「ビジュアルグランプリ2011 SUMMER・ユニバーサルデザイン賞」受賞モデル開発者に聞く
心地良く付き合える商品開発に全力をかける − 三菱電機の「ユーザー目線」のDNA
デジタル化で問われる商品企画
いち早く時代へ向き合った三菱
−− AV機器の進化のスピードが早まっています。それに伴って本来は老若男女、すべての人が使えることが当たり前だったはずの観点から、どこか目線がずれてしまっているところも否めません。
栗崎 私は82年に入社し、当時、“ 高画質・高音質の三菱“の真只中で、AVマニア垂涎の的だった録画機の開発に携わりました。クオリティを求めることで、お客様と対峙することができた時代で、NTSCという限られた枠組みの中で、いかにしていい画、いい音を出すかに苦心しましたし、また、そこで優劣を付けることができました。
−− ところがデジタル化が進み、求められる視点が変わってきました。
栗崎 今でも覚えているのは、現在、家電事業部長をつとめている荒木が06年に京都製作所の営業部長として赴任してきた時に、「リモコンがわかりにくい。何でリモコンのボタンの数を減らさないのか」と指摘されたことです。ボタンの数を減らすことにはもちろん取り組んでいましたし、通常のリモコンと簡単リモコンのダブルリモコンも採用していました。しかし、録画機のリモコンの本質は何かといえば、録画予約をすること、そして、見ることなのですね。そのことを指摘され、ハッとする思いでした。
−− その視点から行き着いたのが、現在の、見やすい大きなボタンを採用した直観的に操作できるユニバーサルリモコンですね。「らく楽アシスト」の象徴とも言えますが、そもそも、「らく楽アシスト」のコンセプトは、どこからスタートしたものなのですか。
栗崎 「らく楽アシスト」の考え方そのものは、三菱電機のユニバーサルデザインとエコロジーを強化、推進する家電群戦略から始まったものです。AV商品もここまでやり続けてきて、リモコンをはじめ、「やってきてよかったな」と実感することが数多くありますね。
−− いまのAV機器は、知識を積み上げてきている人にしかわからないものになってしまっているところがあります。
栗崎 深い知識がなくても機器がサポートすることにより操作することができる、それが「らく楽アシスト」です。テレビもレコーダーも、生活の中には欠かせないひとつのツールですから、一番に求められているのは誰にでも簡単に使いこなせることです。まさに、今の時代に必須のコンセプトになると思います。
−− そうしたアイデアをいち早く出し、具現化できる。三菱の強みはどこにあるのでしょうか。
栗崎 組織としてはまず、テレビ製造部と、録画機やレコーダーのストレージ製造部が、07年10月にAV機器製造部として一本化したことが、いろいろな面でプラスになって働いています。また、次世代の商品企画においては、研究所があげてきたシーズをどのように商品にしていくのか。本社や研究所のメンバーも一緒になって、色々なコンセプトを出し合います。
一部の研究所はAV機器製造部と同じ京都製作所の敷地内にありますから、コミュニケーションも大変うまくとれています。試作された商品はお客様にも実際に触っていただき、その反応をエンジニア自らが確かめ、軌道修正を行っていきます。ベースの技術がどうアプリケーションされていくのか。研究所のメンバーも、自分たちの出したシーズの方向性を確認することができる仕組みになっています。