演奏する豪華な「交響曲全集」も登場
既に来日公演に行かれた方にも行けない方にも注目なのが、11月20日に発売される「ブルックナー:交響曲全集」だ。メータ氏が演奏する第8番はもちろん、小澤征爾(第1番)、パーヴォ・ヤルヴィ(第2番)、ヘルベルト・ブロムシュテット(第3番)、ベルナルド・ハイティンク(第4番、5番)、マリス・ヤンソンス(第6番)、クリスティアン・ティーレマン(第7番)、サー・サイモン・ラトル(第9番)という錚々たる8人の名指揮者による演奏を収めている。
ベルリンフィル・レコーディングスの取締役であるオラフ・マニンガー氏は「この8人は現代のブルックナー解釈においてトップというべき存在。レコード会社の思惑ではなく、オーケストラのメンバーの記憶に残る名演という“音楽的な観点”から選んだものです。これは自分たちでレコード会社をやっているからこそできること」とアピール。
さらに「収められた音源は2009年から2019年の公演のものですが、フィルハーモニーや楽団員はほぼそのまま、指揮者だけが違うというわけです。ブルックナーの解釈は指揮者によって様々。それをホールやオーケストラがひとつにまとめあげています。異なる指揮者が奏でるフィルハーモニーを感じていただきたいと思います」とも語った。
「ブルックナー:交響曲全集」はCD9枚のほか全9曲のライブ映像を収めたBD3枚、ハイレゾ音声を収めたBD1枚と、ハイレゾ音源をダウンロードできるコード、そして日本限定特典などを収めた豪華版だ。価格は18,000円(税抜)。詳細はこちら。
■ハイティンクのラスト公演がダイレクトカットLPで来春登場
また、先日引退した名指揮者 ベルナルド・ハイティンク氏との最後の共演となった、2019年5月の「ブルックナー:交響曲第7番」がダイレクトカットLPでリリースされることも発表された。こちらは2020年春の発売を予定。2枚組3面構成で、4面目にはハイティンクとベルリン・フィル団員のサインが刻み込まれた仕様。価格は「今後発表」とされている。
「長年パートナーシップを築いてきたベルリン・フィルとハイティンク氏との最後の共演という歴史的なコンサート。デジタル・コンサートホールにはもちろん残るけれど、それとは別にかたちとしても残したい」という考えからダイレクトカットでの収録を決めたとのこと。
録音現場にカッティングマシンを持ち込み、収録した音をそのままリアルタイムにラッカー盤に刻み込むという、失敗が許されない非常にシビアな録音となるが、ハイティンク氏にこの話を持ちかけたところ「皆さんがそれでいいなら」と意外にもあっさりした反応だったという。しかし演奏会が終わるたびにレコーディングスタッフのもとを訪れて「で、使えそう?」と尋ねるなど、やはりその出来を気にしていたそうだ。「もちろん使える、素晴らしい演奏でした」(マニンガー氏)。
ベルリン・フィルは2016年にもブラームスの交響曲全集をダイレクトカットLPでリリースしている(関連ニュース)。ブラームスの時は指揮者の頭上のマイク1本録りだったが、ブルックナーの音楽は非常に空間の広がりを求められることから、複数のマイク(メインマイク3本+サブマイク2本)を使用したという。
またラッカー盤へのダイレクトカッティング時も「溝の幅調整がとても難しいんです。それで全てが決まる。大音量のところは溝幅が広くなりますが、ずっと広いままだと1枚に記録できる量が少なくなってしまう」(マニンガー氏)。事前に全曲通してのダイナミックレンジを把握しておき、それをもとに刻む溝の幅調整を行ったとのことだ。ダイレクトカットLPは「エンジニアの並々ならぬ努力はもちろん、技術協力してくれたパナソニックの尽力によるものです」と謝辞を述べた。
■ラトルのシベリウス全集がクリア・レコード盤でリリース
アナログレコード関連ではもうひとつ注目のリリース情報が。2015年に発売されたサー・サイモン・ラトル指揮「シベリウス:交響曲全集」(4CD+2BD)が、180g重量盤のクリア・レコード盤としても発売されることが発表された。1枚につき1交響曲を収録する7枚組で、価格は31,818円(税抜)。192kHz/24bitのハイレゾ音源もダウンロードすることができる。
カバー写真はCD/SACDと同じくフィンランドの写真家ヨルマ・プラーネンによるものだが、1枚ずつ異なるデザインのスリーブケースとなっている。そのデザインはシベリウスの音楽をイメージしたものだという。
■新首席指揮者・ペトレンコ氏との来日公演は「2021年、もしくはそれ以降」
