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公開日 2024/02/02 10:33
【連載】佐野正弘のITインサイト 第94回

気になるAI機能は?日本発売決定前の「Galaxy S24 Ultra」に触れてみた

佐野正弘
サムスン電子が1月18日に発表した、新しいスマートフォンのフラグシップモデル「Galaxy S24」シリーズ。ハード性能の高さだけでなく、話題の「生成AI」をはじめとしたAI技術をフル活用した「Galaxy AI」で、新しい機能を実現している点が大きな特徴となっている。

同シリーズは、記事執筆時点でまだ国内での販売に関するアナウンスがなされていないのだが、今回最上位機種の「Galaxy S24 Ultra」をお借りすることができたので、AI関連機能を中心にレビューしてみたい。

なお、国内でも発表されていないモデルということもあって、使用した時間はごく短期間であることと、国内でモバイル通信が使用できず、通信手段がWi-Fiに限られたことから、「ライブ翻訳」など音声通話を活用した機能は確認できていない点を、あらかじめご了承頂きたい。

■Galaxy AIを活用した新機能をチェック



まずは本体から確認すると、ディスプレイは6.8インチの有機ELを採用しており、海外版のサイズは79.0W×162.3H×8.6Dmm、重量は232g。国内で販売されている前機種の「Galaxy S23 Ultra」は、同じく6.8インチのディスプレイを採用しており、サイズは78.1W×163.4H×8.9Dmm、重量は234gとなっていることから、若干のサイズの変化はあれど大きくは変わっていないことが分かる。

「Galaxy S24 Ultra」の前面。見た目には前機種の「Galaxy S23 Ultra」と大きな違いはない

ボディデザインも従来のものを踏襲しており、スクエアな形状で前面のカメラはパンチホール、背面も個々のカメラが際立つGalaxyシリーズらしいものとなっている。ただ、本体のフレームにはアルミニウムではなくチタニウムが新たに用いられていることから、触感は同じくチタニウム素材を採用したアップルの「iPhone 15 Pro」シリーズに近い。

背面から見たところ。こちらも基本的なデザインに変化はないが、ボディ素材はチタニウムに変更されたため、側面の触感には違いがある

側面のインターフェースを確認すると、右側面に音量キーと電源キー、底面には充電などに用いるUSB Type-C端子、そしてSペンが備わっている。Galaxy S23 Ultraと同様、Sペンによる操作も可能だというのは嬉しい。

Sペンが内蔵されている点も従来機種と変わっておらず、ペン操作ももちろん可能だ

見た目的には大きな変化がないように感じるGalaxy S24 Ultraだが、大きく変わっているのは先にも触れた通り、Galaxy AIを活用した機能の数々だ。なおGalaxy AIは、事前にSamsungアカウントでログインすることで利用できるようになる。

とりわけ、日本のユーザーが気になるのは、AIによる文字起こしや翻訳などの機能がどの程度実用的なのか?というところではないだろうか。Galaxy S24シリーズの言語関連機能は、日本語を含む13の言語に対応していることから、こちらも可能な限り実際に試してみた。

AI処理を活用した機能の1つが、チャットなどでやり取りするメッセージを翻訳するというもので、こちらはGalaxyシリーズ独自のキーボード「Samsungキーボード」を通じて処理がなされるようだ。実際に、日本語や英語で短文のテキストを入力して試してみたところ、割と正確に翻訳してくれる印象だ。

標準の「メッセージ」アプリ上で翻訳機能を利用しているところ。日本語を入力すると自動的に英語に翻訳し、入力がなされているのが分かる

ただ固有名詞には弱いようで、固有名詞を入力すると翻訳できない旨のメッセージが表示されてしまうこともあった。言語関連処理の多くはプライベートな要素を多く含むだけに、主としてデバイス上のAI処理技術が用いられていることから、インターネット上にある固有名詞の情報を活用できないことがその原因といえそうだ。

