公開日 2024/11/22 06:30
VGP審査員2名がリファレンスたる所以を解説
B&W「700 S3 Signature」を音元出版シアター視聴室が導入。プロが語るその理由
岩井 喬/海上 忍
今年4月に新たに誕生した音元出版の2つの試聴室。ステレオ再生を中心とする “WHITE” ルームと、マルチチャンネル再生やオーディオビジュアルを中心とする “BLACK” ルームの2つです。
これらの試聴室には、イギリスのスピーカーブランドBowers & Wilkins(以下B&W)のスピーカーが導入されました。“WHITE” ルームへの「802 D4」レポートに続き、ここでは “BLACK” ルームに“700 S3 Signatureシリーズ” が導入されたわけを、VGP審査員として “BLACK” ルームを使うことが多い岩井 喬氏、海上 忍氏にそれぞれ解説いただきました。
この春、音元出版の移転に伴い、試聴室も新調された。新たに設けられた2つの試聴室の内、シアター系の視聴に主眼を置いた “Black” ルームでの5ch用リファレンスとして、B&W「700 S3 Signature」シリーズの3モデルを導入。フロント用に「702 S3 Signature」、センター用に「HTM71 S3 Signature」、リア用に「705 S3 Signature」を割り当てられるようになった。
700 S3 Signatureはベースとなった “700 S3シリーズ” と、上位のフラグシップ “800 D4シリーズ” の価格差を埋める存在として「800 Series Signature」で開発された技術を取り入れたグレードアップバージョンである。
この700 S3 Signatureの3モデルはいずれもカーボンドームトゥイーターをキャビネット上に置く、トゥイーター・オン・トップ構造を取り入れた他、開口率の高いトゥイーター・グリルメッシュを採用。キャビネットの仕上げもより高級なものとなり、内部についても新型コンデンサーや大型空芯コイルへ置き換えた、改良版クロスオーバー・ネットワークへと変更されている。ユニットに関してもウーファーのダンパーを改良し、低音域の明瞭度を向上。スピーカーターミナルも信号の流れを高める真鍮製のものを取り入れた。
700 S3シリーズそのものも完成度が高まっていたが、Signature化によって800 D4シリーズに匹敵する解像度の高さを実現し、立ち上がり・立ち下がりのレスポンスに優れた、リファレンスとしての性能の高さを獲得している。接続するアンプやプレーヤーなど、機材の違いにも的確に反応を示す、色付けのないニュートラル基調であることも特徴といえよう。
低域まで伸び良く厚みを持たせているが、制動性も高く、フォーカスの良いサウンドだ。トゥイーター・オン・トップ構造を生かした、音離れの良いリアルな空間性は、シリーズを揃えたマルチチャンネル環境では威力を発揮。各スピーカーとの音の繋がりの良さに加え、空間情報豊かで、エアー感まで克明に拾い上げるリアルな音場が展開する。
また702 S3 Signatureや705 S3 Signatureをステレオ再生で使用した場合でも、その空間性再現度の高さは特筆すべきものがあり、センター定位のボーカルがふわりと浮き上がる自然な音場感、スピーカーの外にまで広がるステージの広大さに驚く。音像のリアルさ、音離れの良さ、歪み感のない透明度の高いサウンドは、現代スピーカーならではの高水準なものであり、フラグシップではなくとも、一つの基準となるクオリティを有しているといえるだろう。
Bowers & Wilkinsというスピーカーメーカーは、やはり特別な存在だ。1966年の会社設立以来、収益の多くを技術開発に費やし、創業者が歿してからもノーチラスやダイヤモンド・トゥイーターなど革新的な製品/技術を世に問い続け、2015年には約40年採用したケブラーコーンをコンティニアムコーンに変更するという刷新に踏み切った。
多くのオーディオメーカーがリファレンスとして採用しているのは、製品の評価のみならず、音に対する真摯な姿勢への敬意の念があるからだろう。
さて、音元出版の新試聴室 BLACKに、700 S3 Signatureシリーズが導入された。フロア型の702 S3 Signatureとブックシェルフの705 S3 Signature、センターHTM71 S3 Signatureをベースに新技術を追加したスピーカー群は、マルチチャンネル再生システムの主役として日々の試聴に活躍している。
700 S3 Signatureシリーズが選ばれた理由は、前述したB&Wに対する信頼感にくわえて「器用さ」が評価されたからではないか。グリルメッシュの開口率が高められたトゥイーター・オン・トップの威力か、楽器の立ち位置を掴みやすく定位が明瞭、確とした空間表現力を備えている。高さ方向の描写力があるから、映画のように楽曲以外の音も再生するシステムには好適だ。フロア型の702 S3 Signatureには、シアター環境においてフロントスピーカーを担いうる地力がある。
個人的には、700 S3シリーズの音はややカーブしたフロントバッフルに集約されると考えている。音を回折させることで周波数特性の乱れを抑制するからか、音の輪郭に雑味がない。ピアノのアタックからディケイ、サスティーンを経てのリリースまでのつながりがスムーズで、自然だ。この点に注目すれば、設置性に優れるブックシェルフ型705 S3 Signatureは、2ch/ステレオ環境向きともいえるだろう。
新試聴室 BLACKが完成してから数か月経つが、700 S3 Signatureシリーズをリファレンスに据えた試聴システムはすでに堂に入った感がある。その描写能力にくわえ、B&Wというブランドが有する安定感と信頼感が、アンプやプレイヤーなど他のコンポーネントを評価する軸になっていることは間違いない。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)
