公開日 2023/03/28 06:30
BMWのデモカーとモレルのプラグ&プレイスピーカーでテスト
DAPでどこまで音が変わる?ソニーのウォークマン3機種でカーオーディオ聴き比べ!
峯岸良行
ソニーから、エントリークラスのウォークマン「NW-A300」と、中級グレードの「NW-ZX707」がこの1月に発売となった。ハイレゾ音源のストレージであり、送り出しのトランスポートとなるDAPは、カーオーディオの世界でも音質に関わる重要な要素となっている。今回は、「NW-A306」と、「NW-ZX707」、「NW-WM1AM2」を用意し、カーオーディオにおける “USB出力品質” による比較試聴を行った。
試聴に使用したデモカーBMW「225XE」は、morelのBMW専用のプラグ&プレイスピーカーによって、欧州車の内装の雰囲気や安全性を損なわずにスピーカーの性能をグレードアップしている。ちなみに純正のカーオーディオシステムから交換するだけというプラグ&プレイスピーカーは、カーオーディオを始めやすいお手軽なプランで、BMWやメルセデス・ベンツなどメジャーな車種には専用のモデルが用意されている。
フロントドアに2ウェイの「IR-BMW42」、前席のシート下にサブウーファー「IP-BMWSUB82」2基、後ろドアにコアキシャルスピーカー「IR-BMW42INT」を搭載した3ウェイ8スピーカーシステム。さらにDSP調整の追い込みにより、今回のレビューのような分析的な試聴にも対応できる解像度の高いシステムとなっている。
音楽信号の流れは、DAP → オーディオテクニカのデジタルトランスポート「AT-HRD5」をUSBケーブルで接続 → AT-HRD5でUSBデジタルからDD変換を行いデジタルケーブルでARC AUDIOのDSP「PS8-PRO&PSC」に接続して帯域分割とDA変換を行い、パワーアンプ「ARC 1000」に入力するという構成である。
リファレンス音源には、映画『竜とそばかすの姫』のサウンドトラック『Belle (Original Motion Picture Soundtrack)』から、1曲目の「U (English Version)」を使用した。昨年のまいど大阪「秋の車音祭」の課題曲でもある。
ドラムライン(マーチング・ドラム)の力強いビートで始まる、イントロにふさわしい雰囲気の楽曲。ヴォーカルのミックス処理は短めのリバーブと子音をクリスピーに聴かせる透明感が印象的。サビの前のラジオボイスの箇所はパンニングオートメーションにより、左右に広がった歌の定位が徐々に狭まってサビ前のブレイクでセンターに定位。そのような変化を感じ取れることが望ましい。
■「NW-A306」:やや硬質な音調で、ドラムの立ち上がりも良い
手のひらに収まるほどの小型サイズだが、総削り出しの高剛性アルミシャーシを採用しており、高密度、低インピーダンス、高剛性を実現しているという。
一聴して感じたことはS/Nが高く、透明感のある音だ。やや硬質な音調で、ハイエンドモデルのNW-WM1AM2と何か共通する質感を感じる。ボーカルの強弱や、それに対するダイナミクス系処理のサチュレーション感、リバーブやディレイなどの空間処理の種類やその効果もきちんと引き出されている。
楽器類の音色もやはり硬質で透明感のある音色で、スネアドラム等の立ち上がりが良い印象だ。NW-A306から送出することにより総じて明るく硬質な音調になり、手軽にハイエンドオーディオシステムの雰囲気を出してくれる。
■「NW-ZX707」:透明感高く穏やかで聴きやすいサウンド
NW-A306よりひとまわり大きいサイズ。基板レイアウトの最適化や、電源、クロックの強化によるS/N感の向上など、エントリー機とは一味違う音質へのこだわりが特徴。
透明感のある音だが、高域は硬さがなくやや穏やかで聴きやすい。大きすぎず、小さすぎずの適正な音量ではフラットに聴こえる。楽器類の音色も色つけ感が少なく感じ、ディテールを聴き取るためにはむしろこのくらい硬さがないほうが音量をあげることができて好みだ。また音場感はよりワイドに感じる。
