公開日 2023/07/19 06:45
最近ではAmazon MusicにApple Musicなど、一般に普及する音楽配信サービスでもハイレゾ再生が手軽に楽しめるようになった。5Gの高速・大容量通信サービスに常時つながるソニーのXperiaはハイレゾ音楽配信と最も相性が良いスマホの代表格だ。6月に発売された最新モデル「Xperia 1 V」をリファレンスにして、スマホで楽しむハイレゾ音楽配信にスポットを当ててみたい。
ソニーのXperiaは2014年に発売した「Xperia Z2」から初めてUSBデジタル出力によるハイレゾ再生に対応した。以来、アナログヘッドホン端子によるハイレゾ再生や、ソニーの高音質BluetoothオーディオコーデックであるLDACによるハイレゾワイヤレス再生にも楽しみ方を広げている。
筆者が知る限り、ソニーのXperiaシリーズほどヘッドホン・イヤホンによる再生と、内蔵スピーカーによる再生の両方で高音質にこだわり続けているスマホは他にない。オーディオ担当のエンジニアを訪ねて、音質まわりの技術やこだわりについて会話のキャッチボールが小気味よく交わせる相手もソニーのXperiaチームぐらいだ。
最新モデルのXperia 1 Vによるハイレゾ再生は大きく分けて下記3通りの方法がある。
(1)3.5ミリヘッドホン端子にハイレゾ対応の有線ヘッドホン/イヤホンをつなぐ
(2)LDAC、またはaptX Adaptiveを中心とするSnapdragon Soundに対応するワイヤレスオーディオ機器をペアリングして聴く
(3)USBデジタル出力にハイレゾ対応のDACなどをつなぐ
Xperiaの場合、基本的には音楽配信サービスなどフォーマットに準じた音質でオーディオを出力する。ソニーの「NW-A300」シリーズなど、Androidを搭載するストリーミングウォークマンの場合は、本体のハイレゾストリーミング設定をONにした場合、アラート音なども含めてすべてのオーディオ出力が192kHz/32bitになるところに違いがある。
最近では多くのAndroid OSを搭載するスマホがハイレゾ再生に対応しているが、有線のハイレゾ対応ヘッドホン・イヤホンを本体に直接さして、手軽にハイレゾが聴けるスマホは少なくなった。例えばiPhone 14の場合、Apple Musicのハイレゾロスレス音源をハイレゾで楽しむ場合は、Lightning端子を経由してUSB-DACアンプなどを接続する必要がある。
今回はXperia 1 VとAmazon Musicの楽曲をリファレンスにして、様々なハイレゾ対応のオーディオ機器による組み合わせを試した。Xperiaならではの高音質化機能も試してみたい。
最初は左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンでハイレゾを聴いてみよう。ソニーのLDACに対応する「WF-1000XM4」を用意した。
Xperiaに「Sony | Headphones Connect」アプリを投入して、アプリの「サウンド」タブから「Bluetooth接続品質」を「音質優先」に設定するとLDACによるリスニングが選べる。
ULTRA HD(ハイレゾ音質)で配信されているyamaの楽曲『色彩』を、「音質優先」と「接続優先」のモードと切り換えながら比べた。LDACの方が中高音域の情報量に圧倒的な厚みがある。接続優先のモードで聴くとボーカルの質感に少しざらつきがある。LDACに切り換えるとこれが消えて滑らかになり、音像がタイトに引き締まった。低音もいっそう深く沈み込むようになる。
クアルコムのaptX Adaptiveもハイレゾに対応するBluetoothオーディオのコーデックだ。Snapdragon Soundに対応する機器を組み合わせると、最大96kHz/24bitのハイレゾワイヤレス再生が楽しめる。今回はオーディオテクニカの完全ワイヤレスイヤホン「ATH-TWX9」を紹介する。Xperia 1 VとATH-TWX9は、どちらもクアルコムのSnapdragon Soundに対応するデバイスだ。
機器のペアリングが完了後、スマホの通知パネルに表示される「Qualcomm aptX Adaptive対応機器の音質設定」をタップして「ワイヤレス再生品質」のメニューを開く。ここで「96kHzサンプルレート再生」を選ぼう。オーディオテクニカの「Connect」はシンプルな操作性が心地よいモバイルアプリだ。ペアリング完了後はアプリの画面にも、現在接続されているBluetoothオーディオのコーデックが表示される。aptX Adaptiveが選ばれていることを確認する。