2017/2018シーズンからベルリン・フィルのインテンダントを務めているアンドレア・ツィーチュマン氏は「各国に新しいオーケストラができているし、オーケストラをとりまく世界も変わっています。グローバルなプレゼンスを狙うオーケストラが増えていますが、これは我々にとって更に前進するモチベーション。いっそう質に磨きをかけていきたいと考えています」との姿勢を表明。
また「ベルリン・フィルはデジタル・コンサートホールなど、常にイノベーティブな企画を打ち出し、またエデュケーションプログラムなど社会的責任を意識しているオーケストラです。いま、そして未来に必要なものは何かを常に考えています。この精神はペトレンコ氏にも勿論引き継がれていて、今後も社会に貢献できるオーケストラとして邁進していきます」と、ベルリン・フィルの運営理念についても語った。
今年8月に首席指揮者に就任したキリル・ペトレンコ氏との来日ツアーはいつ頃実現しそうか、という問いに対しては「いまは調整中。2021年、もしくはそれ以降で調整している」と答えた。
また、自主レーベル「ベルリンフィル・レコーディングス」からは、ブルックナーの交響曲全集も11月20日に発売となる(既に各コンサートホールでは先行販売中)。さらに先日引退した名指揮者 ベルナルド・ハイティンク氏との最後の共演を収めたダイレクトカットLPなど、パッケージソフトも注目すべきものの発売を控えている。
メータ氏らは19日、都内で会見を実施。来日公演についてやベルリン・フィルの目指す姿、ペトレンコ氏との来日予定などについて語った。
■パワフルな指揮を披露するメータ氏。ブル8は「オケにも自分にも非常に合う」
「Gruess Gott」とゆかりの深い南ドイツ風の挨拶で語りはじめたメータ氏。一時体調が心配されていたが、これまでの3都市では(着席ではあるが)パワフルな指揮を披露。今日の会見でも杖をついて歩いて席につき、笑顔を見せながら質問に答えた。
メータ氏は「ベルリン・フィルと日本に来られて、素晴らしい聴衆である日本の皆さんの前で演奏できることを大変嬉しく思っています。今回の2つのプログラムは、オーケストラにとっても私にとっても非常に合っているものです」と日本のファンにメッセージ。今回のプログラムのひとつであるブルックナー『交響曲第8番』は、ノヴァーク版の第2稿を使用。来日公演前に既にベルリンでも6回公演を行っており、そのもようはデジタルコンサートホールのアーカイブで見ることができる。
「ベルリン・フィルと初めて共演したのは1961年、私が25歳のときでした。以来このオーケストラとの共演は、毎回私に色々な教えとインスピレーションを与えてくれる場です」と語るメータ氏。「1961年のプログラムはフォン・アイネムの『オーケストラのための音楽』とマーラーの交響曲第1番だったんですが、実はそれが初めて振るマーラーだったんです。今ならそんなこと考えられない(笑)25歳だったからできたんですね」と、若き日の思い出も振り返った。
チェロ奏者でオーケストラ代表を務めるクヌート・ヴェーバー氏は「ベルリン・フィルはメータ氏と毎シーズン必ず共演しており、メンバーの多くは氏と長年一緒にやってきています。メータ氏は単なる客演指揮者という存在を超えた、頼りになる錨のような存在なのです」と密接な関係性を紹介。なおベルリン・フィルは今年2月に、長年におよぶ芸術面での貢献への感謝の意を込めて、メータ氏に名誉団員の称号を授与している。
ヴェーバー氏は「2019年は既に20回も氏と共演しており、量的な面でも質的な面でも今年が一番だと自信を持っています」とも語っていた。
■8人の名指揮者がブルックナーを演奏する豪華な「交響曲全集」も登場
既に来日公演に行かれた方にも行けない方にも注目なのが、11月20日に発売される「ブルックナー:交響曲全集」だ。メータ氏が演奏する第8番はもちろん、小澤征爾(第1番)、パーヴォ・ヤルヴィ(第2番)、ヘルベルト・ブロムシュテット(第3番)、ベルナルド・ハイティンク(第4番、5番)、マリス・ヤンソンス(第6番)、クリスティアン・ティーレマン(第7番)、サー・サイモン・ラトル(第9番)という錚々たる8人の名指揮者による演奏を収めている。
ベルリンフィル・レコーディングスの取締役であるオラフ・マニンガー氏は「この8人は現代のブルックナー解釈においてトップというべき存在。レコード会社の思惑ではなく、オーケストラのメンバーの記憶に残る名演という“音楽的な観点”から選んだものです。これは自分たちでレコード会社をやっているからこそできること」とアピール。