NW-A306と比較して聴感上の音量が大きく感じた。念のため、1kHzサイン波を用いてスマートフォンアプリによる騒音計での音圧を確認したところ、NW-A306と測定上の数値は同じであった。
■「NW-WM1AM2」:クリスピーでブライト、クリスタルガラスのような質感
NW-WM1AM2は、ソニーのウォークマンのセカンドトップモデルで、最上位グレード「NW-WM1ZM2」(通称:金DAP)に次ぐ製品。サイズや持ち上げたときの量感もこれまでの2機種よりぐっと大きくなる。
クリスピーでブライトな音調になり、硬質な質感がハイエンドオーディオシステムの雰囲気を醸す。ボーカルの細かな表現をより大きく感じることができ、楽器類の音色はより硬質に感じ、まるで全てが透明感のあるクリスタルガラスのような質感。ドラムやボーカルの音の立ち上がりの瞬間のアタック音はより大きく聴こえた。
これはマスタリングで高品質クロックやデジタルケーブルを使用した際に聴いた経験のある高域の質感で、内部配線など細やかな技術が、きちんと音質に反映されていると感じられた。
◇
純正カーオーディオやハイエンドカーオーディオはスマホから音楽を再生することができるが、スマホはカメラとしての日常の使用などでストレージ容量も逼迫しがちだ。また音楽を聴くためには必ずしも便利であるとは限らない。
音楽再生を快適に楽しみたいのであれば、音楽再生専用機を1台用意することをおすすめする。特にウォークマンは、ヘッドホン再生だけではなく、カーオーディオにおいても手軽にシステム全体の品質をグレードアップすることが可能だ。
今回の試聴で印象的だったのは、エントリーモデルでもミドルレンジでも車載用DAPとしてのウォークマン導入には、音質面で大きな効果があることを確認できたことだ。どのモデルもカーオーディオ用として安心して推薦できるので、サイズなどの設置環境や、予算や好みに応じて選択するのが良いだろう。
峯岸良行・プロフィール
prime sound studio form所属のマスタリング・ミックスエンジニア。名古屋芸術大学サウンドメディア・コンポジションコース非常勤講師。作曲家としてLittle Glee Monsterや桜坂46などのアイドルグループの作品に携わるほか、トヨタ、三菱、JT、任天堂などの広告音楽も手がけ、イマーシブオーディオにもいち早く取り組んできた。「ヨーロピアンカーオーディオコンテスト」ほか、全国のカーオーディオコンテストの審査員も務めている。
BMW「225XE」をデモカーに使用。モレルの “プラグ&プレイスピーカー” でテスト
試聴に使用したデモカーBMW「225XE」は、morelのBMW専用のプラグ&プレイスピーカーによって、欧州車の内装の雰囲気や安全性を損なわずにスピーカーの性能をグレードアップしている。ちなみに純正のカーオーディオシステムから交換するだけというプラグ&プレイスピーカーは、カーオーディオを始めやすいお手軽なプランで、BMWやメルセデス・ベンツなどメジャーな車種には専用のモデルが用意されている。
フロントドアに2ウェイの「IR-BMW42」、前席のシート下にサブウーファー「IP-BMWSUB82」2基、後ろドアにコアキシャルスピーカー「IR-BMW42INT」を搭載した3ウェイ8スピーカーシステム。さらにDSP調整の追い込みにより、今回のレビューのような分析的な試聴にも対応できる解像度の高いシステムとなっている。
音楽信号の流れは、DAP → オーディオテクニカのデジタルトランスポート「AT-HRD5」をUSBケーブルで接続 → AT-HRD5でUSBデジタルからDD変換を行いデジタルケーブルでARC AUDIOのDSP「PS8-PRO&PSC」に接続して帯域分割とDA変換を行い、パワーアンプ「ARC 1000」に入力するという構成である。
「秋まいど」の課題曲で3モデルを聴き比べ
リファレンス音源には、映画『竜とそばかすの姫』のサウンドトラック『Belle (Original Motion Picture Soundtrack)』から、1曲目の「U (English Version)」を使用した。昨年のまいど大阪「秋の車音祭」の課題曲でもある。