ATH-TWX9がLDACに対応していないため、aptX Adaptiveとの聴き比べはできないが、本機によるハイレゾ再生はアタックが鋭くビビッドな印象を受ける。リズムもタイトに引き締まり、ピリッとした躍動感が伝わってくる。WF-1000XM4で聴くyamaの『色彩』はきめ細かく上品だが、ATH-TWX9は活き活きとした表情が前面に押し出される印象だ。
ハイレゾ再生から少しテーマが逸れるが、ソニーのWF-1000XM4とオーディテクニカのATH-TWX9はともにソニーの立体音楽再生技術である「360 Reality Audio」の認定を受けたワイヤレスイヤホンだ。360 Reality Audioは対応するコンテンツさえあれば、様々なスマホとイヤホン/ヘッドホンによる組み合わせで楽しめる。認定モデルのイヤホン・ヘッドホンはソニーの「個人最適化」の技術により、専用のアプリで音場やヘッドホンの音響特性を合わせることで、リアルな臨場感が楽しめるところに特長がある。
ATH-TWX9の場合、Connectアプリの「360 Reality Audio」のメニューをタップして、スマホのカメラで左右の耳の画像を撮影。耳を測定して長官特性データを作成する。画像の撮影からデータの作成まで約数分で完了する。
Amazon Musicでは360 Reality Audioに対応する音楽コンテンツも配信している。YOASOBIの『群青』を聴くと、立体的に描かれる空間の中にボーカルが浮かび上がり、奥行き方向にも透明な情景が広がる。ハンドクラップなどリズムの効果音が水平方向へダイナミックに移動する。足もとから骨太な低音が響く臨場感が味わえるところも、リスナーの360度周囲を包み込む360 Reality Audio再生の魅力だ。
Xperia 1 Vにはスマホによる音楽再生をさらに楽しくする機能がふたつある。ひとつは通常のステレオ音源を360 Reality Audioによる立体音楽体験に変換する「360 Upmix」だ。音設定の中にある「オーディオ設定」からメニューをONにする。360 Reality Audioの音源として制作されたネイティブコンテンツほどの立体感は得られないものの、いつもステレオ再生で聴いている音楽に自然な音場の広がりと臨場感が加えられる面白い機能だ。
そしてもうひとつが、様々な音源をハイレゾ相当の高音質に拡張する「DSEE Ultimate」だ。Xperia 1 Vの場合、音設定>オーディオ設定からDSEE UltimateをONに切り換えると、有線・無線接続のどちらの場合でも48kHz/16bit、または44.1kHz/16bitまでの音源を、ソニー独自のAI技術により最大192kHz/24bitまで拡張する。元の音源はスタンダード音質の音楽配信サービス、CDからリッピングしたりダウンロード購入したMP3など様々なフォーマットをサポートする。サンプリング周波数だけでなくビット深度も同時に拡張するので、ハイレゾらしいきめ細かさと力強さの両方がスケールアップする。
ストリーミングサービスでは44.1kHzもしくは48kHzクオリティの音源しか配信されていないものも多くある。そういった音源でも、Xperiaならばアップスケールして楽しめるのだ。竹内まりやのベストアルバム「Expressions」から『元気を出して』を再生すると、ボーカルの輪郭に繊細さが増して余韻に華やかさが加わった。楽器の深く自然な音色にも引き込まれる。ハイレゾ未満の音源を聴く場合はこの機能は常時ONでいいと思う。
スマホによるハイレゾ再生は屋外で聴くだけでなく、家の中でもゆっくりと腰を落ち着けて楽しみたい。ソニーの新しい開放型ヘッドホン「MDR-MV1」とXperia 1 Vによるリスニングスタイルを紹介しよう。
MDR-MV1は360 Reality Audioのような立体音響コンテンツのミキシングやマスタリングなど、音楽制作向けのモニターヘッドホンとして誕生した。ソニーのモニターヘッドホンといえばレコーディング用途にもよく使われている「MDR-M1ST」や「MDR-CD900ST」が有名だ。MDR-MV1はハウジングを開放構造とした新しいヘッドホンで、ソニーストアの販売価格は59,400円(税込)。ハイレゾに対応する開放型ヘッドホンの中では比較的手頃な選択肢だ。
