公開日 2023/03/06 06:30
【特別企画】Kagura2で培われた技術をベースにRCAプラグを新規開発
新次元の“純銀伝送”。オーディオ・ノート製RCAケーブル「Theme 41RR」開発の道のりを追う
林 正儀
日本を代表するハイエンド・オーディオブランドのひとつであるオーディオ・ノート。同社が新型RCAプラグ「AN-Pn2」を開発したことを受け、「Theme(テーマ)」の名を持つRCAケーブルが新たに登場した。そのトップモデルとなる「Theme 41RR」の開発背景、そしてそのサウンドを探ってみよう。
オーディオ・ノートのスピーカーケーブルは、これまで「Operia(オペリア)」というオペラから名付けられたシリーズがあったが、今回のRCAインターコネクトケーブルは“旋律をうまく奏でよう”という意図のもと「Theme(テーマ)」と命名された。グレードによって「41RR」と「31RR」が用意されており、その違いは純銀線のケーブル部分にある。RCAプラグについてはともに新型の「AN-Pn2」が採用されている。
オーディオ・ノートの試聴室に伺うと、完成品の「Theme 41RR」と従来モデルの「Ls-41」がそれぞれ1.0mペアずつ用意され、フォノイコ/プリ間でシビアに比較試聴できるようになっていた。
まずはケーブルに装着された新型プラグを紹介しよう。その試作のプロセスを見せてもらい、音の狙いを公開してくれた。
「AN-Pn2」では、スリーブ(マイナス)側の肉厚を増し、よりしっかりとしたコンタクトを実現。さらに15ミクロンの肉厚銀メッキ+パラジウム0.1ミクロンという黄金比で製品化したわけだが、この開発の元になったのが同社の最高峰モノラルパワーアンプ「Kagura2」での真空管ソケットや、スピーカーケーブルで採用したオリジナルのYラグ/バナナ端子で培ったノウハウだ。
試作モデルも見せてもらった。下記写真一番左の(1)が前モデル、(2)(3)が試作モデルとなり、最終的に一番右の(4)が最新プラグとして製品化された。
前作の(1)はハウジングもコンタクト系も真鍮製だ。これに5ミクロンの銀メッキをかけていた。(2)では中に樹脂のかしめが入っている、強度的には強いが音がつまってしまったそうだ。これは不採用である。そこで(3)ではクランプのない従来式に戻し、真鍮ボディのままケースを大きくした形だ。これは持った感触も重いし、鈍重な音となった。やり過ぎである。
ではどうしたか。(4)では中は真鍮だが外を大型のアルミにして軽量化。有機的で肌ざわりのよいタッチが得られたそうだ、いい感じの柔らかさやふくよかさが出た。アルミの採用で色の自由度が増し、洗練されたイメージになったのも収穫だ。チューニングの幅が広がり、選択肢が増えたのはモノづくり冥利だろう。
さらにより開放的な音色を得るべく、プラグ内のモールド材の仕様を変更。いちばんのハイライトは絶縁素材だろう。テフロン、プラスチック系のPEEK(ピーク)、布ベークの3タイプで試作し、しなやかさと腰の強さを両立したテフロンを採用することとなった。
こういってしまえば簡単だが布ベークはしなやかさに欠ける反面、ざっくりした良さがある。PEEKはクリアだが音に硬さが出る感じだ。手間隙をかけ、トータルバランスで選んだのがテフロンだったという。
ケーブルについて補足しておきたい。線径の異なる2種類の純銀母線を絶妙なバランスで配合した4芯シールド構造だ。それぞれに絹糸を巻きつけその上に絶縁ジャケットを被せた構造。天然素材で覆うことにより、音の濁りを低減し、さらに不要振動も抑制して高解像度で力強くクリアな音を実現している。
これが基本で、上位の「41RR」は総線数152本のスターカッド構造だ。弟モデルの「31RR」も構造は同じだが、総線数を96本に抑えスケールをやや落とした仕様である。
同社のフルシステムのフォノイコ-プリアンプ間で、新製品のRCAインターコネクトケーブルTheme 41RRと従来モデルのLs-41を聴き比べた。息を呑む。思わず身を乗り出したというのが私の正直な反応だ。プラグの違いだけでここまで表現力や演奏に差が出るものなのか……。オーディオ的には旧作だって十分にハイクオリティなはずだが。一旦41RRを聴いてしまうと、さらに高い次元での音の景観や本質的な音楽のたたずまいが眼前にあらわれるのだ。
ヴィーナスレコードの新作LP、タチアナ・エヴァ・マリーをヴォーカルに迎えたジョヴァンニ・ミラバッシの『サウンド・オブ・ラブ』では、平面的だったピアノトリオの演奏力が格段に高まる。ダイナミックな反応の速さと熱量感は生演奏さながらだ。スネア、シンバルなどの分解がよく情報量が充実。空の高い方へどこまでも音の粒子が拡散していくようである。女性ヴォーカルは透明度がいっそう深くかつ繊細。そして何よりも柔らかな感触が素晴らしい。
絶品なのがチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲だ。パールマンらしい自由奔放にして何とも官能的で、神秘的な美しさに心ひかれてしまう。これぞ一期一会、名盤の実在感だろう。音溝から音楽の全てをすくいとり伝送するようで、ヴァイオリンの気持ちがリアルに伝わった。
このほかハチャトゥリアン『仮面舞踏会』、カバレフスキー『道化師』など、スケールや音響効果の大きな楽曲も等身大の臨場感で再現されるのだ。ブラスや低弦の豊かなハーモニーが素晴らしい。パラメーターを妥協なく追求して生まれた超のつく会心作だ。
ケーブルにおけるプラグの進化は大きい。これによってケーブルの潜在能力がさらに発揮されたともいえる。新次元の純銀伝送をぜひ体験して欲しいものだ。
