公開日 2022/09/28 06:40
【連載】西田宗千佳のネクストゲート 第10回
Apple Watch Ultraは「アウトドアしない」人が買っても大丈夫
西田宗千佳
今年秋のアップル新製品の中で、一番想像のつかない製品が「Apple Watch Ultra」ではないだろうか。
評価用機材に加え、私物として購入したものも届いたので、それぞれを使ってレポートをお送りする。
高価な製品であり、「アウトドア向け」というイメージの強いものだが、実のところ、アウトドアを意識しなくても「買っていい」製品だったと感じている。
Apple Watchも、形や機能はずいぶんこなれてきたと思う。初期には「スマホの次を担う」という過大な期待もあったが、その後「フィットネス」という大きなニーズを掴み、最近は「異常検知」を担うライフラインとしての役割も注目されるようになった。
今年の新製品「Series 8」では皮膚温センサーが搭載され、女性にとってはさらに有用性が増した。ただ、皮膚温センサーは「温度の変化」を記録していくもので、いわゆる体温計ではない。発熱を感じたとき、体温計のように使うことはできない。
一方「Ultra」は、デザイン含め大きく変わったモデルでもある。
その正体はなにか? 使って感じたのはアウトドア向けというよりも「全機能入りでバッテリー容量と画面が大きなApple Watch」である、ということだ。そうした要素を活かせる1つの側面がアウトドアである、と考えた方がわかりやすい。
Apple Watchの最大の課題は「バッテリー動作時間」だ。watchOS 9からは「低電力モード」が搭載されたので、バッテリー動作時間を伸ばすことは可能になったのだが、意外と影響を受ける機能は多く、どうしても……という時以外使いたくない、という意識がある。
Apple Watchのようにリッチなデバイスが多数載っているスマートウォッチで、動作時間を伸ばすための最高の方法は「搭載するバッテリー容量を増やす」ことだ。時計としてのサイズには限界があり、その中でバッテリー容量を増やすのは難しい。
だとすれば答えは1つ。
「大きくても許容できる用途とデザインを用意する」ことだ。
Apple Watch Ultraのバッテリー動作時間は、通常使用時で最大36時間とされており、他のApple Watchの倍だ。
数日使ってまず感じた利点はこの部分である。24時間、睡眠管理も含めてつけ続けても65%以上バッテリーが残っていた。これは非常に頼もしい。今のApple Watchは急速充電もあるので、このくらい持つなら、日常的にはバッテリー残量をほとんど気にせず使えるだろう。
ワークアウトをしたり音楽を聴いたり、GPSで位置を記録し続けたりすれば、Apple Watchのバッテリー容量は容赦なく減っていく。既存型のApple Watchは、「ちょっと1時間運動する」にはまったく問題ないが、一日自転車で走ったり、旅行中ずっとログを取ったりするには不足していた。
だが、Apple Watch Ultraのバッテリー容量なら、ほとんどのシーンで問題が出ることはないだろう。
「ちょっと待った。アウトドアではなかなか充電できないから、長時間動くようになっているんじゃないの?」
そう、それもその通りなのだ。プライオリティをどちらに置くか、どう見るかは結局、使う人次第なのである。
アウトドア目線でApple Watch Ultraを見るひとにとっては、「電源から離れた場所で過ごしても大丈夫」という点が頼もしい。
だが、そんな「冒険」をする人も、1年365日冒険しているわけではあるまい。日常の方が実際には長いのだ。
アウトドアウォッチとは、厳しい環境の時にだけつけるものではないだろう。厳しい環境でも日常でも一緒に暮らすもの。
そう考えれば、Apple Watch Ultraは「日常の便利さ+冒険への憧れ」で構成されているのがわかるはずだ。
パッケージを開けてみると、Apple Watch Ultraはいかにも「冒険心」をくすぐるような作りになっているのがわかる。自分が雪山や深海に挑むわけでなくとも、「そういう環境」を感じさせるパッケージやマニュアルであることが、高価な製品を買った人には重要なのだ。
Apple Watch Ultraのバンドについても、現状の45mm版Apple Watchと互換性がある。これも、アウトドアと日常の両立には非常に重要だ。
Apple Watch Ultraに付属するバンドは、ヘビーな運動や山登り、ダイビングスーツなどとの組み合わせを考えたもので、「普段使い」には向かない。
しかし、これまでのApple Watchのバンドがそのまま使えるなら、付け替えも併用も簡単だ。
逆に言えば、Apple Watch Ultraの課題は「デザインそのもの」である。
チタンのボディとフラットで大きな画面は、筆者にとってはかなり満足度の高い、好みに近いものだ。だが、ここまで大きく「四角い時計」を許容する人ばかりではないだろう。
同じApple Watchでも、45mm(要は大きい方)は大きすぎる、という人がいる。時計はライフスタイル製品なので、好みが出て当然である。ゴツさだけでなく、オレンジ色のアクションボタンや竜頭(マジッククラウン)の大きさなど、アウトドアでも使いやすいように配慮されたスタイルが自分には合わない、と考える人がいそうだ。
以前アップルは、ボディの素材を18金やセラミックにすることで差別化しようとしていたが、それは単に「高価」なだけで、本当の意味でスタイルを変えたものにはならない。
Apple Watch Ultraは価格の高さもあるが、それよりもデザインが最大の選択基準であるところがとても「時計らしい」と思う。
機能的には、アクションボタンに結局「決まった機能」しか割り当てられず、好きなアプリの起動に使えるわけではないのがちょっと残念だった。陸サーファーならぬ「Ultra普段使い勢」としては、ちょっと選択肢が狭くて残念である。