試しに固有名詞を入力してみたところ、翻訳できない旨のメッセージが現れる

そしてもう1つは、専用のボイスレコーダーアプリを用いた文字起こし機能だ。AI技術を活用したボイスレコーダーでの文字起こしと言えば、Googleの「Pixel」シリーズが挙げられ、そちらは録音中の音声をリアルタイムで文字起こししてくれるのだが、Galaxy S24 Ultraのボイスレコーダーアプリは録音終了後にまとめて文字起こしする仕組みとなっている。

ボイスレコーダーアプリによる文字起こしはリアルタイムではなく、録音後に言語を選んで、まとめて文字起こしする形となる

それゆえ、起こした文字をリアルタイムに確認できないのは残念だが、文字起こしした内容を翻訳したり、生成AIの技術を用いて要約したりできるなど機能はかなり豊富だ。そこで実際に、英語と日本語で実際に録音をし、文字起こしや翻訳、要約の精度を試してみた。

まずは英語に関してだが、こちらは文字起こしの精度が非常に高く、翻訳、要約の制度もかなり高い。従来、英語のスピーチを録音して日本語にするには複数のアプリを用いる必要があったが、それを1つのアプリで完結できることから英語に接する機会が多い人には非常に便利だといえる。

英語で実施された「Galaxy S24」シリーズの発表イベントの一部を録音し、文字起こししてみたところ。文字起こしの精度は高く、日本語に翻訳した内容も十分理解できるものとなっている

一方で日本語に関しては、Pixelシリーズのボイスレコーダーアプリと比べ、明らかに文字起こしの精度が低い。それゆえ翻訳した文章も、精度が低い文字起こしがベースとなってしまうことから、正しい内容を反映できていない印象だ。

「PHILE WEB」の公式YouTubeチャンネルの動画の音声を録音し、文字起こししたところ。読める部分もあるが、英語と比べるとかなり精度が落ちることが分かる

ただ要約すると精度が大きく変化し、録音した内容を正しく反映した精度の高い内容となっている。録音時の文字起こしはデバイス上のAI処理で対応しているのに対し、要約はコンピューティングパワーが必要な生成AIを用いるため、クラウドによるAI技術を活用していることから、その違いが精度に大きく影響しているのではないかと考えられる。

先の音声を要約したところ。文字起こしの時とは違って文章の精度が大幅に高まっているのだが、使用するAIに違いがあるためと考えられる

それゆえ、少なくともデバイス上のAI処理に関しては、日本語の学習がまだ足りていない印象を受けたというのが正直なところだ。現時点では日本での発売が決まっていないが、もし日本で販売する際にはより精度を高めることが求められるだろう。

■AI技術を活用したカメラ。生成AI活用の編集機能も



そしてもう1つ、AI技術が活用されているのがカメラだ。Galaxy S24 Ultraの背面のカメラは、2億画素の広角カメラと1,200万画素の超広角カメラ、1,000万画素の光学3倍ズーム相当の望遠カメラ、そして5,000万画素の光学5倍ズーム相当の望遠カメラと、引き続き4眼構成となっている。

カメラは従来と同様に4眼構成で、広角カメラは引き続き2億画素。だが望遠カメラの1つが変更され、遠方を撮影する際の精度が大幅に向上している


広角カメラで撮影した写真


超広角カメラで撮影した写真


光学3倍ズーム相当の望遠カメラで撮影した写真


光学5倍ズーム相当の望遠カメラで撮影した写真

このうち、Galaxy S23 Ultraから大きく変わっているのが、光学5倍ズーム相当の望遠カメラだ。前機種では1,000万画素の光学10倍ズーム相当だったが、Galaxy S24 Ultraではズームの倍率こそ下がったものの、画素数を大幅にアップしたことで、10倍ズーム相当までをカバーしながらもより明るく撮影できるようになった。実際10倍ズームで夜景モードを使って撮影すれば、かなり暗い状況下でも明るく撮影できることが分かる。