5Hzから80kHzまでの広帯域再生に対応し、360 Reality Audio認定モデルでもあることから、音楽クリエイターの意図するサウンドを忠実に再現する力に富んでいる。モニターヘッドホンでありながらオーディオリスニングにも存分に楽しめる。Xperia 1 Vのヘッドホン端子に接続するためには、ヘッドホンの商品パッケージに同梱されている6.3ミリから3.5ミリステレオミニプラグへの変換アダプターが必要になるが、それでもかなり手軽にハイレゾ再生が楽しめる魅力がある。
ヒラリー・ハーンのアルバム「メンデルスゾーン&ブラームス:ヴァイオリン協奏曲」を再生すると、弦楽器の艶っぽい音色やダイナミックな音場の広がりが生々しく伝わってくる。MDR-MV1のような開放型ヘッドホンは、まわりに大勢の人がいる場所では音もれを気にしながら使う必要があるが。スマホとヘッドホンなら移動もたやすい。周囲に気兼ねすることなくMDR-MV1を鳴らし込める環境を見つければいい
インピーダンスの高いプレミアムクラスのヘッドホンで聴くハイレゾもまた味わい深い。ところがハイインピーダンスのヘッドホンを、Xperiaのようなスマホのヘッドホン端子に直結してしまうと、さすがにその実力を最大限まで引き出すことは難しくなる。
今回筆者が試聴したAstell&Kern「AK HC3」のように、スマホのUSB-C端子に直結できるポータブルサイズのUSB-DACアンプの併用が効果的だ。小さいながらもパワフルなアンプを介せば、まるで足回りの良い高級車で楽しむドライブのように、スマホによるハイレゾ再生も暴れのない滑らかなサウンドになる。
あるいはスマホにUSB-DACアンプを接続すること自体が煩わしく感じられるようであれば、いよいよハイレゾ対応のポータブルオーディオプレーヤーにステップアップすることも視野に入れたい。機会があればまた今度、旬なエントリークラスのポータブルハイレゾプレーヤーも紹介したいと思う。
完全ワイヤレスイヤホンから外付けDACまで様々な方法を試す
Xperiaで始めるハイレゾストリーミング!サブスク配信をもっといい音で楽しむ方法
山本 敦「Xperia 1 V」を活用して、ハイレゾ配信を楽しもう
最近ではAmazon MusicにApple Musicなど、一般に普及する音楽配信サービスでもハイレゾ再生が手軽に楽しめるようになった。5Gの高速・大容量通信サービスに常時つながるソニーのXperiaはハイレゾ音楽配信と最も相性が良いスマホの代表格だ。6月に発売された最新モデル「Xperia 1 V」をリファレンスにして、スマホで楽しむハイレゾ音楽配信にスポットを当ててみたい。
ソニーのXperiaは2014年に発売した「Xperia Z2」から初めてUSBデジタル出力によるハイレゾ再生に対応した。以来、アナログヘッドホン端子によるハイレゾ再生や、ソニーの高音質BluetoothオーディオコーデックであるLDACによるハイレゾワイヤレス再生にも楽しみ方を広げている。
筆者が知る限り、ソニーのXperiaシリーズほどヘッドホン・イヤホンによる再生と、内蔵スピーカーによる再生の両方で高音質にこだわり続けているスマホは他にない。オーディオ担当のエンジニアを訪ねて、音質まわりの技術やこだわりについて会話のキャッチボールが小気味よく交わせる相手もソニーのXperiaチームぐらいだ。
最新モデルのXperia 1 Vによるハイレゾ再生は大きく分けて下記3通りの方法がある。
(1)3.5ミリヘッドホン端子にハイレゾ対応の有線ヘッドホン/イヤホンをつなぐ
(2)LDAC、またはaptX Adaptiveを中心とするSnapdragon Soundに対応するワイヤレスオーディオ機器をペアリングして聴く
(3)USBデジタル出力にハイレゾ対応のDACなどをつなぐ
Xperiaの場合、基本的には音楽配信サービスなどフォーマットに準じた音質でオーディオを出力する。ソニーの「NW-A300」シリーズなど、Androidを搭載するストリーミングウォークマンの場合は、本体のハイレゾストリーミング設定をONにした場合、アラート音なども含めてすべてのオーディオ出力が192kHz/32bitになるところに違いがある。
最近では多くのAndroid OSを搭載するスマホがハイレゾ再生に対応しているが、有線のハイレゾ対応ヘッドホン・イヤホンを本体に直接さして、手軽にハイレゾが聴けるスマホは少なくなった。例えばiPhone 14の場合、Apple Musicのハイレゾロスレス音源をハイレゾで楽しむ場合は、Lightning端子を経由してUSB-DACアンプなどを接続する必要がある。
