「UniQ」はついに11世代目に
KEFのチーフエンジニアWatson氏特別インタビュー −「Qシリーズ」誕生の背景を語る
人気モデル「iQシリーズ」の後を引き継ぐ形で登場したKEFの「Qシリーズ」(関連ニュース)。このたび、英KEF社よりチーフエンジニアであるAndrew Watson氏が来社。Qシリーズの魅力について改めて語ってくれた。
■独自ドライバー「UniQ」は改良を重ねて11世代目に
まずWatson氏は、最新世代となった独自の同軸ドライバー「UniQ」へ言及。1988年に最初のUniQ搭載モデルが登場してから、今回で11世代目となることを説明し、しつこいくらいに何度も改良を重ねてきたと語る。
しかも「ただの改良ではない。とてもエポックメーキングな改良だ」とコメント。3インチ、5インチ、10インチと3種類を用意したことであらゆるシステムをカバーできるようになったことや、トゥイータードライバー口径を従来の19mmから25mmへと拡大したことなどを改めてアピールする。
また、トゥイーターを2ピースで構成していることについて、トゥイーターとウーファーの音響芯が完璧に一致するよう配慮したかったからだと説明。「UniQは同軸スピーカーというのは確かに事実だがそれだけではない。奥行き方向も完全に合っている」と、新UniQの特徴を説明した。
加えて、ネオジウムマグネットを使用していることにも言及。NASAが人工衛星用に採用したネオジウムマグネットを、オーディオ用に利用したのはKEFであることを紹介する。「それ以前から点音源のアイディアはあったのだが、サイズの問題で入れられなかった。ネオジウムであれば従来の1/10ほどのサイズにできることから、UniQが誕生した」とコメントする。
そして、ドームが自己共振を起こさないように一度折り返して補強するスティフンド・アルミドームダイアフラム構造を採用した点についても説明。これにより、ドームが大きくなったのにも関わらず、周波数特性が低域にも高域にも伸びていると語った。
また、従来はトゥイータードームの真後ろにネオジウムマグネットを配していたおり、排圧を吸収するために吸音材を入れていたが、高音質化のために今回から後ろへ空気を逃がすベンテッド構造に変更したと説明。「リファレンスシリーズと同じ考えだ」とコメントし、これにより音の抜けが非常に良くなったとした。
続けて、新たに開発したアルミコーンについて「できるだけ浅く作っている」とコメント。その理由を「ピストニックな動きができる」こと、そして「コーンのへこみが深いと、トゥイーターの高域がディップとして判断してしまい周波数に影響する」と説明。「アルミコーンをできるだけ浅くするというのが今回の命題のひとつだった」と語った。
そして、そのためにコーンを2つ使っていることを紹介。外側をアルミ、内側を紙のコーンにしており、これにより浅い作りを実現。パワーハンドリングを上げて効率の良いウーファーとしたと説明した。
■「シンプル・イズ・ベスト。元がいいものをそのまま聴いてもらいたい」
フロアスタンディング型モデルに採用したドローン・コーン「ABR(Auxiliary Bass Radiator)」システムについても言及。ポートを使わなかった理由について、「低域を大きく再生するスピーカーだと、空気が出入りするたびにノイズとしてポートが鳴ってしまうのを避けたかった」と説明する。
また、「ポートから空気が出るということは、スピーカーのうしろの壁など周囲に影響してしまう。これも避けたかった」と言葉を続け、ポートを用いないABRシステムを採用した理由を説明した。
しかし、「一口にABRと言っても、良いものと悪いものがある」ともコメント。「KEFでは1960年代後半からABRを研究してきており、今回採用を決めたのは非常にスピード感のある、キレのあるABRができたからだ」と語った。
さらに、ABRについてはチューニングにもこだわった点も強調。「チューニング次第で低域がドロドロになることもあるが、KEFはスムーズなロールオフをさせることによって、スピーディーなスピーカーの動きを実現させた」とし、「素材や技術、チューニングによって、過去のABRとはまったく次元の違った低域を作ることができたのは大きな収穫だと思う」と胸を張った。
続いては、キャビネット素材を従来の塩ビから紙のものに変更した点にもコメント。エコに配慮したことに加えて、「塩ビでスピーカーをカバーすると、違う素材による共振周波数によって音が抑えられてしまう。しかし今回は中も外も木(紙)なので、音の抜けが非常に良くなっている」とその理由を説明。「一見すると何でもないようなことだが、相当時間をかけてここまでこられた」とコメントし、「全システムを木にしたのは世界でもまだない。こういった面もKEFの革新性のひとつではないか」と述べた。
クロスオーバーも従来のiQシリーズの24db/octから今回は6db/octへ変更。これは実は自然界にたくさんある音のつながりだとのことで、これによってトゥイーターとウーファーのつながりをよくしようとしたのだという。
また、これによってコンポーネントを少なくできたことも説明。「ただしコンポーネントをケチるのではなく、コンデンサーには高級なフィルムコンデンサーに、コイルも空芯コイルだけにするなどした」と、部材にこだわったとコメント。「今回はシンプル・イズ・ベスト。元がいいものをそのまま聴いて頂きたいと考えた」と述べた。
■“生の音楽の良さを知っている”エンジニアが設計
そして「目指しているのは、どんな音楽でもきちんと再生できるスピーカー。クラシック専用だとか、ロック専用だとかそういったことではない。どんな音源でも原音を忠実に再生するというのがKEFの基本理念だ」とコメント。そうした理念の下に新Qシリーズが作られたことを語った。
なお、最後にKEFのエンジニアは全員が何かしらの楽器を演奏できる点も紹介。自身も14歳からベースを弾いており、現在でも“KEFバンド”のリーダーとして月2回ほど、パブなどで有料ライブを開催していることも明かし「音楽が体に染みこんでいる、生の音楽の良さを知っているというのがエンジニアとしての強み。KEFのエンジニアは皆そういうことをわかって設計している」とも述べた。