10倍ズームでナイトモードをオフにして撮影した写真


同じく10倍ズームで、ナイトモードをオンにして撮影した写真。望遠カメラの強化により、10倍ズームでも暗所で明るく撮影できるようになったことが分かる
だが、より大きな特徴となるのは、やはり生成AIを活用した機能だろう。実際Galaxy S24 Ultraでは、Pixelシリーズの「生成マジック」のように、写真上の人物やオブジェクトを動かしたり、消したりした跡をAIが自動生成してくれる編集機能が備わっている。


先の超広角カメラで撮影した写真から、編集機能を使ってキリンを移動させたところ。移動した部分を生成して埋め合わせていることが分かる

こちらもいくつかの写真で実際に試してみたのだが、移動した跡を比較的自然に埋め合わせてくれる場合もある一方で、跡が明らかに不自然だったり、想定外の埋め合わせ方をしたりするケースも見られた。また、生成AIの処理のためデータ通信が必須なことから、他のスマートフォンのテザリングを用いてネットワークに接続していた際には、処理に時間がかかりすぎて失敗するケースも少なからず生じていた。

編集の際は写真からオブジェクトを選び、移動や削除をするだけでよいので簡単だ


意図しない埋め合わせ方をするケースもあり、先の編集画面で手前の犬のオブジェクトを1つ消してみたところ、その部分がスケートボードで埋め合わされてしまった
被写体の跡を自然に埋める、という部分では生成マジックもまだ課題が多いと感じるだけに、より自然な埋め合わせを実現するには一層の技術進化が必要といえそうだ。ただ一方で、非常に実用的と感じたのが「Instant Slow-mo」である。

これは、動画の中間フレームを生成AIで自動生成することにより、通常のフレームレートで撮影した動画をスロー再生できるようにする機能。動画を再生中に長押しすることで利用でき、実際に撮影した動画で試してみると、かなり自然なスローモーション再生を実現していたことから、通常の再生では確認できない、動画の細かな部分を確認するのに用いると便利そうだ。

最後に性能面について触れておくと、チップセットにはGalaxyシリーズ独自にカスタマイズされた、クアルコム製の「Snapdragon 8 Gen 3 for Galaxy」を搭載。RAMは12GB、ストレージは512GBとなっている。それゆえ性能が高いことは間違いなく、AAAクラスのゲームをいくつか試してみたが、いずれも画質を最高設定にしてもプレイは快適だ。

だが、より驚いたのが放熱性能の高さであり、AAAクラスのゲームを1時間程度プレイしても、本体の温度が32〜33度程度で熱さを感じることがなかったのだ。Galaxy S23 Ultraでは、負荷の高いゲームをプレイすると40度くらいにまで温度が上昇していただけに、チップセットの変化に加えベイパーチャンバーのサイズを大型化するなど、放熱処理が効率よく働いている様子を見て取ることができた。


「原神」をプレイしてみたところ。1時間くらいプレイしても本体はほとんど熱くならず、放熱はかなり優秀だ
振り返ると、Galaxy S24 UltraはAI技術を活用した意欲的な機能が多く盛り込まれており、従来とは異なるスマートフォンの進化の方向性を見て取ることができたことは確かだ。その一方で、ベースの機能・性能に関しても着実にブラッシュアップが進んでおり、とりわけ望遠カメラやゲーミングに関してはかなり使い勝手が良くなったと感じる。

ただ一方でAI関連処理、とりわけ日本語の処理に関してはまだ不足していると感じる部分も多く、英語で使う分には問題ないが、もし国内投入されるのであれば日本語関連のブラッシュアップが不可欠だと感じたのも事実だ。

何度も触れている通り、Galaxy S24 Ultraの国内発売は執筆時点では未定だが、より進化して国内投入がなされることに大いに期待したい。

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