<山本敦のAV進化論 第57回>ソニーモバイルのキーマン2人にインタビュー
ウォークマンのエッセンスを完全注入!進化したXperia Z4の音楽再生機能に迫る
本機能はイヤホン端子に接続したヘッドホン・イヤホンの特性を自動解析して、それぞれの環境に最適な音質を提供するというものだ。ケーブルで有線接続ができるほぼ全てのイヤホン・ヘッドホンが対象になる。
本体設定のサウンドエフェクト内にある「ヘッドホン設定」から、自動最適化を「ON」にすると機能が有効になり、端子にイヤホンなどを接続して音楽再生を始めると、1〜2分ほど接続されている機器の特性が解析される。再生する音楽によって解析にかかる時間は多少前後するが、同じイヤホンであれば端子から抜き差しをしても解析後の設定を保持しているので、何度も最適化をする手間は省ける。
本機能ではどういうことをしているのかと言えば、端子に接続されたヘッドホン・イヤホンの特性を周波数軸でインピーダンス解析を行うことで把握して、ソニーが蓄積してきたヘッドホン・イヤホンの理想的な再生データに基づいてイコライザーカーブの設定を合わせ込む処理が行われている。
「ハイクラスのヘッドホンやイヤホンについては、元々理想的な音質にチューニングされているものが多いので、当機能の効果はむしろエントリークラスの製品でより強く実感できると思います。機能を設けた狙いとしては、スマホでもいい音が聴けるということをわかりやすく、様々なユーザーの方々に実感してもらいたいと考えたからです」という伊藤氏。別途アプリを追加しなくても、本体内蔵の機能として簡単に使えるところがよい。
エントリークラスのイヤホンで試聴してみたところ、確かに本機能の効果はよくわかる。今後は同じような体験をハイエンドのヘッドホン・イヤホンでも味わえるような「自動音場補正機能」を付けても面白いのではないだろうか。例えばサムスンのGALAXYシリーズに搭載されている「Adapt Sound」のように、ユーザーによって異なる音の聞こえ方に合わせて音質を簡単に最適化できる機能もある。マニュアルのイコライザーをいじりながら好みの音を徹底的に追い込むのも楽しいが、音質のカスタマイズがより手軽にできて、様々なユーザーが楽しめる機能があればXperiaらしさも深まると思う。
ソニーのノウハウをベースに、Xperiaの土壌で育ってきたオリジナルの技術には、ほかにも写真撮影では被写体が食べ物だった場合に自動で“おいしそうな写真”に仕上げてくれる「料理モード」などもある。
「スマホの場合はユーザー層の裾野が広いので、こういったソニーの技術資産を活かした新しいアイデアが生まれました。きれいな写真が撮れて、そこから広がるコミュニケーションをより豊かにできる機能です」と、伊藤氏はソニーの技術がXperiaに組み込まれて、独自の進化を遂げてきたことを強調する。
LDACに対応したこともXperia Z4の注目すべきハイライトだ。LDACの特徴については、当連載で開発に携わったエンジニアへのインタビューも行っているのでここでは詳しく触れないが、簡単に言うとBluetoothによるワイヤレスサウンドでも、イヤホン・ヘッドホンを有線接続して聴くハイレゾ再生に迫る高音質が楽しめるソニー独自の新コーデックだ。
LDACをスマホに組み込むうえの苦労はあったのだろうか。田原氏は答える。「先にLDACに対応するウォークマンがソニーから発売されていますが、Xperiaではスマホならではの使われ方を想定して、独自に検証をする必要がありました。音質や接続性についてはウォークマンと変わらないクオリティが確保できるよう、フィールドテストを繰り返しながら作り込みました。通信機器ならではの電波干渉についてもしっかりとクリアできています。今期のソニーモバイルの製品としてはXperia Z4、Xperia Z4 Tabletが新しくLDACに対応していますが、開発をはじめた時期には検証できるスピーカーやヘッドホンがありませんでした。サポートする機器が完成してから、それを受け取って検証を始めて、何とか無事に実装することができました」
なお、ウォークマン「NW-ZX2」ではLDAC対応機器をペアリングすると、画面の左上に一瞬「LDACで接続しました」と表示されるが、ワイヤレス接続のステータスがわかりにくく、やや不便に感じられた。Xperia Z4ではポップアップの通知にLDACで接続中であることが表示されるところがスマホらしく気が利いている。BluetoothコーデックはLDACのほか、aptXとSBCにも対応しているが、LDAC対応のスピーカーやヘッドホンを接続した場合はLDAC接続に限定されるため、他のコーデックの音質を同一の機器を使って聴き比べることが残念ながらできない。
■専用アクセサリーや配信サービスはどうなる?
2013年の春に発表されたXperia Z以来、半年おきにシリーズの新モデルが発表されてきた。今年は過去2年間の周期に少し遅れるタイミングでXperia Z4が発表されることになったが、秋にIFAが開催される頃にはまた次のZの発表もあるのだろうか。さすがにその質問に対する回答を今回のインタビューで得ることはできなかったが、ソニーのXperiaはIFAの開催地であるドイツ・ベルリンをはじめヨーロッパでとても人気が高いシリーズなので、何かしら大きな発表は期待したいところだ。
次ページXperiaと音楽コンテンツサービスとの連携は今後どうなる?