神山健治監督特別インタビュー:ソニーの新技術「SBMV Extend」で更に美しく進化した「攻殻機動隊S.A.C」シリーズを観る
鈴木桂水氏が語る!「攻殻機動隊S.A.C.」シリーズの魅力
いまさらの感があるが「攻殻機動隊(こうかくきどうたい)STAND ALONE COMPLEX」についてすこし説明しよう。本作は漫画家「士郎正宗」氏のマンガを原作にしたアニメシリーズ。体の一部や頭脳までも電子化、機械化できる未来の話だ。
架空の組織「公安9課」に属する主人公の草薙素子たちが、電脳空間を悪用するテロ組織などとの戦いを描いている。電脳空間と人の意識、記憶と心など語られる、いわゆる「サイバーパンク」ものの草分け的な作品。「ブレードランナー」や「マイノリティリポート」など、フィリップ・K・ディック原作の作品やウィリアム・ギブスンの小説「ニューロマンサー」あたりにピンと来る方ならツボにはまる。
1995年11月に押井守氏が監督した「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」から物語は始まる。映画版は「イノセンス」と続く。GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊は、ウォシャウスキー兄弟の「マトリックス」シリーズへ多大な影響をあたえた作品として語られることが多い。
ペイパービューを含むテレビシリーズは神山健治氏が監督し、「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX(26話)」、「攻殻機動隊S.A.C. 2nd GIG(26話)」、そして長編OVAの「攻殻機動隊S.A.C. Solid State Society 」へ話は進む。
テレビ版は映画版「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」の流れを汲みながら、「イノセンス」とは異なるストーリーが展開される。「イノセンス」では主人公の草薙素子が「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」時の姿で登場しないが、テレビ版では引き続き実体をもって活躍するのが大きな違いだ。
ストーリーは基本的に1話完結だが、シーズンを通して共通の事件が関わるなど、海外ドラマのような伏線を読み解く楽しさにあふれている。
映画版、テレビ版ともに素晴らしい作品で、ハリウッド映画や海外ドラマを遙かに凌ぐ、エンタテインメント性と芯のあるストーリーが楽しめる。筆者は日ごろアニメを見ない人にこそ、おすすめしたい作品だと思っているのだが…肌の露出度の高い主人公の草薙素子のファッションのイメージで、食わず嫌いする人も少なくない。絵柄の好き嫌いはあるだろうが、未見の方にはぜひにと推したい。筆者が薦める順番は「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」→「攻殻機動隊S.A.C. 2nd GIG」→「攻殻機動隊S.A.C. Solid State Society 」→「イノセンス」という順番だ。
「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」のブルーレイボックスはBOX1で前半13話を、そしてBOX2で後半13話を収録した2巻構成のボックスでされており、こちらは「SBMV」による処理でノイズを軽減している。SBMV Extend処理が施された「攻殻機動隊S.A.C. 2nd GIG」と比べると気になる部分もあるが、DVD版に比べると驚くほどスッキリしており、画質は向上している。シリーズ中では第2話の「暴走の証明 TESTATION」が白眉の出来で、何度見ても目頭を熱くしてしまうのは筆者だけではないだろう。
今回インタビューで紹介した「SBMV Extend」は、「攻殻機動隊S.A.C. 2nd GIG」から使用されている。こちらも2巻構成のボックスとして発売される。まだ一部のシーンしか確認できていないが、パッと見て映像がクリアなのに息を飲んでしまう。TVアニメシリーズの「攻殻機動隊S.A.C.」は、映画に近いクオリティで作画されており、凝った効果も多用されている。それがDVD版などでは表現しきれなかったのだが、「SBMV Extend」により、画面をぬぐったようにクォリティがアップしている。市販アニメタイトルが抱えるノイズ問題を見事に軽減しているようだ。今後、全ての作品がこの技術でタイトル化されれば、2回目以降の再生で、ストーリーよりついノイズに目がいってしまううるさがたのストレスも減りそうだ。
「攻殻機動隊S.A.C. 2nd GIG」のストーリーは、前シリーズよりもテーマがハッキリしており、1話完結というよりも連続活劇的な要素が増えている。人と機械、人間の記憶、コンプレックスなど、映画版の「イノセンス」とは別の“切なさ”が盛りだくさんの作品だ。
今回、「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」、「攻殻機動隊S.A.C. 2nd GiG」のブルーレイボックスシリーズには、BD Liveを使った特典が用意されている。全巻揃えることで草薙素子役の田中敦子さん、バトー役の大塚明夫さん、そして神山健治監督によるスペシャルコメンタリーがダウンロードできるようになる。筆者はその収録に立ち会ってきたが、ファン垂涎のかなり“おいしい”情報が収録されるようだ。旬の内容も含まれるようなので、もしアナタが“世界一の攻殻機動隊”のファンを自称するなら、最終巻の販売に合わせてボックスを揃えるとよさそうだ。
本来ならストーリーについてもっと具体的にお話ししたいのだが、それでは作品を初見するときの衝撃が薄くなってしまう。一度ハマると、つい人に薦めたくなる作品であることは間違いない。
◆筆者プロフィール 鈴木桂水 SUZUKI,Keisui
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、使いこなし系のコラムを得意とする。そのほかAV機器の情報雑誌などで執筆中。