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公開日 2024/07/10 19:58
今年の第3四半期発売に向けて開発中
NUARL、バイアンプ駆動TWS「Inovator」発表。Audiodo社パートナーシップの背景など解説
編集部:杉山康介
エムティアイは、発売を控える同社NUARLブランドの完全ワイヤレス「X878(仮称)」にAudiodo社のパーソナルサウンド技術を搭載することに際し、プレス向けセミナーを実施した。
NUARLでは製品開発の際、ユーザーごとに異なる聴覚特性に対して、それに合わせた音質の最適化を行う「Sound Personalization」の概念を取り入れており、近年では完全ワイヤレス「NEXT 1」にイヤホン内蔵のプリセットを経由しないピュアダイレクトイコライザー、有線イヤホン「Overture」に交換可能な音調ノズルを採用するなどしている。
多様性が求められる現代では、聴感が個々人で異なることに対応することがメーカーにとっての課題となっていることや、イヤホンが聴感に合わず必要以上にボリュームを上げる行為を起因とした音響性難聴へのリスクヘッジとして、スウェーデンのサウンドパーソナライズ技術を提供する会社・Audiodoとのパートナーシップ締結に至ったという。
セミナーにはAudiodo社からMichel Roig氏、Alexander Rex氏が登壇。Michel氏によると、Audiodo社はスウェーデンのソニーエリクソンで聴覚系の技術開発を行なっていた方が興した会社で、「日本には縁を感じている」と語る。
提供するサウンドパーソナライズ技術については、物理・生理学的な観点のみならず、音響心理学的な観点も取り入れて研究開発していることが特徴だという。2019年に第1世代をリリースして以降、改良を重ねて現在は第4世代を提供。X878にも第4世代版が搭載される。
この第4世代版のキーフィーチャーには「パーソナルサウンド」「イコライザー」「空間オーディオ」「セーフリスニング」が挙げられると解説。
音響パーソナライズ機能はさまざまな会社が提供しているが、同社のものは左右の耳で個別、かつ250Hz-8kHzと広いレンジで計測すること、テスト時間が約3分と短いこと、テストトーンをイヤホン本体に内蔵することでコーデックなどの影響を排除し、誰でも同じテストトーンで計測できることが優位点だと説明する。
また、第4世代では計算アルゴリズムが使用するリファレンスモデルの改良、高周波数特性の補正モデルの更新、左右での聴覚差が大きくても最適な補正を可能としたというバランス調整を実施。さらに音量バランスの大小に応じてリアルタイムで補正の最適化も行うとのこと。
音質自体にもこだわっており、「ブランドが狙う音になるよう、変な味付けをしないことを徹底している」と説明。パーソナライズの結果はイヤホン自体に記録されるため、一度パーソナライズを行えば、スマホやPC、タブレットなど接続機器を変更しても同じ音で使うことができるそうだ。
加えて、今年の終わり頃に新機能「パーソナルトランスペアレンシー」を実装予定であることも発表。いわゆる外音取り込み機能なのだが、パーソナライズをかけた上から適応されるため、「イヤホンを装着していない、普通の状態よりもより良く外音を聞くことができる」と語る。こちらは会話モード、アウェアモードなど目的に応じたモード切り替えも可能だという。
Michel氏、Alexander氏の解説が終わった後には、NUARLからX878、改め「NUARL Inovatör 2×2 Sound Earbuds」が発表された。
xMEMS社のドライバーと自社開発のダイナミックドライバーを搭載、かつそれぞれを別のDACで駆動する“バイアンプ完全ワイヤレス”として、ポタフェスやヘッドフォン祭といったイベントで参考展示が行われてきた本機。現在ハードウェアは8割方が完成しており、今年の第3四半期中の発売に向けてアプリやファームウェア、音質調整などの開発を行なっているという。
NUARLでは、これまで自社開発のフルレンジダイナミックドライバー1発構成を貫いてきたが、本機ではハイブリッド構成を採用している。その理由を「自社開発ドライバーをより良い音で鳴らすため」だと説明する。
同社のドライバーは主にカーボン系素材の振動板が用いられている。これは同社の目指す音質にカーボンの特性が合っているためだが、反面、特定の高域にディップが出やすいことが懸念材料として挙げられていたという。
そこで、高域部分をカバーするために別のドライバーを採用することを決定。さまざまな選択肢の中で、MEMSドライバーが最も音質面での親和性が高かったため、サウンドの核を担う20Hz-9kHz帯をダイナミックドライバー、弱点である高域の補正と改善を9-40kHz帯にてMEMSドライバーが担うかたちで搭載する。
しかし、ダイナミックドライバーとMEMSドライバーの組み合わせの場合、それぞれの周波数カーブの特徴や、MEMSドライバーには専用アンプが必要となることから、歪みなどの音質への悪影響が生まれやすかった。それを解決する方法として、各ドライバーを別のDACで駆動するバイアンプ駆動方式にたどり着いたそうだ。
名前の「Inovatör」は「Innovator(イノベーター:革新者)」のルーマニア語「Inovator」からとったもので、2×2 Soundや、NUARL×Audiodoという2社の力が合わさった製品であることから、o上部に2つの点がついたö(オー・ウムラウト)を用いたとのこと。
