公開日 2024/03/07 06:30
【特別企画】「V5 AQUARIUS」「TITAN」も試す
IsoTekのパワーコンディショナー「V5シリーズ」最新機をレビュー。7つの独立フィルターで音質はどう向上した?
林 正儀
IsoTekのパワーコンディショナーEVO3 SIGMASの後継モデルとして登場が待たれていたV5 SIGMASが装いを新たに発売された。同製品を、評論家の林 正儀氏がレビューする。
V5 SIGMASは、ラウンドされた特徴的なデザインにリニューアルされ、EVO3 SIGMASから基本性能は受け継ぎつつ全ての要素を検討し直し改善させたパワーコンディショナー。7つの独立したフィルターを搭載したコンセントを装備し、EVO3 SIGMASでは2系統だった後段用高電流機器用の出力は新たに1系統増設。前段機器用の中電力用の出力は、EVO3 SIGMASと同様の4系統を装備している。
昨年秋にアイソテックの新製品「V5 SIGMAS」が登場し、V5シリーズの3種類が出揃った。いま試聴室で最新の「V5 SIGMAS」が私を迎えているが、改めて電源コンディショナーSIGMASのパフォーマンスを確かめながら、下位モデルにあたる「V5 AQUARIUS」と「TITAN」についても軽く紹介したい。
「EVO3 SIGMAS」の四角い筐体からラウンドされた優美なデザインに変わったのは斬新だった。独自のデジタルフィルターやDCDフィルターによる基本構成に変わりはないが、処理能力や機能など細部までブラッシュアップされており、魅力度をアップした。
改めてアイソテックの特徴は、ノイズフィルターのパッシブタイプであるという点だ。増幅したり波形を変えたりしていないため、本来の音楽のスタイルを変えず音色に介入することもない。やっていることは基本パッシブなので、できるだけ自然な音楽をそのまま出したいというのが同社の考え方になる。これはCEOのキース氏が2022年の来日時に語っていたとおりだ。「電源が入力されてから出力されるまでにできるだけ距離を短くし、より効率的に音のスピード感を保ちたいのです」。
それが入念なパーツの吟味や回路パターンの全面的見直しなどにつながっていて、共感できる姿勢だと思う。音楽大国である英国メーカーらしい発想でもある。何度か紹介してきたように、アイソテックの目標のひとつはDCR(直流抵抗)を低減し、理想的なゼロオームに近づけることだ。「V5 SIGMAS」では前モデル比で35%もの改善に成功した。こうしたデータが公開できるのも自信のあらわれといえる。
ここで「V5 SIGMAS」の仕様を確認しておこう。定格出力容量は最大1600VA。一番変わった点は出力部分が6口から7口になったことだ。1つの筐体に7つの独立したフィルターを搭載。特に高出力のアウトレット(背面の赤い端子)が3つに増えていることが注目で、これはパワーアンプなど出力の大きなコンポ用である。用途としては、例えばモノラルパワーに格上げしたり、AVアンプのユーザーがサブウーファーを2台使うなどだが、いずれにせよ7口もあればまず不足はないはずだ。
もうひとつのポイントである保護回路は、前の「EVO3」から一新された。詳細は省くが重奏的なプロテクションで、入力部のアースフィルターから熱磁器ヒューズなどなど。さらに過電流保護装置付き漏電ブレーカーや雷に対応するサージフィルターがついている。めったに出番はないが、突入電流に対して機器が壊れにくくなったのは好ましい。
「V5 SIGMAS」によって、システムのサウンドがどうクオリティアップされるのか。常設のCDプレーヤーやプリ、パワーアンプを接続して聴き比べてみた。フィルターを通すと普通はエネルギーが細るものだが、アイソテックにはそれがない。むしろ低音などにぐっと力がつき引き締まって、ドライブ力までアップするような傾向だ。S/Nや静寂感の目覚ましさは国内デビュー時から感じていた通りで、オペラのアリアは透明度高く、どこまでもピュアに澄み渡る感触である。
細部まで高情報量にして情感細やかとは、こういうことであったか。たまをころがすような声色の変化や流麗なグラデーションの出方は、通常のコンディショナーではなかなか体験できるものではない。ノイズの処理能力やロスの少ない回路構成が効いたようである。ヴァイオリン協奏曲や古楽器オケを聴いてみたところ、さらに微細感が高まり、奥行や広がりなどステージ上の空間配置が手に取るようだ。潤うような音色と艶っぽさが両立している。
全体に「EVO3」よりもクリアさとパワフルさを高めた「V5 SIGMAS」。そんな中で、ガッツや疾走感感が分かりやすいのがジャズだろう。明快かつナチュラルそのものの再生で、聴き慣れたキース・ジャレットの『枯葉』はドラムのアタック、ベースのピッキングなどものすごい熱量と躍動感だ。メロディ、ハーモニー、リズム全てに究極の美が発揮される。聴けば聴くほどV5 SIGMASの真価に引き込まれる体験であった。