評価用機材に加え、私物として購入したものも届いたので、それぞれを使ってレポートをお送りする。
高価な製品であり、「アウトドア向け」というイメージの強いものだが、実のところ、アウトドアを意識しなくても「買っていい」製品だったと感じている。
■「全部入りでバッテリー長持ち」がUltraの本質
Apple Watchも、形や機能はずいぶんこなれてきたと思う。初期には「スマホの次を担う」という過大な期待もあったが、その後「フィットネス」という大きなニーズを掴み、最近は「異常検知」を担うライフラインとしての役割も注目されるようになった。
今年の新製品「Series 8」では皮膚温センサーが搭載され、女性にとってはさらに有用性が増した。ただ、皮膚温センサーは「温度の変化」を記録していくもので、いわゆる体温計ではない。発熱を感じたとき、体温計のように使うことはできない。
一方「Ultra」は、デザイン含め大きく変わったモデルでもある。
その正体はなにか? 使って感じたのはアウトドア向けというよりも「全機能入りでバッテリー容量と画面が大きなApple Watch」である、ということだ。そうした要素を活かせる1つの側面がアウトドアである、と考えた方がわかりやすい。
Apple Watchの最大の課題は「バッテリー動作時間」だ。watchOS 9からは「低電力モード」が搭載されたので、バッテリー動作時間を伸ばすことは可能になったのだが、意外と影響を受ける機能は多く、どうしても……という時以外使いたくない、という意識がある。
Apple Watchのようにリッチなデバイスが多数載っているスマートウォッチで、動作時間を伸ばすための最高の方法は「搭載するバッテリー容量を増やす」ことだ。時計としてのサイズには限界があり、その中でバッテリー容量を増やすのは難しい。
だとすれば答えは1つ。
「大きくても許容できる用途とデザインを用意する」ことだ。
Apple Watch Ultraのバッテリー動作時間は、通常使用時で最大36時間とされており、他のApple Watchの倍だ。
数日使ってまず感じた利点はこの部分である。24時間、睡眠管理も含めてつけ続けても65%以上バッテリーが残っていた。これは非常に頼もしい。今のApple Watchは急速充電もあるので、このくらい持つなら、日常的にはバッテリー残量をほとんど気にせず使えるだろう。
ワークアウトをしたり音楽を聴いたり、GPSで位置を記録し続けたりすれば、Apple Watchのバッテリー容量は容赦なく減っていく。既存型のApple Watchは、「ちょっと1時間運動する」にはまったく問題ないが、一日自転車で走ったり、旅行中ずっとログを取ったりするには不足していた。
だが、Apple Watch Ultraのバッテリー容量なら、ほとんどのシーンで問題が出ることはないだろう。
■日常+冒険への憧れを満たせるのが「Ultra」
「ちょっと待った。アウトドアではなかなか充電できないから、長時間動くようになっているんじゃないの?」
そう、それもその通りなのだ。プライオリティをどちらに置くか、どう見るかは結局、使う人次第なのである。
アウトドア目線でApple Watch Ultraを見るひとにとっては、「電源から離れた場所で過ごしても大丈夫」という点が頼もしい。
だが、そんな「冒険」をする人も、1年365日冒険しているわけではあるまい。日常の方が実際には長いのだ。
アウトドアウォッチとは、厳しい環境の時にだけつけるものではないだろう。厳しい環境でも日常でも一緒に暮らすもの。
そう考えれば、Apple Watch Ultraは「日常の便利さ+冒険への憧れ」で構成されているのがわかるはずだ。
パッケージを開けてみると、Apple Watch Ultraはいかにも「冒険心」をくすぐるような作りになっているのがわかる。自分が雪山や深海に挑むわけでなくとも、「そういう環境」を感じさせるパッケージやマニュアルであることが、高価な製品を買った人には重要なのだ。
Apple Watch Ultraのバンドについても、現状の45mm版Apple Watchと互換性がある。これも、アウトドアと日常の両立には非常に重要だ。
Apple Watch Ultraに付属するバンドは、ヘビーな運動や山登り、ダイビングスーツなどとの組み合わせを考えたもので、「普段使い」には向かない。
しかし、これまでのApple Watchのバンドがそのまま使えるなら、付け替えも併用も簡単だ。
■選択基準は「デザインそのもの」にある
逆に言えば、Apple Watch Ultraの課題は「デザインそのもの」である。
チタンのボディとフラットで大きな画面は、筆者にとってはかなり満足度の高い、好みに近いものだ。だが、ここまで大きく「四角い時計」を許容する人ばかりではないだろう。
同じApple Watchでも、45mm(要は大きい方)は大きすぎる、という人がいる。時計はライフスタイル製品なので、好みが出て当然である。ゴツさだけでなく、オレンジ色のアクションボタンや竜頭(マジッククラウン)の大きさなど、アウトドアでも使いやすいように配慮されたスタイルが自分には合わない、と考える人がいそうだ。
以前アップルは、ボディの素材を18金やセラミックにすることで差別化しようとしていたが、それは単に「高価」なだけで、本当の意味でスタイルを変えたものにはならない。
Apple Watch Ultraは価格の高さもあるが、それよりもデザインが最大の選択基準であるところがとても「時計らしい」と思う。
機能的には、アクションボタンに結局「決まった機能」しか割り当てられず、好きなアプリの起動に使えるわけではないのがちょっと残念だった。陸サーファーならぬ「Ultra普段使い勢」としては、ちょっと選択肢が狭くて残念である。
- トピック
- Gadget Gate