セミナーの後には、試作機でサウンドパーソナライズを実際に体験することもできた。片耳につき6種類の帯域で各5回ずつ、計30回(両耳で計60回)の試行を行う方式で、手軽ながら本格的で、明確に帯域バランスが良くなった印象を受けた。正式発表に向けて続報を待ちたいところだ。
■音響心理学も用いたサウンドパーソナライズを実施
NUARLでは製品開発の際、ユーザーごとに異なる聴覚特性に対して、それに合わせた音質の最適化を行う「Sound Personalization」の概念を取り入れており、近年では完全ワイヤレス「NEXT 1」にイヤホン内蔵のプリセットを経由しないピュアダイレクトイコライザー、有線イヤホン「Overture」に交換可能な音調ノズルを採用するなどしている。
多様性が求められる現代では、聴感が個々人で異なることに対応することがメーカーにとっての課題となっていることや、イヤホンが聴感に合わず必要以上にボリュームを上げる行為を起因とした音響性難聴へのリスクヘッジとして、スウェーデンのサウンドパーソナライズ技術を提供する会社・Audiodoとのパートナーシップ締結に至ったという。
セミナーにはAudiodo社からMichel Roig氏、Alexander Rex氏が登壇。Michel氏によると、Audiodo社はスウェーデンのソニーエリクソンで聴覚系の技術開発を行なっていた方が興した会社で、「日本には縁を感じている」と語る。
提供するサウンドパーソナライズ技術については、物理・生理学的な観点のみならず、音響心理学的な観点も取り入れて研究開発していることが特徴だという。2019年に第1世代をリリースして以降、改良を重ねて現在は第4世代を提供。X878にも第4世代版が搭載される。
この第4世代版のキーフィーチャーには「パーソナルサウンド」「イコライザー」「空間オーディオ」「セーフリスニング」が挙げられると解説。
音響パーソナライズ機能はさまざまな会社が提供しているが、同社のものは左右の耳で個別、かつ250Hz-8kHzと広いレンジで計測すること、テスト時間が約3分と短いこと、テストトーンをイヤホン本体に内蔵することでコーデックなどの影響を排除し、誰でも同じテストトーンで計測できることが優位点だと説明する。
また、第4世代では計算アルゴリズムが使用するリファレンスモデルの改良、高周波数特性の補正モデルの更新、左右での聴覚差が大きくても最適な補正を可能としたというバランス調整を実施。さらに音量バランスの大小に応じてリアルタイムで補正の最適化も行うとのこと。
音質自体にもこだわっており、「ブランドが狙う音になるよう、変な味付けをしないことを徹底している」と説明。パーソナライズの結果はイヤホン自体に記録されるため、一度パーソナライズを行えば、スマホやPC、タブレットなど接続機器を変更しても同じ音で使うことができるそうだ。
加えて、今年の終わり頃に新機能「パーソナルトランスペアレンシー」を実装予定であることも発表。いわゆる外音取り込み機能なのだが、パーソナライズをかけた上から適応されるため、「イヤホンを装着していない、普通の状態よりもより良く外音を聞くことができる」と語る。こちらは会話モード、アウェアモードなど目的に応じたモード切り替えも可能だという。
■X878改め「Inovatör」発表。2×2サウンドの背景とは
Michel氏、Alexander氏の解説が終わった後には、NUARLからX878、改め「NUARL Inovatör 2×2 Sound Earbuds」が発表された。
xMEMS社のドライバーと自社開発のダイナミックドライバーを搭載、かつそれぞれを別のDACで駆動する“バイアンプ完全ワイヤレス”として、ポタフェスやヘッドフォン祭といったイベントで参考展示が行われてきた本機。現在ハードウェアは8割方が完成しており、今年の第3四半期中の発売に向けてアプリやファームウェア、音質調整などの開発を行なっているという。
NUARLでは、これまで自社開発のフルレンジダイナミックドライバー1発構成を貫いてきたが、本機ではハイブリッド構成を採用している。その理由を「自社開発ドライバーをより良い音で鳴らすため」だと説明する。
同社のドライバーは主にカーボン系素材の振動板が用いられている。これは同社の目指す音質にカーボンの特性が合っているためだが、反面、特定の高域にディップが出やすいことが懸念材料として挙げられていたという。
そこで、高域部分をカバーするために別のドライバーを採用することを決定。さまざまな選択肢の中で、MEMSドライバーが最も音質面での親和性が高かったため、サウンドの核を担う20Hz-9kHz帯をダイナミックドライバー、弱点である高域の補正と改善を9-40kHz帯にてMEMSドライバーが担うかたちで搭載する。
しかし、ダイナミックドライバーとMEMSドライバーの組み合わせの場合、それぞれの周波数カーブの特徴や、MEMSドライバーには専用アンプが必要となることから、歪みなどの音質への悪影響が生まれやすかった。それを解決する方法として、各ドライバーを別のDACで駆動するバイアンプ駆動方式にたどり着いたそうだ。
名前の「Inovatör」は「Innovator(イノベーター:革新者)」のルーマニア語「Inovator」からとったもので、2×2 Soundや、NUARL×Audiodoという2社の力が合わさった製品であることから、o上部に2つの点がついたö(オー・ウムラウト)を用いたとのこと。
セミナーの後には、試作機でサウンドパーソナライズを実際に体験することもできた。片耳につき6種類の帯域で各5回ずつ、計30回(両耳で計60回)の試行を行う方式で、手軽ながら本格的で、明確に帯域バランスが良くなった印象を受けた。正式発表に向けて続報を待ちたいところだ。
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