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公開日 2023/08/01 06:45
『Spears & Munsil Ultra HD ベンチマーク (2023)』

評論家も画音質評価に使用する4K UHD BD・ベンチマークソフトに4年ぶり新作登場。新チェックパターンを試す

鴻池賢三
4K/HDR時代の映像機器用ベンチマークソフトとして、世界で人気の『The Spears & Munsil UHD HDR ベンチマーク』。8K/HDRで撮影され、マスタリングされたデモ映像が収録されていることもあり、ビデオ素材用のレファレンスソフトとして活用するオーディオビジュアル評論家も多かった。今回、4年振りに新作版として『Spears & Munsil Ultra HD ベンチマーク (2023)』が登場。ディスク内容が3枚組(Disc1/2/3)に強化され、さらにオーディオビジュアルファン必見のテストパターンも増えている。本稿では、そのアップデートの内容を中心に紹介していきたい。

Scenic Labs 『Spears & Munsil Ultra HD ベンチマーク(2023)』 ¥8,800(税込)




■3Dオーディオが追加され選べるHDRフォーマットも増えた


早速、Disc1をレコーダー/プレーヤーで再生してみると、メニュー画面が表れ、「CONFIGURATION」の「Video Format」や「Audio Format(A/V Sync)」から、HDRやサラウンドのフォーマットを選択できるようなっており、この時点で既にブラッシュアップされていることが分かる。

Disk1のメニュー画面

HDRフォーマットをDolby Vision/HDR10+/HDR10から選べるのは前作版同様だが、HDR10を選択した際の「Peak Luminance(cd/m2)」の選べる輝度が変わっている。前作では10,000/4,000/2,000/1,000/600だったが、新たに350 cd/m2が追加されている。液晶テレビや有機ELテレビに加え、比較的低輝度と言えるプロジェクターもカバーする狙いがある。HDRフォーマットに対応したプロジェクターが増えていることを睨んでのアップデートと言える。

音声も新たなフォーマットが追加されている。前作版はサラウンドフォーマットまでだったが、新作版では新たにDolby AtmosとDTS:Xの3Dオーディオフォーマットが選べるようになった。また、後述するが新作版は、音声関連の項目が増えている点も大きなポイントで、Disc3は音声関連の項目がメインとなっている。

HDR10の「Peak Luminance(cd/m²)」の項目の中に350 cd/m²が追加された

3DオーディオフォーマットのDolby AtmosとDTS:Xが新たに加わった

Disc1はほかにも、「ADVANCED VIDEO」の中に、「Motion HFR」が追加されており、HFRの文字のごとく「High Frame Rate」の映像を確認することができる。「Motion」のみの項目は23,976fps、いわゆる24pのフレームレートの映像が収録されているが、Motion HFRは59.94fps、つまり60pの高フレームレートで収録された映像を再生することができる。

動画解像のチェック内容では、文字や映像が横に流れていく動画なども含まれている

■「SKIN TONES」で人肌の表現がチェックできる


次にDisc2を再生してみると、「MOTION」「SKIN TONES」「DEMONSTRATION MATERIAL」が主なコンテンツをとなっている。新しく追加された項目としてわかりやすいのが「SKIN TONE」だ。直訳すると「肌色」であるが、同梱されている解説書によると、人間の視覚はヒトの肌色に敏感で、また共通の記憶色でもあり、色の狂いやバンディングを察知し易いという。つまり、短時間で機器やディスプレイが適正な状態か否か判断できると言う訳だ。

Disk2には「SKIN TONES」の項目が追加された

Alex/Alexandra/Gabriella/Jacely/Jennie/Joy/Monette/Yokoは、各一人が映し出される。「3×3 Matrix」では先ほど記載した人物全員がひとつの画面に9分割された枠で表示。「Group」は全員同時に撮影した集合写真のような状態の映像で表示される。Disk2では、HDR10/HDR10+/Dolby Visionのフォーマットの場合で確認することができ、SDRバージョンはDisk3に収録されている。

8人のパターンを収録

「3✕3 Matrix」の表示画面

前作版でも4Kテレビなどのチェックで活躍したデモ映像は、「DEMONSTRATION MATERIAL」の項目から再生できる。選べるHDRフォーマットがHDR10(10,000/2,000/1,000/600、BT.2020)/Dolby Vision/HDR10+、そこにHLG(1000、BT.2020)が加わり、そして新たにTechnicolor(1000、BT.2020)のHDRフォーマットであるSL-HDR2が追加されていた。TechnicolorのHDRフォーマットは、対応したレコーダー/プレーヤーや4Kテレビなどに触れる機会があれば、是非試してみたい。

「DEMONSTRATION MATERIAL」には、「HDR vs SDR」「Graded vs Ungraded」「HDR Analyzer」などの項目も備える

