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公開日 2024/07/12 06:30
前モデル「AT-ART1000」を凌駕する音楽性

アナログ再生の粋。オーディオテクニカ「AT-ART1000X」は、巨大な再現力を備えたカートリッジだ

井上千岳

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オーディオテクニカ初となるダイレクトパワー方式のMCカートリッジ、「AT-ART1000」が発売されたのは2016年。同方式は理論上理想的な構造ではあるが、生産の難易度が高く、工業製品化が困難視されていた。そんな中製品として量産化に成功したからこそ、大きな話題を呼んだものである。

それから8年の時を経て、さらなる磨きを掛けたリファインモデル「AT-ART1000X」が発売になった。本稿ではこの新旧2モデルに焦点を当てて、ダイレクトパワー方式の持つ意義と音質の特徴を掘り下げてみることにしたい。


■ダイレクトパワー方式がもたらす、アナログ再生の粋に迫る



もともとAT-ART1000は、「Audio-Technica Excellence」シリーズの一環として企画されたものである。カートリッジだけでなく昇圧トランスやスピーカー・ケーブル、ライン・ケーブル、フォノ・ケーブルもラインナップされ、アナログを中心に同社の技術を結集した最高峰の製品群として位置づけられている。単に高級品というだけではなく、音楽の感動をありのままに伝えるという同社の根源的なモットーを体現するのがその理念と考えていい。

2016年発売のダイレクトパワー方式MCカートリッジ「AT-ART1000」

もちろんそこには長い歴史の中で育まれた技術の裏打ちがあるわけで、カートリッジはその代表的な例と言える。AT-ART1000はまさしくシリーズの理念に最も近い技術と感性の融合体にほかならない。

簡単に復習しておくと、ダイレクトパワー方式というのはスタイラスチップ(針先)の真上に発電コイルを乗せた構造のことである。コイルは針先に配置され、カンチレバーを介することなく針先の振動がコイルに伝わる。それでダイレクトなのである。

「AT-ART1000」のコイル部画像。丸型の形状を取る

画像を見ればわかるように、針先の上にトンボの眼鏡のようなコイルが並んでいる。この両側をヨークの先端が挟んでギャップを作り、その中でコイルが振動することで電気信号が形作られる。

一般的なMCカートリッジとの決定的な違いは信号にカンチレバーの共振による振動が乗らないことで、このため針先の振動が減衰・変調することなくそのままの形でコイルに伝わる。従って情報が多く純度が高い。平たく言えば音溝の生のままということである。

この度発表されたリファインモデルAT-ART1000Xでの変更点はここに大きく表れる。コイルの形状がAT-ART1000では丸型だったのに対し、AT-ART1000Xでは四角になっている。8年前はコイルをφ0.9mm径の丸型に成型するのが精一杯とのことだったが、AT-ART1000Xではその間に向上した製造技術や、ノウハウの積み重ねを反映。コイル成型用の治具を新たに開発したことで、四角に成型することが可能になったという。またこれに伴ってインピーダンスも3Ωから3.5Ωへ、出力は0.2mVから0.22mVへと10%ほど上昇した。

「AT-ART1000X」のコイル部画像。角型の形状に刷新した

コイル線はPCOCC、スタイラスはラインコンタクト針、カンチレバーはソリッドボロン。またベース部はチタニウム削り出しとし、ハウジングはアルミ、カバーは硬質樹脂というハイブリッド構成を採用し、共振の分散を図っている。AT-ART1000Xでもこれらに変更はない。

「AT-ART1000X」税込770,000円

「AT-ART1000X」実機のコイル写真。前モデルからの技術蓄積を活かし、専用の治具で角型に成型。さらなる出力向上を実現させた

コイル以外の変更は磁気回路に新たなコーティングを施して耐腐蝕性を向上させたことと、取り付け用のネジ穴をネジ切り仕様としたことである。前者は長期に渡る性能維持。後者は近年のハイエンドターンテーブルに多く見られる、ヘッドシェル一体型トーンアームへの装着を容易にするものとして、いずれも使い勝手の面でブラッシュアップが図られている。

そして言うまでもないことだが、製作は日本国内でのハンドメイドで行われている。

「AT-ART1000」には無かった取付用ネジ穴にネジ切りを設け、使用感の向上を提供する

完成された再生能力「AT-ART1000」。そして、それを凌駕する「AT-ART1000X」

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