さらに「収められた音源は2009年から2019年の公演のものですが、フィルハーモニーや楽団員はほぼそのまま、指揮者だけが違うというわけです。ブルックナーの解釈は指揮者によって様々。それをホールやオーケストラがひとつにまとめあげています。異なる指揮者が奏でるフィルハーモニーを感じていただきたいと思います」とも語った。
「ブルックナー:交響曲全集」はCD9枚のほか全9曲のライブ映像を収めたBD3枚、ハイレゾ音声を収めたBD1枚と、ハイレゾ音源をダウンロードできるコード、そして日本限定特典などを収めた豪華版だ。価格は18,000円(税抜)。詳細はこちら。
■ハイティンクのラスト公演がダイレクトカットLPで来春登場
また、先日引退した名指揮者 ベルナルド・ハイティンク氏との最後の共演となった、2019年5月の「ブルックナー:交響曲第7番」がダイレクトカットLPでリリースされることも発表された。こちらは2020年春の発売を予定。2枚組3面構成で、4面目にはハイティンクとベルリン・フィル団員のサインが刻み込まれた仕様。価格は「今後発表」とされている。
「長年パートナーシップを築いてきたベルリン・フィルとハイティンク氏との最後の共演という歴史的なコンサート。デジタル・コンサートホールにはもちろん残るけれど、それとは別にかたちとしても残したい」という考えからダイレクトカットでの収録を決めたとのこと。
録音現場にカッティングマシンを持ち込み、収録した音をそのままリアルタイムにラッカー盤に刻み込むという、失敗が許されない非常にシビアな録音となるが、ハイティンク氏にこの話を持ちかけたところ「皆さんがそれでいいなら」と意外にもあっさりした反応だったという。しかし演奏会が終わるたびにレコーディングスタッフのもとを訪れて「で、使えそう?」と尋ねるなど、やはりその出来を気にしていたそうだ。「もちろん使える、素晴らしい演奏でした」(マニンガー氏)。
ベルリン・フィルは2016年にもブラームスの交響曲全集をダイレクトカットLPでリリースしている(関連ニュース)。ブラームスの時は指揮者の頭上のマイク1本録りだったが、ブルックナーの音楽は非常に空間の広がりを求められることから、複数のマイク(メインマイク3本+サブマイク2本)を使用したという。
またラッカー盤へのダイレクトカッティング時も「溝の幅調整がとても難しいんです。それで全てが決まる。大音量のところは溝幅が広くなりますが、ずっと広いままだと1枚に記録できる量が少なくなってしまう」(マニンガー氏)。事前に全曲通してのダイナミックレンジを把握しておき、それをもとに刻む溝の幅調整を行ったとのことだ。ダイレクトカットLPは「エンジニアの並々ならぬ努力はもちろん、技術協力してくれたパナソニックの尽力によるものです」と謝辞を述べた。
■ラトルのシベリウス全集がクリア・レコード盤でリリース
アナログレコード関連ではもうひとつ注目のリリース情報が。2015年に発売されたサー・サイモン・ラトル指揮「シベリウス:交響曲全集」(4CD+2BD)が、180g重量盤のクリア・レコード盤としても発売されることが発表された。1枚につき1交響曲を収録する7枚組で、価格は31,818円(税抜)。192kHz/24bitのハイレゾ音源もダウンロードすることができる。
カバー写真はCD/SACDと同じくフィンランドの写真家ヨルマ・プラーネンによるものだが、1枚ずつ異なるデザインのスリーブケースとなっている。そのデザインはシベリウスの音楽をイメージしたものだという。
■新首席指揮者・ペトレンコ氏との来日公演は「2021年、もしくはそれ以降」
2017/2018シーズンからベルリン・フィルのインテンダントを務めているアンドレア・ツィーチュマン氏は「各国に新しいオーケストラができているし、オーケストラをとりまく世界も変わっています。グローバルなプレゼンスを狙うオーケストラが増えていますが、これは我々にとって更に前進するモチベーション。いっそう質に磨きをかけていきたいと考えています」との姿勢を表明。
また「ベルリン・フィルはデジタル・コンサートホールなど、常にイノベーティブな企画を打ち出し、またエデュケーションプログラムなど社会的責任を意識しているオーケストラです。いま、そして未来に必要なものは何かを常に考えています。この精神はペトレンコ氏にも勿論引き継がれていて、今後も社会に貢献できるオーケストラとして邁進していきます」と、ベルリン・フィルの運営理念についても語った。
今年8月に首席指揮者に就任したキリル・ペトレンコ氏との来日ツアーはいつ頃実現しそうか、という問いに対しては「いまは調整中。2021年、もしくはそれ以降で調整している」と答えた。
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