公開日 2017/07/06 10:00
パワーアンプ
ACCUSTIC ARTS
AMPII - MK3
¥1,850,000(税抜)
ACCUSTIC ARTS(アクースティック・アーツ)はドイツのブランドで、生産も「メイド・イン・ジャーマニー」を堅持している。それでも国産機と価格は互角と言ってよく、ハイエンド・ユーザーにとって有力な選択肢になるべき存在だ。特に強く推奨したいのが「AMPII - MK3」である。
AMPII - MK3のオリジナルは1997年同社の設立時に登場しており、本機はその第三世代になるが、実は初代機から大きく変わったところはほとんどないのである。「伝統は変えない」というのが同社の考え方で、ではモデルチェンジの意味はどこにあるのかというと、細かな改良を重ねてさらに魅力的なものにすることだという。実際初期のモデルから音は少しずつ変わった。根本は変えずリファインを重ねたことで、充実の度合いがどんどん深まっていったと思われる。
本機で最も大きな特徴は、ダンピング・ファクター切り替えという機能を採用したことである。 ダンピング・ファクターは、大きいほどスピーカーの逆起電力を吸収して、実効出力を高めることができる。つまり駆動力が増すわけである。しかし同社によると、この数値は周波数によって変化するため、高けれはいいというわけではないという。
ダンピング・ファクター切り替え機能は、スイッチを入れるとダンピング・ファクターをやや低く設定し、全体を平坦な特性に維持する。つまり可聴帯域全体にわたって、最適な範囲に収めることが可能になる。結局駆動力という点にスポットを当てた改良なのだが、このことも含めて今回は本機の力というものを強く実感したのである。
その音は極めてニュートラルである。初代の頃はまだわずかにきらきらしたものが残っていたが、本機では上から下までまったく無色透明になっている。こんな力があったのかと感じたのは外でもない、普段試聴用にしている尾高忠明/札幌交響楽団による『シベリウス 交響曲第6番・ 第7番』だ。
ほとんど加工を施していない、ダイナミック・レンジの広い録音である。 ただ編成はそれほど大きくはないため、低音の出方にそれほど強烈なものはない......はずだった。ところがこのアンプでは、鳴り方が違う。コントラバスが意外なほどはっきりと聴こえてくる。ちょうどホールで実演を聴いているのと同じ感触で、深いだけでなく明瞭なのだ。
音程もひと回り下まで出ているのかもしれない。凄いものだと感じた。ほとんど生と同じ、あるいはそれ以上かもしれない。生きた低音。スピーカーでこういう音を聴いたのは、ことによると初めてかもしれない。こういう音は国産ハイエンド機とは、また違った力と魅力を感じさせる。ぜひ多くのユーザーに注目して欲しいものである。
(井上千岳)
Specifications
●電圧利得:31.0dB●電源トランス:2,200 VA(W)●電源キャパシター:160,000μF●入力インピーダンス:バランス 20kΩ×2, アンバランス 100kΩ●出力(THD+N =0.1%):675W/ch(2Ω)、450W/ch(4Ω)、275W/ch(8Ω)●立ち上がり、下がり時間(方形波20kHz,12Vpp):3.1μs(4Ω)●クロストーク:109dB(1kHz)● 高調波歪(THD+N):0.001%(4Ω、10W)●SN比:−103dB(ref.6.325V)●サイズ:482W×350H×430Dmm●質量:55kg●取り扱い:(株)ハイ・ファイ・ジャパン
※本記事は「季刊オーディオアクセサリー」164号所収記事の一部を抜粋したものです。くわしいレビューは雑誌でご覧頂けます。購入はこちらから
細かな改良を重ねた第三世代機
【製品批評】ACCUSTIC ARTS「AMPII - MK3」 ー 深く明瞭な“生きた低音”を聴かせるパワーアンプ
井上千岳パワーアンプ
ACCUSTIC ARTS
AMPII - MK3
¥1,850,000(税抜)
ACCUSTIC ARTS(アクースティック・アーツ)はドイツのブランドで、生産も「メイド・イン・ジャーマニー」を堅持している。それでも国産機と価格は互角と言ってよく、ハイエンド・ユーザーにとって有力な選択肢になるべき存在だ。特に強く推奨したいのが「AMPII - MK3」である。
AMPII - MK3のオリジナルは1997年同社の設立時に登場しており、本機はその第三世代になるが、実は初代機から大きく変わったところはほとんどないのである。「伝統は変えない」というのが同社の考え方で、ではモデルチェンジの意味はどこにあるのかというと、細かな改良を重ねてさらに魅力的なものにすることだという。実際初期のモデルから音は少しずつ変わった。根本は変えずリファインを重ねたことで、充実の度合いがどんどん深まっていったと思われる。
本機で最も大きな特徴は、ダンピング・ファクター切り替えという機能を採用したことである。 ダンピング・ファクターは、大きいほどスピーカーの逆起電力を吸収して、実効出力を高めることができる。つまり駆動力が増すわけである。しかし同社によると、この数値は周波数によって変化するため、高けれはいいというわけではないという。
ダンピング・ファクター切り替え機能は、スイッチを入れるとダンピング・ファクターをやや低く設定し、全体を平坦な特性に維持する。つまり可聴帯域全体にわたって、最適な範囲に収めることが可能になる。結局駆動力という点にスポットを当てた改良なのだが、このことも含めて今回は本機の力というものを強く実感したのである。
その音は極めてニュートラルである。初代の頃はまだわずかにきらきらしたものが残っていたが、本機では上から下までまったく無色透明になっている。こんな力があったのかと感じたのは外でもない、普段試聴用にしている尾高忠明/札幌交響楽団による『シベリウス 交響曲第6番・ 第7番』だ。
ほとんど加工を施していない、ダイナミック・レンジの広い録音である。 ただ編成はそれほど大きくはないため、低音の出方にそれほど強烈なものはない......はずだった。ところがこのアンプでは、鳴り方が違う。コントラバスが意外なほどはっきりと聴こえてくる。ちょうどホールで実演を聴いているのと同じ感触で、深いだけでなく明瞭なのだ。
音程もひと回り下まで出ているのかもしれない。凄いものだと感じた。ほとんど生と同じ、あるいはそれ以上かもしれない。生きた低音。スピーカーでこういう音を聴いたのは、ことによると初めてかもしれない。こういう音は国産ハイエンド機とは、また違った力と魅力を感じさせる。ぜひ多くのユーザーに注目して欲しいものである。
(井上千岳)
Specifications
●電圧利得:31.0dB●電源トランス:2,200 VA(W)●電源キャパシター:160,000μF●入力インピーダンス:バランス 20kΩ×2, アンバランス 100kΩ●出力(THD+N =0.1%):675W/ch(2Ω)、450W/ch(4Ω)、275W/ch(8Ω)●立ち上がり、下がり時間(方形波20kHz,12Vpp):3.1μs(4Ω)●クロストーク:109dB(1kHz)● 高調波歪(THD+N):0.001%(4Ω、10W)●SN比:−103dB(ref.6.325V)●サイズ:482W×350H×430Dmm●質量:55kg●取り扱い:(株)ハイ・ファイ・ジャパン
※本記事は「季刊オーディオアクセサリー」164号所収記事の一部を抜粋したものです。くわしいレビューは雑誌でご覧頂けます。購入はこちらから
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