ここで、V5シリーズのエントリークラスとなる「V5 AQUARIUS」を解説しよう。どの機器にも使えるオールマイティ型で、幅445×高さ105×奥行き350mmとコンパクト。価格もほぼ半分程度とハイコストパフォーマンスモデルだ。
定格出力電流は最大16A。高出力×2、低出力×4の合計6口出力になる。その音質は明るくクリアで、現代的なレスポンスの良さが印象的だ。フラットな帯域バランスを持ち音楽を楽しく聴かせてくれる。シンプルな使い勝手も好ましい。
「V5 TITAN」は、パワーアンプ専用の大型モデルだ。サイズは幅220×高さ147×奥行き350mm。パワーアンプ、サブウーファー、アクティブスピーカーなどに対応した高出力コンセントが、3系統備わっている。定格出力電流は最大16Aで、さらに新しいシステムリンクにも対応する。これは複数の同社製機器をつないで、ひとつの壁コンセントからでも駆動できるものだ、背が高いので設置には注意。
先に「V5 AQUARIUS」や「V5 SIGMAS」を入れた後、追加での導入が推奨されるものだ。安定した電力を供給し、その音は力強くハイスピード。ドライブ力を高め表現がダイレクトになる印象がある。量感と空間の躍動が両立する印象だ。最後にアイソテック製品のラインアップを整理しておこう。
グレード別に言うと、その上に「EVO3 NOVA」と「EVO3 SUPER NOVA」がある。「EVO3 NOVA」が先に発売され、次にNOVAを凌ぐ「SUPER NOVA」が登場した。というわけで、「AQUARIUS」、「SIGMAS」、「NOVA」、「SUPER NOVA」。これはオールマイティ型で、さらに別系統(大電力モデル)の「V5 TITAN」と「SUPER TITAN」がトップグレードのパワーアンプ専用機としてラインアップされた。ここまでの以上6モデルがパッシブフィルター型である。また、正弦波ジェネレーター方式の「EVO3 GENESIS」がトップに君臨するが、これは機会を改めて紹介したい。
(提供:ナスペック)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.192』からの転載です
V5 SIGMASは、ラウンドされた特徴的なデザインにリニューアルされ、EVO3 SIGMASから基本性能は受け継ぎつつ全ての要素を検討し直し改善させたパワーコンディショナー。7つの独立したフィルターを搭載したコンセントを装備し、EVO3 SIGMASでは2系統だった後段用高電流機器用の出力は新たに1系統増設。前段機器用の中電力用の出力は、EVO3 SIGMASと同様の4系統を装備している。
アイソテックのV5シリーズにV5 SIGMASが登場
昨年秋にアイソテックの新製品「V5 SIGMAS」が登場し、V5シリーズの3種類が出揃った。いま試聴室で最新の「V5 SIGMAS」が私を迎えているが、改めて電源コンディショナーSIGMASのパフォーマンスを確かめながら、下位モデルにあたる「V5 AQUARIUS」と「TITAN」についても軽く紹介したい。
「EVO3 SIGMAS」の四角い筐体からラウンドされた優美なデザインに変わったのは斬新だった。独自のデジタルフィルターやDCDフィルターによる基本構成に変わりはないが、処理能力や機能など細部までブラッシュアップされており、魅力度をアップした。
改めてアイソテックの特徴は、ノイズフィルターのパッシブタイプであるという点だ。増幅したり波形を変えたりしていないため、本来の音楽のスタイルを変えず音色に介入することもない。やっていることは基本パッシブなので、できるだけ自然な音楽をそのまま出したいというのが同社の考え方になる。これはCEOのキース氏が2022年の来日時に語っていたとおりだ。「電源が入力されてから出力されるまでにできるだけ距離を短くし、より効率的に音のスピード感を保ちたいのです」。
それが入念なパーツの吟味や回路パターンの全面的見直しなどにつながっていて、共感できる姿勢だと思う。音楽大国である英国メーカーらしい発想でもある。何度か紹介してきたように、アイソテックの目標のひとつはDCR(直流抵抗)を低減し、理想的なゼロオームに近づけることだ。「V5 SIGMAS」では前モデル比で35%もの改善に成功した。こうしたデータが公開できるのも自信のあらわれといえる。
デザインが変更され内部も刷新。7つの独立したフィルターを搭載