これらの試聴室には、イギリスのスピーカーブランドBowers & Wilkins(以下B&W)のスピーカーが導入されました。“WHITE” ルームへの「802 D4」レポートに続き、ここでは “BLACK” ルームに“700 S3 Signatureシリーズ” が導入されたわけを、VGP審査員として “BLACK” ルームを使うことが多い岩井 喬氏、海上 忍氏にそれぞれ解説いただきました。
■音離れの良いリアルな空間性がマルチチャンネル環境で威力を発揮(岩井)
この春、音元出版の移転に伴い、試聴室も新調された。新たに設けられた2つの試聴室の内、シアター系の視聴に主眼を置いた “Black” ルームでの5ch用リファレンスとして、B&W「700 S3 Signature」シリーズの3モデルを導入。フロント用に「702 S3 Signature」、センター用に「HTM71 S3 Signature」、リア用に「705 S3 Signature」を割り当てられるようになった。
700 S3 Signatureはベースとなった “700 S3シリーズ” と、上位のフラグシップ “800 D4シリーズ” の価格差を埋める存在として「800 Series Signature」で開発された技術を取り入れたグレードアップバージョンである。
この700 S3 Signatureの3モデルはいずれもカーボンドームトゥイーターをキャビネット上に置く、トゥイーター・オン・トップ構造を取り入れた他、開口率の高いトゥイーター・グリルメッシュを採用。キャビネットの仕上げもより高級なものとなり、内部についても新型コンデンサーや大型空芯コイルへ置き換えた、改良版クロスオーバー・ネットワークへと変更されている。ユニットに関してもウーファーのダンパーを改良し、低音域の明瞭度を向上。スピーカーターミナルも信号の流れを高める真鍮製のものを取り入れた。
700 S3シリーズそのものも完成度が高まっていたが、Signature化によって800 D4シリーズに匹敵する解像度の高さを実現し、立ち上がり・立ち下がりのレスポンスに優れた、リファレンスとしての性能の高さを獲得している。接続するアンプやプレーヤーなど、機材の違いにも的確に反応を示す、色付けのないニュートラル基調であることも特徴といえよう。
低域まで伸び良く厚みを持たせているが、制動性も高く、フォーカスの良いサウンドだ。トゥイーター・オン・トップ構造を生かした、音離れの良いリアルな空間性は、シリーズを揃えたマルチチャンネル環境では威力を発揮。各スピーカーとの音の繋がりの良さに加え、空間情報豊かで、エアー感まで克明に拾い上げるリアルな音場が展開する。
また702 S3 Signatureや705 S3 Signatureをステレオ再生で使用した場合でも、その空間性再現度の高さは特筆すべきものがあり、センター定位のボーカルがふわりと浮き上がる自然な音場感、スピーカーの外にまで広がるステージの広大さに驚く。音像のリアルさ、音離れの良さ、歪み感のない透明度の高いサウンドは、現代スピーカーならではの高水準なものであり、フラグシップではなくとも、一つの基準となるクオリティを有しているといえるだろう。
■楽器の立ち位置を掴みやすく映画・音楽双方で活躍する(海上)
Bowers & Wilkinsというスピーカーメーカーは、やはり特別な存在だ。1966年の会社設立以来、収益の多くを技術開発に費やし、創業者が歿してからもノーチラスやダイヤモンド・トゥイーターなど革新的な製品/技術を世に問い続け、2015年には約40年採用したケブラーコーンをコンティニアムコーンに変更するという刷新に踏み切った。
多くのオーディオメーカーがリファレンスとして採用しているのは、製品の評価のみならず、音に対する真摯な姿勢への敬意の念があるからだろう。
さて、音元出版の新試聴室 BLACKに、700 S3 Signatureシリーズが導入された。フロア型の702 S3 Signatureとブックシェルフの705 S3 Signature、センターHTM71 S3 Signatureをベースに新技術を追加したスピーカー群は、マルチチャンネル再生システムの主役として日々の試聴に活躍している。
700 S3 Signatureシリーズが選ばれた理由は、前述したB&Wに対する信頼感にくわえて「器用さ」が評価されたからではないか。グリルメッシュの開口率が高められたトゥイーター・オン・トップの威力か、楽器の立ち位置を掴みやすく定位が明瞭、確とした空間表現力を備えている。高さ方向の描写力があるから、映画のように楽曲以外の音も再生するシステムには好適だ。フロア型の702 S3 Signatureには、シアター環境においてフロントスピーカーを担いうる地力がある。
個人的には、700 S3シリーズの音はややカーブしたフロントバッフルに集約されると考えている。音を回折させることで周波数特性の乱れを抑制するからか、音の輪郭に雑味がない。ピアノのアタックからディケイ、サスティーンを経てのリリースまでのつながりがスムーズで、自然だ。この点に注目すれば、設置性に優れるブックシェルフ型705 S3 Signatureは、2ch/ステレオ環境向きともいえるだろう。
新試聴室 BLACKが完成してから数か月経つが、700 S3 Signatureシリーズをリファレンスに据えた試聴システムはすでに堂に入った感がある。その描写能力にくわえ、B&Wというブランドが有する安定感と信頼感が、アンプやプレイヤーなど他のコンポーネントを評価する軸になっていることは間違いない。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)