本記事は『季刊・analog 78号』からの転載です。
新型プラグ「AN-Pn2」を搭載するRCAケーブル2モデルが登場
オーディオ・ノートのスピーカーケーブルは、これまで「Operia(オペリア)」というオペラから名付けられたシリーズがあったが、今回のRCAインターコネクトケーブルは“旋律をうまく奏でよう”という意図のもと「Theme(テーマ)」と命名された。グレードによって「41RR」と「31RR」が用意されており、その違いは純銀線のケーブル部分にある。RCAプラグについてはともに新型の「AN-Pn2」が採用されている。
オーディオ・ノートの試聴室に伺うと、完成品の「Theme 41RR」と従来モデルの「Ls-41」がそれぞれ1.0mペアずつ用意され、フォノイコ/プリ間でシビアに比較試聴できるようになっていた。
まずはケーブルに装着された新型プラグを紹介しよう。その試作のプロセスを見せてもらい、音の狙いを公開してくれた。
「AN-Pn2」では、スリーブ(マイナス)側の肉厚を増し、よりしっかりとしたコンタクトを実現。さらに15ミクロンの肉厚銀メッキ+パラジウム0.1ミクロンという黄金比で製品化したわけだが、この開発の元になったのが同社の最高峰モノラルパワーアンプ「Kagura2」での真空管ソケットや、スピーカーケーブルで採用したオリジナルのYラグ/バナナ端子で培ったノウハウだ。
試作モデルも見せてもらった。下記写真一番左の(1)が前モデル、(2)(3)が試作モデルとなり、最終的に一番右の(4)が最新プラグとして製品化された。
前作の(1)はハウジングもコンタクト系も真鍮製だ。これに5ミクロンの銀メッキをかけていた。(2)では中に樹脂のかしめが入っている、強度的には強いが音がつまってしまったそうだ。これは不採用である。そこで(3)ではクランプのない従来式に戻し、真鍮ボディのままケースを大きくした形だ。これは持った感触も重いし、鈍重な音となった。やり過ぎである。
ではどうしたか。(4)では中は真鍮だが外を大型のアルミにして軽量化。有機的で肌ざわりのよいタッチが得られたそうだ、いい感じの柔らかさやふくよかさが出た。アルミの採用で色の自由度が増し、洗練されたイメージになったのも収穫だ。チューニングの幅が広がり、選択肢が増えたのはモノづくり冥利だろう。
プラグ内のモールド材も再検討。ケーブル導体には純銀を採用している
さらにより開放的な音色を得るべく、プラグ内のモールド材の仕様を変更。いちばんのハイライトは絶縁素材だろう。テフロン、プラスチック系のPEEK(ピーク)、布ベークの3タイプで試作し、しなやかさと腰の強さを両立したテフロンを採用することとなった。
こういってしまえば簡単だが布ベークはしなやかさに欠ける反面、ざっくりした良さがある。PEEKはクリアだが音に硬さが出る感じだ。手間隙をかけ、トータルバランスで選んだのがテフロンだったという。
ケーブルについて補足しておきたい。線径の異なる2種類の純銀母線を絶妙なバランスで配合した4芯シールド構造だ。それぞれに絹糸を巻きつけその上に絶縁ジャケットを被せた構造。天然素材で覆うことにより、音の濁りを低減し、さらに不要振動も抑制して高解像度で力強くクリアな音を実現している。
これが基本で、上位の「41RR」は総線数152本のスターカッド構造だ。弟モデルの「31RR」も構造は同じだが、総線数を96本に抑えスケールをやや落とした仕様である。
新型プラグの効果に驚愕、スケールの大きな楽曲も等身大の臨場感で再現
同社のフルシステムのフォノイコ-プリアンプ間で、新製品のRCAインターコネクトケーブルTheme 41RRと従来モデルのLs-41を聴き比べた。息を呑む。思わず身を乗り出したというのが私の正直な反応だ。プラグの違いだけでここまで表現力や演奏に差が出るものなのか……。オーディオ的には旧作だって十分にハイクオリティなはずだが。一旦41RRを聴いてしまうと、さらに高い次元での音の景観や本質的な音楽のたたずまいが眼前にあらわれるのだ。
ヴィーナスレコードの新作LP、タチアナ・エヴァ・マリーをヴォーカルに迎えたジョヴァンニ・ミラバッシの『サウンド・オブ・ラブ』では、平面的だったピアノトリオの演奏力が格段に高まる。ダイナミックな反応の速さと熱量感は生演奏さながらだ。スネア、シンバルなどの分解がよく情報量が充実。空の高い方へどこまでも音の粒子が拡散していくようである。女性ヴォーカルは透明度がいっそう深くかつ繊細。そして何よりも柔らかな感触が素晴らしい。
絶品なのがチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲だ。パールマンらしい自由奔放にして何とも官能的で、神秘的な美しさに心ひかれてしまう。これぞ一期一会、名盤の実在感だろう。音溝から音楽の全てをすくいとり伝送するようで、ヴァイオリンの気持ちがリアルに伝わった。
このほかハチャトゥリアン『仮面舞踏会』、カバレフスキー『道化師』など、スケールや音響効果の大きな楽曲も等身大の臨場感で再現されるのだ。ブラスや低弦の豊かなハーモニーが素晴らしい。パラメーターを妥協なく追求して生まれた超のつく会心作だ。
ケーブルにおけるプラグの進化は大きい。これによってケーブルの潜在能力がさらに発揮されたともいえる。新次元の純銀伝送をぜひ体験して欲しいものだ。
本記事は『季刊・analog 78号』からの転載です。
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