公開日 2023/01/31 06:30
【特別企画】“木のヘッドホン”初のワイヤレス対応機
妥協なく最高峰を目指した、まさに記念碑たるモデル。オーディオテクニカ「ATH-WB2022」レビュー
岩井 喬
2022年で創業60周年を迎えたオーディオテクニカ。その長い歴史の中でも大きな柱に成長しているものの一つが、ヘッドホン分野だ。特に1996年に誕生したハウジングに天然木を用いた “木のヘッドホン” 第一弾「ATH-W10VTG」の存在は特別な価値観の構築、いうなれば、より高級感のある提案としてファンの心を掴んだのである。木の持つ温もりや響きの深さもまた “木のヘッドホン” ならではのサウンド性であり、樹脂製ハウジングの製品では出せない音色に感銘を受けたリスナーも多かったであろう。
それから25年以上に渡り、オーディオテクニカでは絶えることなく “木のヘッドホン” のラインナップを継承してきた。数多くの製品を揃えるオーディオテクニカのヘッドホンの中でも人気の分野であるとともに、他社を含め選択肢が広がった現在においてもウッドハウジングを採用したヘッドホンの中で同社の “木のヘッドホン” はいわば別格。まさに確固たる地位を築いている。
そして60周年を祝う節目に登場したのが、“木のヘッドホン” として初のワイヤレスモデル「ATH-WB2022」だ。本稿では、その特徴とサウンドに触れていく。
ATH-WB2022は、記念モデルの名に恥じぬ『ワイヤレス最高峰の音を目指す』というテーマを掲げて開発された限定製品であり、製品寿命が短いワイヤレス分野であっても長年使ってもらえるよう、工夫が凝らされた設計が特徴のハイエンドワイヤレスヘッドホンでもある。
まず “木のヘッドホン” ならではといえるハウジングは、ポータブルの “木のヘッドホン” として人気の高い「ATH-WP900」のウッドハウジング製作で協業した、国内屈指の技術力を持つギターメーカー、フジゲンと再びタッグを組んで生み出された。
ドライバーユニット側の基材ともいえる部分にマホガニー材、その上に薄いウォルナット材、そして多くの人の目に触れる外側に杢目が美しい天然のフレイムメイプル材を組み合わせた3層構造ハウジングを採用。異なる素材の組み合わせによる優れた音響特性、制振性も得られるが、なにより加工精度の高さ、仕上げの品位も大事とされる難しい部位となる。この課題をフジゲンの手練れの職人たちが加工から塗装までの工程を手掛け、工芸品ともいえるクオリティのハウジングを手作業で仕上げてくれたという。
そしてヘッドホンの心臓部となるドライバーユニットは新設計となるDLCコーティングを施した45mm口径のHDドライバーである。純鉄一体型ヨークを用いた高性能な磁気回路のほか、7N-OFCボイスコイルなど、純度や性能の高さにこだわったパーツを組み合わせた、妥協のない高品位ドライバーとして完成させた。
これに加え、ワイヤレスヘッドホンならではといえる内蔵DACおよびアンプにおいても、世界初という完全バランス音声出力システムを構築。左右で独立したDACチップとオペアンプ、バッテリーを採用することで、左右間のクロストークノイズを排除し、チャンネルセパレーションの優れたサウンドを実現したという。まずDACチップにはESS製の「ES9038Q2M」を左右1基ずつ採用。オペアンプには日清紡マイクロデバイス製“MUSESシリーズ”のフラッグシップチップ「MUSES05」を取り入れている。
さらにワイヤレスでも有線接続でも96kHz/24bitのハイレゾ対応を果たしている点も特筆すべきだろう。ワイヤレスではSBC、AACコーデックに加え、LDACに対応。充電用を兼ねたUSB-C端子からUSBオーディオ接続も可能であり、標準ドライバーによる96kHz/24bitでのデジタル接続再生を実現している。付属品としてUSB-C→USB-C、そしてUSB-A→USB-C、2本のUSBケーブルが用意されているが、いずれも信号線には6N-OFC導体を取り入れているので、有線接続でもクオリティの高いサウンド再生が可能だ。
高級ヘッドホンであるからこそ、装着性やモノとしての品位へのこだわりもおろそかにはできない。手の込んだウッドハウジングだけでも非常に高品位ではあるが、細部に渡って配慮されている各部の機構も妥協がない。まずヘッドバンドやイヤーパッドにはイタリア製アルカンターラを採用。そしてアーム機構も支点を最適化した独自のジョイント構造を新規開発し、頭部への自然な密着性、適度な側圧コントロール、可動部の鳴きを抑えるなど、快適さと見た目にもこだわったつくりを実現している。
ゼロハリバートンとのコラボレーションで生まれたヘッドホン収納ケースや、アルカンターラによるポーチなど、付属品にも上質さが漂う。そしてワイヤレスモデルとして重要な機能面においてもトレンドをカバー。2台のワイヤレス機器に同時接続できるマルチポイント対応、スマートフォンでのゲームプレイ時や動画再生時の遅延を抑える低遅延モード、自社製Φ10mmコンデンサーマイクを取り入れた明瞭度の高い通話性能、専用アプリケーション「Connect」による100段階の音量調整/カスタムイコライザーなど、実に多彩な機能性が盛り込まれており、使い勝手も良い。
