<山本敦のAV進化論 第57回>ソニーモバイルのキーマン2人にインタビュー
ウォークマンのエッセンスを完全注入!進化したXperia Z4の音楽再生機能に迫る
「Zシリーズのオーディオの進化が始まったのは、2014年春に発売したXperia Z2からのことです。本機で初めてUSB経由のハイレゾオーディオ出力に対応したほか、ステレオスピーカーやデジタルノイズキャンセリングの搭載など、スマホでいい音を楽しめる環境づくりを徹底して整えました。続いて昨年末に発売したXperia Z3ではイヤホン端子から最大96kHz/24bitまでのハイレゾ出力をサポートしました。Xpreia Z4では既に触れていただいた要素の他に、Bluetoothのオーディオクオリティをさらに高める新コーデックのLDACにXperiaとして初めて対応しています」(田原氏)
ソニーおすすめのエフェクト機能が簡単に設定できる「ClearAudio+」はXperia Z1から搭載がはじまったものだが、これもXperia Z2の時点でチューニングを大きく変えた。マイケル・ジャクソンのサウンドディレクションも担当していた著名音楽プロデューサーのL.A.・リード氏が音質決定に参加して、ニューヨークのスタジオで入念な音づくりが行われた。以降のXperia Zシリーズはこれを継承している。なお同機能はハイレゾ再生の時は無効になる。ハイレゾに関しては原音に何も手を加えず、忠実に再生することがより大切という考え方によるものだからと田原氏はその理由を説明する。
■スマホならではの“いい音”とは/Xperiaならではの高音質技術
Xperia Zシリーズの音づくりは、田原氏をはじめとするソニーモバイルの開発スタッフが実装レベルでの作業を取りまとめているが、技術面のブラッシュアップについてはソニーのウォークマンをはじめ、オーディオ部門のエンジニアも一体になって開発が行われている。「ハイレゾ再生の音質評価はソニーのオーディオのチームの知見をいただきながら一緒に評価を重ねました」と伊藤氏は舞台裏を明かす。もちろんそこにはウォークマンの商品企画を担当してきた伊藤氏の経験も活かされているのだろう。
今回発売されるXperia Z4をはじめ、シリーズの音には共通したコンセプトがあると田原氏は語る。「スマホは日常的に使うデジタル機器であり、オーディオ専用プレーヤーと比べてユーザー層も広いので、音質はどんな音楽のジャンルにも合い、長時間聴いても聴き疲れないよう全体の心地よさを重視してチューニングをしています」
また通信機器であるスマホならではの苦労として、音楽再生の音質にとどまらず、通話の音質やマイク性能にも気を配らなければならない。「ソニーがつくるスマホなんだから、あらゆる音質が良くなければならないと考えています。一つ一つがユーザー体験を高める大切な要素です。これまでにも重視してきましたが、Z4ではさらにレベルアップを図りました」(田原氏)
Xperia Z4と前機種のZ3を比べると、本体は約7.3mmから約6.9mmへと薄くなり、質量も約152gから約144gに軽量化されている。最近のスマホ・タブレットは薄くて軽いことが当たり前のようになっているので、ユーザーの側としては「ああ、そうなのか」と何気なく聞き流してしまいそうになるが、オーディオの再生クオリティをキープ、あるいは進化させながら本体を薄く・軽くすることは、1mm以下のせめぎ合いになってくればそこに相当な困難があるはずだ。
「Z3からZ4では、本体内部に配置するスピーカーの部品サイズをさらに小さくしています。Z3では3.1mmでしたが、Z4では2.5mmに薄型化しています。スピーカーの音質は振動版のストローク幅に左右されるところも大きいので、本来はユニットが薄くなると力強くいい音を出すのが難しくなりますが、そこはソニーが積み上げてきた音質チューニングのノウハウをフルに活かして、音質に妥協することなく磨き上げています」(田原氏)
筐体のデザインが変わることで音に影響は出るのだろうか。今回Xperia Z4では内蔵スピーカーの配置にも工夫がこらされている。Z3の内蔵スピーカーは、フロントパネルのガラスに小さな穴を開けてそこから音を出していたが、Z4ではZ2のレイアウトに立ち返り、フレームとガラスとの隙間に細いスリットを設けて、そこから音を出すことでクリアなサウンドを実現している。
■Xperiaならではの高音質技術も生まれた
ここまでの話を聞いていると、ウォークマンから株分けを受けたオーディオ技術は、すでにXperiaの開発土壌にしっかりと根付いて新しい茎と葉を伸ばしてきたことがわかる。そこからはソニーモバイル独自の実も育っている。その一つが、今回Xperia Z4とXperia Z4 Tabletに新しく採用された「ヘッドホン/イヤホン自動最適化」の機能だ。
次ページ高音質Bluetoothコーデック「LDAC」対応の苦労話