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Thunderbolt対応DAC「TAC-2」に迫る

ZOOM社長に訊く“オーディオ市場に参入した理由”とは

公開日 2014/04/28 10:55 聞き手:岩井 喬 構成:ファイル・ウェブ編集部
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■楽器関連製品を手がけてきたZOOMだからこその強み

ーー オーディオ向けの製品は初となりますが、ZOOMならではの強みがあるかと思います。それはどのような点でしょうか。

飯島氏 我々はギター用のマルチエフェクターやマルチトラックレコーダーを長年手がけてきましたので、デジタル信号処理やDSP技術は当社のコア技術と言えます。何より、これらの技術を活かした製品作りが強みです。


ZOOMは楽器メーカーならではの感情に訴える音作りができると話す飯島氏
それから、単にS/Nが良くてノイズが少なく、周波数特性が良いというのはどんなメーカーでもできることでしょう。一方でZOOMは楽器を作っているので、感情に訴える音作りができます。「ああ気持ちいい」とか「心地良いなあ」というようなエモーショナルなサウンドです。

「TAC-2」においても、電気的な数値だけを見るのではなく、実際に聴いて、実際の音と再生した音がどう違うのか、どこを替えればどう音がかわるのか、といった楽器作りでいう“ボイシング”に時間をかけました。測定して目標の数値が出たら終わり、ではないのです。

ーー 楽器作りのノウハウが、技術面にとどまらない音作りに活かされているということですね。

飯島氏 そうですね。それから、デジタル信号処理は大事ですが、最終的に音になるのはアナログの部分です。楽器も同様で、アナログ技術の蓄積にも自信があります。

当社のエンジニアのトップであるCTO(最高技術責任者)は、私と一緒にKORG社からスピンアウトしたエンジニアで、当時は一緒にシンセサイザーを開発しており、卓越したアナログ回路のスキルを持っています。どうやったら簡単な回路で良い音が出るのか、安定した動作ができるのか、その辺りのノウハウも多く持っています。

スマートフォンやタブレットなどの電子製品と違い、楽器やオーディオ機器など実際に「音にする」ことが必要な製品については、アナログとデジタルの融合が大事ですよね。ZOOMはその二つの面で強みがあります。

■ZOOMにしかできない音作り

ーー ボイシングという話が出ましたが、音作りという点にはどのような考えをお持ちでしょうか。

飯島氏 楽器の音作りは複雑です。ある意味でピュアオーディオとは対極にあります。フェンダーのアンプとか、ギブソンのギターとか、音が良いとか悪いとかではなく「こういう好みの音」という世界です。歪んでいるのがいい、ピッチが揺れているのがいい、なんていうのはオーディオでは考えられないことでしょう。

聞き手となった岩井喬氏に、飯島氏は楽器とオーディオの音作りを説明する

対してピュアオーディオはいかにソースに忠実に再生するのかという世界です。楽器とピュアオーディオの重なり合う場所がどこにあるのか。「TAC-2」はピュアオーディオ寄りの製品ですが、楽器としても評価される音に落とし込んでいくことが大事だと考えました。

ーー 最後に、どのような方々に「TAC-2」を使ってほしいのか、教えてください。

飯島氏 「TAC-2」の開発と時期を同じくして、私も自宅に本格的なオーディオシステムを導入しました。そこで久々に音楽をゆっくりと聴いてみて、学生の頃や楽器を始めた高校生の頃に味わったような、本当に音楽を楽しみたいという気持ちが蘇ってきました。学校を卒業して仕事を始め、忙しい中でレコードをかけることもなくなり、圧縮音源が増え、ヘッドホンで“ながら聴き”する以外に音楽を聴く機会もなくなっていたなかで、この感覚はとても新鮮でした。

TAC-2を使えば、シンプルに、そして192kHz/24bitなどの最新のフォーマットをハイクオリティで楽しむことができます。これから、じっくりと音楽を楽しみたいという方にはぜひ使っていただきたい。目を閉じて好きな音楽に陶酔したいという人は増えてきてると思いますし、増やしていきたい。そして、この「TAC-2」はその一助になるはずだと考えています。

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