ドラムライン(マーチング・ドラム)の力強いビートで始まる、イントロにふさわしい雰囲気の楽曲。ヴォーカルのミックス処理は短めのリバーブと子音をクリスピーに聴かせる透明感が印象的。サビの前のラジオボイスの箇所はパンニングオートメーションにより、左右に広がった歌の定位が徐々に狭まってサビ前のブレイクでセンターに定位。そのような変化を感じ取れることが望ましい。
■「NW-A306」:やや硬質な音調で、ドラムの立ち上がりも良い
手のひらに収まるほどの小型サイズだが、総削り出しの高剛性アルミシャーシを採用しており、高密度、低インピーダンス、高剛性を実現しているという。
一聴して感じたことはS/Nが高く、透明感のある音だ。やや硬質な音調で、ハイエンドモデルのNW-WM1AM2と何か共通する質感を感じる。ボーカルの強弱や、それに対するダイナミクス系処理のサチュレーション感、リバーブやディレイなどの空間処理の種類やその効果もきちんと引き出されている。
楽器類の音色もやはり硬質で透明感のある音色で、スネアドラム等の立ち上がりが良い印象だ。NW-A306から送出することにより総じて明るく硬質な音調になり、手軽にハイエンドオーディオシステムの雰囲気を出してくれる。
■「NW-ZX707」:透明感高く穏やかで聴きやすいサウンド
NW-A306よりひとまわり大きいサイズ。基板レイアウトの最適化や、電源、クロックの強化によるS/N感の向上など、エントリー機とは一味違う音質へのこだわりが特徴。
透明感のある音だが、高域は硬さがなくやや穏やかで聴きやすい。大きすぎず、小さすぎずの適正な音量ではフラットに聴こえる。楽器類の音色も色つけ感が少なく感じ、ディテールを聴き取るためにはむしろこのくらい硬さがないほうが音量をあげることができて好みだ。また音場感はよりワイドに感じる。
NW-A306と比較して聴感上の音量が大きく感じた。念のため、1kHzサイン波を用いてスマートフォンアプリによる騒音計での音圧を確認したところ、NW-A306と測定上の数値は同じであった。
■「NW-WM1AM2」:クリスピーでブライト、クリスタルガラスのような質感
NW-WM1AM2は、ソニーのウォークマンのセカンドトップモデルで、最上位グレード「NW-WM1ZM2」(通称:金DAP)に次ぐ製品。サイズや持ち上げたときの量感もこれまでの2機種よりぐっと大きくなる。
クリスピーでブライトな音調になり、硬質な質感がハイエンドオーディオシステムの雰囲気を醸す。ボーカルの細かな表現をより大きく感じることができ、楽器類の音色はより硬質に感じ、まるで全てが透明感のあるクリスタルガラスのような質感。ドラムやボーカルの音の立ち上がりの瞬間のアタック音はより大きく聴こえた。
これはマスタリングで高品質クロックやデジタルケーブルを使用した際に聴いた経験のある高域の質感で、内部配線など細やかな技術が、きちんと音質に反映されていると感じられた。
純正カーオーディオやハイエンドカーオーディオはスマホから音楽を再生することができるが、スマホはカメラとしての日常の使用などでストレージ容量も逼迫しがちだ。また音楽を聴くためには必ずしも便利であるとは限らない。
音楽再生を快適に楽しみたいのであれば、音楽再生専用機を1台用意することをおすすめする。特にウォークマンは、ヘッドホン再生だけではなく、カーオーディオにおいても手軽にシステム全体の品質をグレードアップすることが可能だ。
今回の試聴で印象的だったのは、エントリーモデルでもミドルレンジでも車載用DAPとしてのウォークマン導入には、音質面で大きな効果があることを確認できたことだ。どのモデルもカーオーディオ用として安心して推薦できるので、サイズなどの設置環境や、予算や好みに応じて選択するのが良いだろう。
峯岸良行・プロフィール
prime sound studio form所属のマスタリング・ミックスエンジニア。名古屋芸術大学サウンドメディア・コンポジションコース非常勤講師。作曲家としてLittle Glee Monsterや桜坂46などのアイドルグループの作品に携わるほか、トヨタ、三菱、JT、任天堂などの広告音楽も手がけ、イマーシブオーディオにもいち早く取り組んできた。「ヨーロピアンカーオーディオコンテスト」ほか、全国のカーオーディオコンテストの審査員も務めている。