今回はXperia 1 VとAmazon Musicの楽曲をリファレンスにして、様々なハイレゾ対応のオーディオ機器による組み合わせを試した。Xperiaならではの高音質化機能も試してみたい。
手軽にハイレゾクオリティを実現!LDAC対応の完全ワイヤレス「WF-1000XM4」
最初は左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンでハイレゾを聴いてみよう。ソニーのLDACに対応する「WF-1000XM4」を用意した。
Xperiaに「Sony | Headphones Connect」アプリを投入して、アプリの「サウンド」タブから「Bluetooth接続品質」を「音質優先」に設定するとLDACによるリスニングが選べる。
ULTRA HD(ハイレゾ音質)で配信されているyamaの楽曲『色彩』を、「音質優先」と「接続優先」のモードと切り換えながら比べた。LDACの方が中高音域の情報量に圧倒的な厚みがある。接続優先のモードで聴くとボーカルの質感に少しざらつきがある。LDACに切り換えるとこれが消えて滑らかになり、音像がタイトに引き締まった。低音もいっそう深く沈み込むようになる。
Snapdragon Soundでもハイレゾに対応。オーテク「ATH-TWX9」をチェック
クアルコムのaptX Adaptiveもハイレゾに対応するBluetoothオーディオのコーデックだ。Snapdragon Soundに対応する機器を組み合わせると、最大96kHz/24bitのハイレゾワイヤレス再生が楽しめる。今回はオーディオテクニカの完全ワイヤレスイヤホン「ATH-TWX9」を紹介する。Xperia 1 VとATH-TWX9は、どちらもクアルコムのSnapdragon Soundに対応するデバイスだ。
機器のペアリングが完了後、スマホの通知パネルに表示される「Qualcomm aptX Adaptive対応機器の音質設定」をタップして「ワイヤレス再生品質」のメニューを開く。ここで「96kHzサンプルレート再生」を選ぼう。オーディオテクニカの「Connect」はシンプルな操作性が心地よいモバイルアプリだ。ペアリング完了後はアプリの画面にも、現在接続されているBluetoothオーディオのコーデックが表示される。aptX Adaptiveが選ばれていることを確認する。
ATH-TWX9がLDACに対応していないため、aptX Adaptiveとの聴き比べはできないが、本機によるハイレゾ再生はアタックが鋭くビビッドな印象を受ける。リズムもタイトに引き締まり、ピリッとした躍動感が伝わってくる。WF-1000XM4で聴くyamaの『色彩』はきめ細かく上品だが、ATH-TWX9は活き活きとした表情が前面に押し出される印象だ。
360 Reality Audio認定モデルは空間オーディオの「個人最適化」も可能
ハイレゾ再生から少しテーマが逸れるが、ソニーのWF-1000XM4とオーディテクニカのATH-TWX9はともにソニーの立体音楽再生技術である「360 Reality Audio」の認定を受けたワイヤレスイヤホンだ。360 Reality Audioは対応するコンテンツさえあれば、様々なスマホとイヤホン/ヘッドホンによる組み合わせで楽しめる。認定モデルのイヤホン・ヘッドホンはソニーの「個人最適化」の技術により、専用のアプリで音場やヘッドホンの音響特性を合わせることで、リアルな臨場感が楽しめるところに特長がある。
ATH-TWX9の場合、Connectアプリの「360 Reality Audio」のメニューをタップして、スマホのカメラで左右の耳の画像を撮影。耳を測定して長官特性データを作成する。画像の撮影からデータの作成まで約数分で完了する。
Amazon Musicでは360 Reality Audioに対応する音楽コンテンツも配信している。YOASOBIの『群青』を聴くと、立体的に描かれる空間の中にボーカルが浮かび上がり、奥行き方向にも透明な情景が広がる。ハンドクラップなどリズムの効果音が水平方向へダイナミックに移動する。足もとから骨太な低音が響く臨場感が味わえるところも、リスナーの360度周囲を包み込む360 Reality Audio再生の魅力だ。
圧縮音源をグレードアップできる「DSEE Ultimate」はXperiaならでは