また、HDRとSDRの比較をイメージした分割画面が表示される「HDR vs SDR」やグレーディングと非グレーディングをイメージした分割画面「Graded vs Ungraded」といったユニークな項目も備えるが、これらはあくまでも初心者が「違いを映像で理解する」くらいのコンテンツと考えれば良いだろう。ディスプレイの評価や調整には使えない。

しかしながら、筆者が面白いと思ったのが、新しい項目の「HDR Analyzer」で、画面を4分割し、通常のデモ映像に加え、素材をアナライザーで測定評価した画面も収録されていて、映像がどのような状況なのか同時に確認できるというもの。左下に「元のカラー映像」を映しつつ、左上に「輝度グラフ」、右上に「色域グラフ」、右下に「白黒映像」という構成だ。

新しい項目の「HDR Analyzer」では、左下に「元のカラー映像」、左上に「輝度グラフ」、右上に「色域グラフ」、右下に「白黒映像」を映す4分割画面になっている

画面右上に表示される「色域分布」では、映像素材に含まれる色の情報がどのように分布しているかが確認できる。また、DCI-P3の色域(三角形)を超えると、その部分が右下の「白黒映像」に赤色で表示される。

この項目の活用方法としては、デモ映像がBT.2020基準で制作されていて、DCI-P3を超える場面がある。市販の映像装置は未だDCI-P3を超える製品がほぼ無いので、自分のディスプレイがどのように表示しているのか確認するのは、実力を把握するという意味で面白いはずだ。また、DEMONSTRATION MATERUALの映像パターンがいくつか追加されていたり、BGMが変わっていたりなど、細かい部分の変更もある。

動画再生中でも、プレーヤー/レコーダーのリモコンの上下ボタンでHDRフォーマットを手軽に変更できる

■音のレベルやパンニングも検証可能になる


Disc3は、各種パターンや映像素材がSDR(非HDR)で収録されていて、HDRのみだった前作版と異なる分部。HDRだけでなくSDRでも確認や調整を行えるようになったのだ。通常、映像装置の画質調整機能は、SDRとHDRで個別に調整するようになっているので、地味ながら有意義な進化と言える。因みにカラースペースはBT.709とBT.2020が選択可能だ。

Disk3の「Audio Format(A/V Sync)」からは、Dolby Atmos/Dolby TrueHD/DTS:X/DTS-HD MAのオーディオフォーマットをチェックできる

新作版からの新たな試みである音声関連のコンテンツも、このDisc3に収録されている。「CONFIGURATION」では、「Audio Format(A/V Sync)」からは、Dolby Atmos/Dolby TrueHD/DTS:X/DTS-HD MAの3Dオーディオを含む4つのフォーマットから選ぶことができる。

またこちらも新しく追加されている「Audio Levels and Bass Management」では、「Audio Format」「Base Layer」「Top Layer」の項目を備え、Audio FormatからDolbyを選んだ場合、Bass Layerは5.1/7.1/9.1、Top Layerは2/4/6のシステムを、DTSを選んだ場合はBass Layerは5.1/7.1/9.1、Top Layerは2/4のシステムから選ぶことができる。

「AUDIO」の項目では、「Levels」「Bass Management」「Panning」「Rattle Test」「A/V Sync」のサウンドチェックが可能

「AUDIO」では、セットアップに活用できる各種項目を用意。「Levels」では500Hz〜2kHz、30〜80Hzのピンクノイズ、「Bass Management」では30〜50HzのピンクノイズをBase LayerとTop Layerで分けて出力する。また「Panning」では水平方向に回転したり、対角方向へと移動する音(テストトーン)が入っている。

「Panning」の表示画面

「Rattle Test」は、窓、扉、壁、天井、家具、花瓶などなどの「ガタガタ音」を調べることを目的としたもの。「500Hz〜200Hz」「200Hz〜15Hz」のスイープ音を大きめの音で鳴らすと、共振でガタガタと音を立てることがある。このガタガタは映画視聴中にも発生するので、テストして問題がある部分を効果的に見つけて対策できる。

「Rattle Test」の表示画面

「A/V Sync」は、リップシンクと呼ばれるものであり、Audio(音声)とVisual(映像)のズレを確認する項目。ズレていればテレビやAVアンプ側などの機能で、調整を行う。画と音のタイミングがどのようにズレているか確認しやすい表示内容になっているのも特徴だ。

以上が新作版の『Spears & Munsil Ultra HD ベンチマーク (2023)』から追加された、主にユーザーがチェックに使える項目だ。Disk3枚になったことにより、画も音も幅広いチェックが可能となったことがお分かり頂けたのではないだろうか。





次回は、筆者も良く使うチェックおよび調整用テストパターンとその方法を具体的に紹介できればと考えている。オーディオビジュアルファンは、ぜひ『Spears & Munsil Ultra HD ベンチマーク (2023)』を活用して、さらなる画音のクオリティーアップを目指そう!

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