ここで「V5 SIGMAS」の仕様を確認しておこう。定格出力容量は最大1600VA。一番変わった点は出力部分が6口から7口になったことだ。1つの筐体に7つの独立したフィルターを搭載。特に高出力のアウトレット(背面の赤い端子)が3つに増えていることが注目で、これはパワーアンプなど出力の大きなコンポ用である。用途としては、例えばモノラルパワーに格上げしたり、AVアンプのユーザーがサブウーファーを2台使うなどだが、いずれにせよ7口もあればまず不足はないはずだ。
もうひとつのポイントである保護回路は、前の「EVO3」から一新された。詳細は省くが重奏的なプロテクションで、入力部のアースフィルターから熱磁器ヒューズなどなど。さらに過電流保護装置付き漏電ブレーカーや雷に対応するサージフィルターがついている。めったに出番はないが、突入電流に対して機器が壊れにくくなったのは好ましい。
力強く低音域が引き締まり、ドライブ力までアップ
「V5 SIGMAS」によって、システムのサウンドがどうクオリティアップされるのか。常設のCDプレーヤーやプリ、パワーアンプを接続して聴き比べてみた。フィルターを通すと普通はエネルギーが細るものだが、アイソテックにはそれがない。むしろ低音などにぐっと力がつき引き締まって、ドライブ力までアップするような傾向だ。S/Nや静寂感の目覚ましさは国内デビュー時から感じていた通りで、オペラのアリアは透明度高く、どこまでもピュアに澄み渡る感触である。
細部まで高情報量にして情感細やかとは、こういうことであったか。たまをころがすような声色の変化や流麗なグラデーションの出方は、通常のコンディショナーではなかなか体験できるものではない。ノイズの処理能力やロスの少ない回路構成が効いたようである。ヴァイオリン協奏曲や古楽器オケを聴いてみたところ、さらに微細感が高まり、奥行や広がりなどステージ上の空間配置が手に取るようだ。潤うような音色と艶っぽさが両立している。
全体に「EVO3」よりもクリアさとパワフルさを高めた「V5 SIGMAS」。そんな中で、ガッツや疾走感感が分かりやすいのがジャズだろう。明快かつナチュラルそのものの再生で、聴き慣れたキース・ジャレットの『枯葉』はドラムのアタック、ベースのピッキングなどものすごい熱量と躍動感だ。メロディ、ハーモニー、リズム全てに究極の美が発揮される。聴けば聴くほどV5 SIGMASの真価に引き込まれる体験であった。
「V5 AQUARIUS」:クリアで明るく現代的なレスポンスの良さが印象的
ここで、V5シリーズのエントリークラスとなる「V5 AQUARIUS」を解説しよう。どの機器にも使えるオールマイティ型で、幅445×高さ105×奥行き350mmとコンパクト。価格もほぼ半分程度とハイコストパフォーマンスモデルだ。
定格出力電流は最大16A。高出力×2、低出力×4の合計6口出力になる。その音質は明るくクリアで、現代的なレスポンスの良さが印象的だ。フラットな帯域バランスを持ち音楽を楽しく聴かせてくれる。シンプルな使い勝手も好ましい。
「V5 TITAN」:アンプのドライブ力を高め、表現がダイレクトに
「V5 TITAN」は、パワーアンプ専用の大型モデルだ。サイズは幅220×高さ147×奥行き350mm。パワーアンプ、サブウーファー、アクティブスピーカーなどに対応した高出力コンセントが、3系統備わっている。定格出力電流は最大16Aで、さらに新しいシステムリンクにも対応する。これは複数の同社製機器をつないで、ひとつの壁コンセントからでも駆動できるものだ、背が高いので設置には注意。
先に「V5 AQUARIUS」や「V5 SIGMAS」を入れた後、追加での導入が推奨されるものだ。安定した電力を供給し、その音は力強くハイスピード。ドライブ力を高め表現がダイレクトになる印象がある。量感と空間の躍動が両立する印象だ。最後にアイソテック製品のラインアップを整理しておこう。
グレード別に言うと、その上に「EVO3 NOVA」と「EVO3 SUPER NOVA」がある。「EVO3 NOVA」が先に発売され、次にNOVAを凌ぐ「SUPER NOVA」が登場した。というわけで、「AQUARIUS」、「SIGMAS」、「NOVA」、「SUPER NOVA」。これはオールマイティ型で、さらに別系統(大電力モデル)の「V5 TITAN」と「SUPER TITAN」がトップグレードのパワーアンプ専用機としてラインアップされた。ここまでの以上6モデルがパッシブフィルター型である。また、正弦波ジェネレーター方式の「EVO3 GENESIS」がトップに君臨するが、これは機会を改めて紹介したい。
(提供:ナスペック)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.192』からの転載です
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