■独自ドライバー「UniQ」は改良を重ねて11世代目に
まずWatson氏は、最新世代となった独自の同軸ドライバー「UniQ」へ言及。1988年に最初のUniQ搭載モデルが登場してから、今回で11世代目となることを説明し、しつこいくらいに何度も改良を重ねてきたと語る。
しかも「ただの改良ではない。とてもエポックメーキングな改良だ」とコメント。3インチ、5インチ、10インチと3種類を用意したことであらゆるシステムをカバーできるようになったことや、トゥイータードライバー口径を従来の19mmから25mmへと拡大したことなどを改めてアピールする。
また、トゥイーターを2ピースで構成していることについて、トゥイーターとウーファーの音響芯が完璧に一致するよう配慮したかったからだと説明。「UniQは同軸スピーカーというのは確かに事実だがそれだけではない。奥行き方向も完全に合っている」と、新UniQの特徴を説明した。
加えて、ネオジウムマグネットを使用していることにも言及。NASAが人工衛星用に採用したネオジウムマグネットを、オーディオ用に利用したのはKEFであることを紹介する。「それ以前から点音源のアイディアはあったのだが、サイズの問題で入れられなかった。ネオジウムであれば従来の1/10ほどのサイズにできることから、UniQが誕生した」とコメントする。
そして、ドームが自己共振を起こさないように一度折り返して補強するスティフンド・アルミドームダイアフラム構造を採用した点についても説明。これにより、ドームが大きくなったのにも関わらず、周波数特性が低域にも高域にも伸びていると語った。
また、従来はトゥイータードームの真後ろにネオジウムマグネットを配していたおり、排圧を吸収するために吸音材を入れていたが、高音質化のために今回から後ろへ空気を逃がすベンテッド構造に変更したと説明。「リファレンスシリーズと同じ考えだ」とコメントし、これにより音の抜けが非常に良くなったとした。
続けて、新たに開発したアルミコーンについて「できるだけ浅く作っている」とコメント。その理由を「ピストニックな動きができる」こと、そして「コーンのへこみが深いと、トゥイーターの高域がディップとして判断してしまい周波数に影響する」と説明。「アルミコーンをできるだけ浅くするというのが今回の命題のひとつだった」と語った。
そして、そのためにコーンを2つ使っていることを紹介。外側をアルミ、内側を紙のコーンにしており、これにより浅い作りを実現。パワーハンドリングを上げて効率の良いウーファーとしたと説明した。
■「シンプル・イズ・ベスト。元がいいものをそのまま聴いてもらいたい」
フロアスタンディング型モデルに採用したドローン・コーン「ABR(Auxiliary Bass Radiator)」システムについても言及。ポートを使わなかった理由について、「低域を大きく再生するスピーカーだと、空気が出入りするたびにノイズとしてポートが鳴ってしまうのを避けたかった」と説明する。
また、「ポートから空気が出るということは、スピーカーのうしろの壁など周囲に影響してしまう。これも避けたかった」と言葉を続け、ポートを用いないABRシステムを採用した理由を説明した。
しかし、「一口にABRと言っても、良いものと悪いものがある」ともコメント。「KEFでは1960年代後半からABRを研究してきており、今回採用を決めたのは非常にスピード感のある、キレのあるABRができたからだ」と語った。
さらに、ABRについてはチューニングにもこだわった点も強調。「チューニング次第で低域がドロドロになることもあるが、KEFはスムーズなロールオフをさせることによって、スピーディーなスピーカーの動きを実現させた」とし、「素材や技術、チューニングによって、過去のABRとはまったく次元の違った低域を作ることができたのは大きな収穫だと思う」と胸を張った。
続いては、キャビネット素材を従来の塩ビから紙のものに変更した点にもコメント。エコに配慮したことに加えて、「塩ビでスピーカーをカバーすると、違う素材による共振周波数によって音が抑えられてしまう。しかし今回は中も外も木(紙)なので、音の抜けが非常に良くなっている」とその理由を説明。「一見すると何でもないようなことだが、相当時間をかけてここまでこられた」とコメントし、「全システムを木にしたのは世界でもまだない。こういった面もKEFの革新性のひとつではないか」と述べた。
クロスオーバーも従来のiQシリーズの24db/octから今回は6db/octへ変更。これは実は自然界にたくさんある音のつながりだとのことで、これによってトゥイーターとウーファーのつながりをよくしようとしたのだという。
また、これによってコンポーネントを少なくできたことも説明。「ただしコンポーネントをケチるのではなく、コンデンサーには高級なフィルムコンデンサーに、コイルも空芯コイルだけにするなどした」と、部材にこだわったとコメント。「今回はシンプル・イズ・ベスト。元がいいものをそのまま聴いて頂きたいと考えた」と述べた。
■“生の音楽の良さを知っている”エンジニアが設計
そして「目指しているのは、どんな音楽でもきちんと再生できるスピーカー。クラシック専用だとか、ロック専用だとかそういったことではない。どんな音源でも原音を忠実に再生するというのがKEFの基本理念だ」とコメント。そうした理念の下に新Qシリーズが作られたことを語った。
なお、最後にKEFのエンジニアは全員が何かしらの楽器を演奏できる点も紹介。自身も14歳からベースを弾いており、現在でも“KEFバンド”のリーダーとして月2回ほど、パブなどで有料ライブを開催していることも明かし「音楽が体に染みこんでいる、生の音楽の良さを知っているというのがエンジニアとしての強み。KEFのエンジニアは皆そういうことをわかって設計している」とも述べた。