公開日 2018/12/06 06:30
プリアンプ「Formula P1000」も登場予定
XI AUDIO「SagraDAC」を聴く ーラダー抵抗方式DACで実現した圧倒的ピュアリティ
岩井 喬
オーディオ技術が日々進歩していることは間違いない事実だが、今回、ご紹介するXI AUDIO(イレブンオーディオ)の2つの新製品は、まさに「革新」となる可能性を秘めている。いわゆるハイエンド機でしか採用されて来なかったR-2Rラダー抵抗変換方式を身近なものとする「SagraDAC」、そしてプリアンプとしては珍しいクラスA方式を採用した「Formula P1000」。その完成度の高さは、XI AUDIOという新進ブランドの技術レベル、そしてサウンドへのセンスの高さを物語っている。果たして、XI AUDIOはどのような音の「世界」を音楽ファンへ見せてくれるブランドなのか。この2つの新製品の詳細を存分にお届けしよう。
XI AUDIO
D/Aコンバーター
SagraDAC
¥490,000(税抜)
プリアンプ
Formula P1000
¥315,000(税抜)
■2つの新しい製品から聴けた精密かつシームレスなサウンド
XI AUDIOがR-2Rラダー抵抗変換方式のディスクリートDACを開発していることは、今年の春ごろから聞いていたが、ついにSagraDACとして発売される見込みとなった。先日、同時に開発が進んでいるという純A級ディスクリート・プリアンプFormula P1000と共に試聴する機会を得たが、そのサウンドは非常にシームレスで硬さのない緻密なもので、オーケストラのハーモニーも朗らかに分離良くナチュラルに描き出してくれた。現在主流であるΔΣ方式のDACと比べ、線が太く滑らかで低重心である。
現行品のR-2Rラダー抵抗変換方式ディスクリートDACは100万円以上の製品ばかりである。すでに生産が完了しているラダー方式DACチップ、TI製「PCM1704」を積んだものも散見するが、多くが在庫限りの限定品であり、一般的に入手しにくい状況に変わりない。そうしたなかで登場したSagraDACは、50万円を切る現実的なプライスで投入される予定であるという。これはΔΣ方式寡占である、DACの世界の大きなブレイクスルーとなる予感がする。
■録音機の世界でも数々の銘機を手がけた名エンジニア
まず改めてこのSagraDACを開発したXI AUDIOについて紹介したい。XI AUDIOは2017年に創業した新進ブランドであるが、その創業者でありエンジニアでもあるCEO、マイケル・シャオ氏は、業務用オーディオ機器開発・製造で実績を上げているインフォメディア社にて、コンシューマー向けブランド、ロトゥーのハイエンドDAP、PAW Goldの開発にも携わっていた。さらにナグラ・プロフェッショナルの責任者として数々のODMを手掛けており、オーディオへの深い理解と高い技術力、実績を持つ人物である。
XI AUDIOのスタートは孤高の平面駆動型ハイエンドヘッドフォン、アビスAB‐1266Phiを理想的に駆動できるヘッドフォンアンプの開発を趣味ベースで進めていたことがきっかけであるという。このヘッドフォンアンプの完成版、Formula Sがブランド初の製品となっており、今回のSagraDACもFormulaSと同様に、デスクトップでも使えるようなコンパクトなサイズに設計されている。
■誤差0.012%という高精度な抵抗を採用
SagraDACはPCM384kHz/24bit&DSD11.2MHz対応のUSB-DACだ。USB以外にはBNC、AES/EBU、I2S(HDMI端子を用いたSAW規格)が各1系統ずつ。そしてS/PDIFが3系統(RCA同軸×2、光TOS×1)用意されている。DACの心臓部はデンマークのスークリス・エンジニアリング(Soekris Engeneering)社製R‐2Rモジュールを搭載。27bit処理の構成(3bit分は微小レベルの領域をより正確に再現するために使用)で、合計216個の抵抗を使用しているという。
またUSBインターフェイスにはイタリアのアマネロ・テクノロジーズ(Amanero Technologies)社製Combo384のカスタム品を用いた。スークリスとアマネロ・テクノロジーズに関しては、シャオ氏が中国での販売代理店も手掛けていることもあり、このSagraDAC用に特別なカスタムチューニングを実施してもらっているそうだ。スークリスとの出会いもシャオ氏が理想とする音を実現できるDACがR2R方式であったこと、そしてそれを現実の形に落とし込むとき、スークリスの発表していたモジュールが最適であると考え、アプローチしたのがきっかけだという。
特にこのモジュールが優れているのは、シリコンバレーで製造されているというスークリスオリジナルの誤差0.012%という高精度な抵抗を用いていることだ。R‐2Rラダー抵抗変換方式方式の要となるのが抵抗の精度と基準値を作り出す供給電圧の正確さ、安定度である。電源に関してはXI AUDIOの持つ技術力でカバー。各セクションに対し9つの独立電源を用意し、最適な電力供給を行っているという。
