大画面を“持ち歩く”インパクト
エプソン開発者が語る − シースルーモバイルビューアー“MOVERIO”誕生秘話
ユニークなデザインの秘密 ー “MOVERIO”は今後どう進化していくのか
林:“MOVERIO”はデザインもたいへんユニークな製品ですが、本機ではどのようにデザインを決めていったのでしょうか。
津田:本体のデザインについては、ヨーロッパのデザインハウスと社内のデザイナーと協業しながらコンセプトを色々と立ててきました。一貫していたのは「OTG(Over the Glasses)」、つまりメガネの上からでもかけられるデザインにしたいという考え方でした。通常のメガネのようなスタイルとサイズにしてしまうと、普段メガネをかけている方々が使いづらいだろうと考えて、ゴーグルのような装着スタイルが実現できれば、メガネのある人/ない人ともに違和感なく使ってもらえるということで、今回のデザインになりました。
海上:“鼻パッド”は交換用も含めて3つ同梱されていますが、こちらの形を決めるのに苦労はありましたか。
津田:“鼻パッド”については日米欧の各地域でサンプルをとって、全部で7種類ぐらい試作した結果、現在の3種類を採用しました。日本人と欧米人は、顔の横幅がだいぶ違いましたので、本体の寸法設定と含めて最適な“鼻パッド”を選ぶのはとても難しかったです。
林:ディスプレイ部分は汚れや傷などのダメージに対しては十分な強度を持っていますか。
津田:ディスプレイ部分については、当社でメガネレンズビジネスを展開している事業部との協業により、メガネレンズ並みの表面強度を有するハードコートを施しています。通常の使い方であれば、普通にハンカチなどで拭いていただいても大丈夫です。
海上:採用されているCPUはARM Coretex-A9のデュアルコアでしょうか。内蔵メモリーの容量を1GBとした理由について教えて下さい。
津田:CPUの仕様についてはご指摘の通りです。内蔵メモリーの容量については、“MOVERIO”を購入いただく方たちがどの程度のボリュームが必要なのか、なかなか想定することが出来ないまま検討を重ねてきました。最終的にはある程度の容量を内蔵しておけば、あとはmicroSDカードを使っていただくのが効率的だろうと考えて、今回の仕様に固まりました。
海上:本機を第一号機として、今後“MOVERIO”をどのように進化させていきたいと考えていますか。DLNA対応のDTCP-IPクライアントをオプションとして投入する計画などはありますか。
馬場:やはり「ワイヤレス」にはこだわるべきだと考えています。これから盛り込んでいく機能についても「ワイヤレスで楽しめること」を色々と加えて行きたいと考えています。DLNA対応につきましては、お客様からご要望をいただいていることは認識しておりますので、ワイヤレスであることによるモビリティを損ねないまま、どのように取り込んで行けるかを含めて、様々に検討していきたいと考えています。
ー ありがとうございました。
林 正儀 プロフィール
工学院大学で電子工学を専攻。その後、電機メーカー勤務を経て、技術系高校の教師というキャリアを持つ。教鞭をとっている経験から、初心者向けに難しい話題をやさしく説明するテクニックには特に定評がある。
海上 忍 プロフィール
ITジャーナリスト・コラムニスト。13歳のときにはすでに、自ら開発したマシン語のパソコンソフトを雑誌に投稿するなどしていた、おそらく最初期のデジタルネイティブ世代。コンピュータテクノロジ方面全般での豊富な執筆経験を持ち、Mac OS XやLinux、デジタル家電関連の著作は累計30冊におよぶ。
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