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公開日 2024/05/09 06:30
プリアンプ/Roon Readyとしての使い勝手もチェック

柔軟な開発力で世界のネットワークオーディオ市場を牽引するLUMIN。コンパクトな最新エントリー機「D3」の魅力

山之内 正

充実の最新機能をシンプルな筐体に収めたエントリープレーヤー



音で妥協したくないけど大がかりなオーディオは好まない。そんな音楽ファンにはネットワークプレーヤーがお薦めだが、製品選びは慎重に進めたい。音だけでなく使いやすさにもこだわりたいし、価格もリーズナブルな方がいいとなると、選択肢は絞られてくる。

LUMIN ネットワークプレーヤー「D3」(418,000円/税込)

そんなとき有力な候補に浮上するのがLUMIN(ルーミン)の製品群だ。ネットワークオーディオ草創期の2010年代前半から今日まで、柔軟かつ旺盛な開発力を背景に幅広い価格帯の製品群を提供し続け、LUMINのプレーヤーを愛用するユーザーは世界規模で広がっている。

同社の母体であるPixel Magic Systemsと技術を共有することで、激変するネットワークオーディオの潮流にもいち早く対応し、DSD再生や高音質ストリーミングの普及にも貢献してきた。その功績も含め、僅か10年ほどの間にオーディオファンが一目置く存在に成長したのだ。

APXONAにも出展していたLUMINの開発チーム

そんなLUMINのラインナップのなかで、重厚長大な高級オーディオの指向とは対照的ともいうべき軽くコンパクトなLUMIN「D3」が今回の主役だ。前身の「D2」から6年を経て登場したばかりの最新モデルで、高速なプロセッサーの導入やメモリー容量の拡大など最新の成果を投入していることが目を引く。

D3の背面端子。「ひさし」のあるデザインが特徴で、RCA/XLR出力を1系統ずつ搭載する

同社のネットワークプレーヤーは上位に「X1」と「P1」が君臨し、アッパーミドルレンジには「T3」を投入しているが、D3はそれら上位機種から基本設計とシンプルな筐体デザインのエッセンスを受け継ぎつつ、税込418,000円という現実的価格を実現したことが重要だ。上位機種のようなマッシブな雰囲気はないが、肉厚のフロントパネルは存在感がある。ディスプレイ左右を彩るCNC加工による優美な曲面は上位機種と共通だ。

肉厚のフロントパネルが本体シャーシと分離されている

足元は4点支持で、アルミのフットにフェルトで振動対策がなされている

ES9028Pro SABREを採用することで最大384kHz/32bitのPCMとDSD 256をサポートし、アナログ出力はRCAに加えてXLRを装備する。丸め誤差を排したデジタルボリューム「Leedh」を上位機種同様に内蔵しているため、本機をデジタル入力限定のプリアンプとして活用し、パワーアンプに直結する用途に活用できることにも注目したい。シンプルなオーディオを目指す音楽ファンには重要な決め手になるはずだ。

「D3」の内部構造。右側に大型の電源部を搭載しデジタル処理部と分離。D2からの進化点としては、DACチップには「ESS9028 Pro」を搭載しDSD256まで対応した点のほか、アナログ出力回路も強化されている

躍動的な演奏を引き出しハイレゾならではの響きも美しい



LUMIN Appは多機能ながら操作性が秀逸。本体のディスプレイはサイズこそミニマムだが、曲名、アーティスト名、信号フォーマットなどを同時に表示し、コントラストの高いブルーの文字は鮮明で見やすい。

フロントディスプレイの視認性も良い

fidataのミュージックサーバーから再生したベートーヴェンのスプリングソナタ(FLAC 96kHz/24bit)では透明感の高さと芯のあるヴァイオリンの音色が両立し、弓の勢いや身体の動きが目に浮かぶ躍動的な演奏を引き出すことができた。ピアノの左手が刻む和音に混濁がなく、連続する短い音符の切れの良さも第一級。反応の良い描写は上位のT3から受け継いだ長所の一つだ。ヴァイオリンとピアノの余韻が空中で自然に溶け合う柔らかい響きはハイレゾ音源ならではの美しさをたたえる。

アルベニスの「スペイン組曲」(DSD256)でも弦楽器と打楽器の躍動的なリズムが聴きどころだ。奏者の人数が多い第一ヴァイオリンやヴィオラも含めて速い動きがもつれることなく、シカゴ交響楽団の演奏能力の高さが鮮やかに浮かび上がる。この音源は、空間情報を高精度に再現するネットワークプレーヤーで聴くと前後方向の奥行きが一気に深まるのだが、D3はそうした録音の特長を素直に引き出す力があり、遠近表現に一日の長が感じられた。

セリア・ネルゴールの「マイ・クラウデッド・ハウス」(FLAC 96kHz/24bit)はパーカッションとヴォーカルの関係を立体的に再現し、複雑な動きのキーボードがリズムセクションに加わってもサウンドの見通しの良さを失わないことに感心させられた。ベースとドラムの低音は余分な重さがなく音離れが良いので、ヴォーカルをマスクすることがない。曲の最後に挿入された遠くで鳴る雷の効果音が天井近くまで上がり、微妙な位相の処理を精度高く再現していることがわかる。

LUMIN Appの操作性の良さは折り紙つき。ローカル再生からストリーミング音源まで一元的に管理・再生できる

プリアンプ/Roon Readyとして実力もチェック



固定出力をオフにしてパワーアンプ直結で同じ曲を聴いても立体感や音の移動感が後退する気配はなく、ヴォーカルの生々しさやギターが刻むリズムの動きが鈍ることもない。デジタルボリュームと聞いて連想するような音質劣化が気にならないので、アクティブスピーカーとの組み合わせも含め、D3をプリアンプとして活用することは十分視野に入る。

ボリューム機能のオンオフや、デジタルボリュームLeedhのオンオフもアプリから設定できる

TIDAL MAXにも早い時期から対応しているので、Roonの再生端末としてD3を選び、ストリーミング再生の音質も確認することにした。イザベル・ファウスト、アレクサンドル・メルニコフらが演奏したシューマンのピアノ四重奏曲(FLAC 192kHz/24bit)は弦楽器とピアノが溶け合う響きに柔らかさと一体感があり、しかも各楽器の動きと位置関係を正確に再現する良さもそなわる。呼吸の揃ったアンサンブルならではの動きのあるフレージングをはじめ、この演奏の聴きどころをもらさず聴き取ることができた。

RoonからTIDAL MAXの利用も可能で、FLACフォーマットそのままで再生される

ストリーミングの比重が高まる一方で手持ちのデジタル音源の高音質再生にも妥協したくない。そんなこだわりを持つ熱心な音楽ファンにこそお薦めしたい完成度の高いネットワークプレーヤーである。

TIDAL MAXにもいち早く対応するなど、最新技術の貪欲な取り組みもLUMINの魅力。Qobuzの日本ローンチも待ち遠しい

(提供:完実電気)

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