Xperia 1 Vにはスマホによる音楽再生をさらに楽しくする機能がふたつある。ひとつは通常のステレオ音源を360 Reality Audioによる立体音楽体験に変換する「360 Upmix」だ。音設定の中にある「オーディオ設定」からメニューをONにする。360 Reality Audioの音源として制作されたネイティブコンテンツほどの立体感は得られないものの、いつもステレオ再生で聴いている音楽に自然な音場の広がりと臨場感が加えられる面白い機能だ。
そしてもうひとつが、様々な音源をハイレゾ相当の高音質に拡張する「DSEE Ultimate」だ。Xperia 1 Vの場合、音設定>オーディオ設定からDSEE UltimateをONに切り換えると、有線・無線接続のどちらの場合でも48kHz/16bit、または44.1kHz/16bitまでの音源を、ソニー独自のAI技術により最大192kHz/24bitまで拡張する。元の音源はスタンダード音質の音楽配信サービス、CDからリッピングしたりダウンロード購入したMP3など様々なフォーマットをサポートする。サンプリング周波数だけでなくビット深度も同時に拡張するので、ハイレゾらしいきめ細かさと力強さの両方がスケールアップする。
ストリーミングサービスでは44.1kHzもしくは48kHzクオリティの音源しか配信されていないものも多くある。そういった音源でも、Xperiaならばアップスケールして楽しめるのだ。竹内まりやのベストアルバム「Expressions」から『元気を出して』を再生すると、ボーカルの輪郭に繊細さが増して余韻に華やかさが加わった。楽器の深く自然な音色にも引き込まれる。ハイレゾ未満の音源を聴く場合はこの機能は常時ONでいいと思う。
ソニーの「MDR-MV1」は自宅でも高音質をたっぷり楽しめる
スマホによるハイレゾ再生は屋外で聴くだけでなく、家の中でもゆっくりと腰を落ち着けて楽しみたい。ソニーの新しい開放型ヘッドホン「MDR-MV1」とXperia 1 Vによるリスニングスタイルを紹介しよう。
MDR-MV1は360 Reality Audioのような立体音響コンテンツのミキシングやマスタリングなど、音楽制作向けのモニターヘッドホンとして誕生した。ソニーのモニターヘッドホンといえばレコーディング用途にもよく使われている「MDR-M1ST」や「MDR-CD900ST」が有名だ。MDR-MV1はハウジングを開放構造とした新しいヘッドホンで、ソニーストアの販売価格は59,400円(税込)。ハイレゾに対応する開放型ヘッドホンの中では比較的手頃な選択肢だ。
5Hzから80kHzまでの広帯域再生に対応し、360 Reality Audio認定モデルでもあることから、音楽クリエイターの意図するサウンドを忠実に再現する力に富んでいる。モニターヘッドホンでありながらオーディオリスニングにも存分に楽しめる。Xperia 1 Vのヘッドホン端子に接続するためには、ヘッドホンの商品パッケージに同梱されている6.3ミリから3.5ミリステレオミニプラグへの変換アダプターが必要になるが、それでもかなり手軽にハイレゾ再生が楽しめる魅力がある。
ヒラリー・ハーンのアルバム「メンデルスゾーン&ブラームス:ヴァイオリン協奏曲」を再生すると、弦楽器の艶っぽい音色やダイナミックな音場の広がりが生々しく伝わってくる。MDR-MV1のような開放型ヘッドホンは、まわりに大勢の人がいる場所では音もれを気にしながら使う必要があるが。スマホとヘッドホンなら移動もたやすい。周囲に気兼ねすることなくMDR-MV1を鳴らし込める環境を見つければいい
有線ヘッドホンを活用するならば外付けDACがおすすめ!
インピーダンスの高いプレミアムクラスのヘッドホンで聴くハイレゾもまた味わい深い。ところがハイインピーダンスのヘッドホンを、Xperiaのようなスマホのヘッドホン端子に直結してしまうと、さすがにその実力を最大限まで引き出すことは難しくなる。
今回筆者が試聴したAstell&Kern「AK HC3」のように、スマホのUSB-C端子に直結できるポータブルサイズのUSB-DACアンプの併用が効果的だ。小さいながらもパワフルなアンプを介せば、まるで足回りの良い高級車で楽しむドライブのように、スマホによるハイレゾ再生も暴れのない滑らかなサウンドになる。
あるいはスマホにUSB-DACアンプを接続すること自体が煩わしく感じられるようであれば、いよいよハイレゾ対応のポータブルオーディオプレーヤーにステップアップすることも視野に入れたい。機会があればまた今度、旬なエントリークラスのポータブルハイレゾプレーヤーも紹介したいと思う。