またFPGAを使って抵抗への電源のON/OFFを制御するなど、独自の構成を取り入れ、安定的で精度の高いDA変換を行っているそうだ。なお、入力信号はDSDにも対応しているが、R‐2Rラダー抵抗変換方式自体はPCMと親和性の高いDA変換方式であるので、DSDは352.8kHz/24bitのPCM信号へ変換したのち、DA変換を行うという。
XI AUDIO
D/Aコンバーター
SagraDAC
¥490,000(税抜)
プリアンプ
Formula P1000
¥315,000(税抜)
■2つの新しい製品から聴けた精密かつシームレスなサウンド
XI AUDIOがR-2Rラダー抵抗変換方式のディスクリートDACを開発していることは、今年の春ごろから聞いていたが、ついにSagraDACとして発売される見込みとなった。先日、同時に開発が進んでいるという純A級ディスクリート・プリアンプFormula P1000と共に試聴する機会を得たが、そのサウンドは非常にシームレスで硬さのない緻密なもので、オーケストラのハーモニーも朗らかに分離良くナチュラルに描き出してくれた。現在主流であるΔΣ方式のDACと比べ、線が太く滑らかで低重心である。
現行品のR-2Rラダー抵抗変換方式ディスクリートDACは100万円以上の製品ばかりである。すでに生産が完了しているラダー方式DACチップ、TI製「PCM1704」を積んだものも散見するが、多くが在庫限りの限定品であり、一般的に入手しにくい状況に変わりない。そうしたなかで登場したSagraDACは、50万円を切る現実的なプライスで投入される予定であるという。これはΔΣ方式寡占である、DACの世界の大きなブレイクスルーとなる予感がする。
■録音機の世界でも数々の銘機を手がけた名エンジニア
まず改めてこのSagraDACを開発したXI AUDIOについて紹介したい。XI AUDIOは2017年に創業した新進ブランドであるが、その創業者でありエンジニアでもあるCEO、マイケル・シャオ氏は、業務用オーディオ機器開発・製造で実績を上げているインフォメディア社にて、コンシューマー向けブランド、ロトゥーのハイエンドDAP、PAW Goldの開発にも携わっていた。さらにナグラ・プロフェッショナルの責任者として数々のODMを手掛けており、オーディオへの深い理解と高い技術力、実績を持つ人物である。
XI AUDIOのスタートは孤高の平面駆動型ハイエンドヘッドフォン、アビスAB‐1266Phiを理想的に駆動できるヘッドフォンアンプの開発を趣味ベースで進めていたことがきっかけであるという。このヘッドフォンアンプの完成版、Formula Sがブランド初の製品となっており、今回のSagraDACもFormulaSと同様に、デスクトップでも使えるようなコンパクトなサイズに設計されている。
■誤差0.012%という高精度な抵抗を採用
SagraDACはPCM384kHz/24bit&DSD11.2MHz対応のUSB-DACだ。USB以外にはBNC、AES/EBU、I2S(HDMI端子を用いたSAW規格)が各1系統ずつ。そしてS/PDIFが3系統(RCA同軸×2、光TOS×1)用意されている。DACの心臓部はデンマークのスークリス・エンジニアリング(Soekris Engeneering)社製R‐2Rモジュールを搭載。27bit処理の構成(3bit分は微小レベルの領域をより正確に再現するために使用)で、合計216個の抵抗を使用しているという。
またUSBインターフェイスにはイタリアのアマネロ・テクノロジーズ(Amanero Technologies)社製Combo384のカスタム品を用いた。スークリスとアマネロ・テクノロジーズに関しては、シャオ氏が中国での販売代理店も手掛けていることもあり、このSagraDAC用に特別なカスタムチューニングを実施してもらっているそうだ。スークリスとの出会いもシャオ氏が理想とする音を実現できるDACがR2R方式であったこと、そしてそれを現実の形に落とし込むとき、スークリスの発表していたモジュールが最適であると考え、アプローチしたのがきっかけだという。
特にこのモジュールが優れているのは、シリコンバレーで製造されているというスークリスオリジナルの誤差0.012%という高精度な抵抗を用いていることだ。R‐2Rラダー抵抗変換方式方式の要となるのが抵抗の精度と基準値を作り出す供給電圧の正確さ、安定度である。電源に関してはXI AUDIOの持つ技術力でカバー。各セクションに対し9つの独立電源を用意し、最適な電力供給を行っているという。
またFPGAを使って抵抗への電源のON/OFFを制御するなど、独自の構成を取り入れ、安定的で精度の高いDA変換を行っているそうだ。なお、入力信号はDSDにも対応しているが、R‐2Rラダー抵抗変換方式自体はPCMと親和性の高いDA変換方式であるので、DSDは352.8kHz/24bitのPCM信号へ変換したのち、DA変換を行うという。