それから25年以上に渡り、オーディオテクニカでは絶えることなく “木のヘッドホン” のラインナップを継承してきた。数多くの製品を揃えるオーディオテクニカのヘッドホンの中でも人気の分野であるとともに、他社を含め選択肢が広がった現在においてもウッドハウジングを採用したヘッドホンの中で同社の “木のヘッドホン” はいわば別格。まさに確固たる地位を築いている。
そして60周年を祝う節目に登場したのが、“木のヘッドホン” として初のワイヤレスモデル「ATH-WB2022」だ。本稿では、その特徴とサウンドに触れていく。
もはや工芸品と呼べるハウジング、そして見逃せないヘッドホンとしての性能の高さ
ATH-WB2022は、記念モデルの名に恥じぬ『ワイヤレス最高峰の音を目指す』というテーマを掲げて開発された限定製品であり、製品寿命が短いワイヤレス分野であっても長年使ってもらえるよう、工夫が凝らされた設計が特徴のハイエンドワイヤレスヘッドホンでもある。
まず “木のヘッドホン” ならではといえるハウジングは、ポータブルの “木のヘッドホン” として人気の高い「ATH-WP900」のウッドハウジング製作で協業した、国内屈指の技術力を持つギターメーカー、フジゲンと再びタッグを組んで生み出された。
ドライバーユニット側の基材ともいえる部分にマホガニー材、その上に薄いウォルナット材、そして多くの人の目に触れる外側に杢目が美しい天然のフレイムメイプル材を組み合わせた3層構造ハウジングを採用。異なる素材の組み合わせによる優れた音響特性、制振性も得られるが、なにより加工精度の高さ、仕上げの品位も大事とされる難しい部位となる。この課題をフジゲンの手練れの職人たちが加工から塗装までの工程を手掛け、工芸品ともいえるクオリティのハウジングを手作業で仕上げてくれたという。
そしてヘッドホンの心臓部となるドライバーユニットは新設計となるDLCコーティングを施した45mm口径のHDドライバーである。純鉄一体型ヨークを用いた高性能な磁気回路のほか、7N-OFCボイスコイルなど、純度や性能の高さにこだわったパーツを組み合わせた、妥協のない高品位ドライバーとして完成させた。
これに加え、ワイヤレスヘッドホンならではといえる内蔵DACおよびアンプにおいても、世界初という完全バランス音声出力システムを構築。左右で独立したDACチップとオペアンプ、バッテリーを採用することで、左右間のクロストークノイズを排除し、チャンネルセパレーションの優れたサウンドを実現したという。まずDACチップにはESS製の「ES9038Q2M」を左右1基ずつ採用。オペアンプには日清紡マイクロデバイス製“MUSESシリーズ”のフラッグシップチップ「MUSES05」を取り入れている。
さらにワイヤレスでも有線接続でも96kHz/24bitのハイレゾ対応を果たしている点も特筆すべきだろう。ワイヤレスではSBC、AACコーデックに加え、LDACに対応。充電用を兼ねたUSB-C端子からUSBオーディオ接続も可能であり、標準ドライバーによる96kHz/24bitでのデジタル接続再生を実現している。付属品としてUSB-C→USB-C、そしてUSB-A→USB-C、2本のUSBケーブルが用意されているが、いずれも信号線には6N-OFC導体を取り入れているので、有線接続でもクオリティの高いサウンド再生が可能だ。
高級ヘッドホンであるからこそ、装着性やモノとしての品位へのこだわりもおろそかにはできない。手の込んだウッドハウジングだけでも非常に高品位ではあるが、細部に渡って配慮されている各部の機構も妥協がない。まずヘッドバンドやイヤーパッドにはイタリア製アルカンターラを採用。そしてアーム機構も支点を最適化した独自のジョイント構造を新規開発し、頭部への自然な密着性、適度な側圧コントロール、可動部の鳴きを抑えるなど、快適さと見た目にもこだわったつくりを実現している。
ゼロハリバートンとのコラボレーションで生まれたヘッドホン収納ケースや、アルカンターラによるポーチなど、付属品にも上質さが漂う。そしてワイヤレスモデルとして重要な機能面においてもトレンドをカバー。2台のワイヤレス機器に同時接続できるマルチポイント対応、スマートフォンでのゲームプレイ時や動画再生時の遅延を抑える低遅延モード、自社製Φ10mmコンデンサーマイクを取り入れた明瞭度の高い通話性能、専用アプリケーション「Connect」による100段階の音量調整/カスタムイコライザーなど、実に多彩な機能性が盛り込まれており、使い勝手も良い。
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