[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第73回】「ニセレゾ」疑惑の真相とは − K2HDのハイレゾは本当にハイレゾか?
■e-onkyoでは、納品されるハイレゾ音源データの波形を厳しくチェックしている
−− ところで、本日はせっかくe-onkyo musicの黒澤さんにもご同席いただいているので、ひとつご質問させて頂きたいことがあります。e-onkyo musicで販売されているハイレゾ音源でK2HDなり何なりの表記がないものは、マスター音源がそもそもハイレゾであるか、もしくはアナログマスターから直接にハイレゾでデジタル化されたものと考えてよいのでしょうか?
黒澤さん: レコード会社さんにはそのようにお願いしています。また納品されたデータの波形を弊社の方でチェックして、例えば「これは96kHzの形で納品されているけれど、96kHzで録音された音源の波形としてはおかしい」と思えるものがあれば、それは確認を入れています。
−− それはつまり、この記事で言うところの「単なるアップサンプリング」をされた音源かもと思われる場合には、ということでしょうか?
黒澤さん: そうです。e-onkyo musicとしては44.1kHzや48kHzでも、24bitであればハイレゾだと考えています。ですので48kHz/24bitで制作された作品であればそれをそのまま配信させていただきたいという気持ちなのですが…。
−− それが伝わっていない場合もある?
黒澤さん: 「ハイレゾ」「96k」「192k」という言葉が先行してしまって、それに合わせた形にアップサンプリングしておこうと考えてしまう場合があるようです。ですので、できる限り弊社でチェックして、そういった音源と思われるものについては、弊社の考えを説明して元の48kHz/24bitなりのデータをいただき直す場合もあります。
ひとつ補足しておくと、48kHz/24bitのハイレゾ音源をハイレゾ配信にあたって調整(リマスタリング)をする場合に、その作業を96kHz/32bit等の上位フォーマットで行う手法もある。音量調整やエフェクトの処理精度を高める狙いからかと思う。その場合はあえて48kHzに戻す意義もないという判断からか、96kHz/24bitで配信する例もある。
例えばランティス制作による麻生夏子さん「エウレカベイビー」等がそうだが、ランティスもその場合はそういった制作プロセスの音源であることを明記してくれている。気にかかる方は購入前にチェック可能だ。
−− 他には、CDマスターからアナログで出してアウトボードのエフェクターを通して、それを改めてハイレゾでデジタル化するという手法もあると見聞きすることがあります。リマスタリング手法のひとつとしては有効と思いますが、それを断りなく「ハイレゾ」と言われると違和感を覚える方も多いはずです。
黒澤さん: そういったものも含めて録音からマスタリング、ハイレゾ化のプロセスについて、何か適当な名称やロゴなどで明示できないものかなと考えてはいます。色々と難しいのですが。
−− ハイレゾ黎明期であるいまの時点でそういうところをしっかりしておくことは重要ですよね。いまの時点でハイレゾに興味を持ってくれている先進的で熱心なユーザーからの信頼を得ることはまず大切ですし、それに今後ハイレゾがいまよりも普及してカタログ数が増えてきたりしたら、そのときになってから引き締めるのは難しいでしょうから。e-onkyo musicさんでそういったチェックをしているというのをお聞きできて、僕もユーザーの一人として安心できました。みなさん、本日はご協力ありがとうございました。
…というわけで今回は、K2HDについてのインタビューを中心とした記事をお届けした。e-onkyo musicにおけるハイレゾのクオリティコントロールについての情報もポイントだ。最初に述べたように、K2HDとはどのような技術であるかを正しく理解した上でなら、それを受け入れるかやっぱりそれは違うとするかは、各人の考え方次第だ。
しかし実際にお話を聞いて改めて実感できたのは、その開発や活用に携わる技術者やエンジニアは、ただ作品に対してプラスになると思っているからこそ、それを選択しているということだ。オーディファンや音楽ファンが音楽をより良い音で聴きたいと願っているように、技術者やエンジニアも音楽をよりよい音で届けたいと願っている。立場や意見の違いが生まれることもあるかもしれないが、結局は、お互いに音楽好きなのだということだ。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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