<山本敦のAV進化論 第63回>
「AWA」ロングインタビュー。AppleやLINEと競うための “秘伝のタレ” とは?
なおストリーミング再生の音質について、AWAの場合は64kbps/96kbps/128kbpsの3段階のほか、Wi-Fi接続時に自動で320kbpsの音質を選ぶ4段階の設定が用意されている。前回の記事でLINE MUSICの担当者にも訊ねた「音づくりへの工夫」について、AWAにも同じ質問をぶつけてみた。
「ファイルのエンコードはエイベックスの研究チームと連携して行っています。現場ではドルビーのエンコーディングツールを使っていますが、特に音質については“ナチュラルで色づけのない、原音に忠実な音質”を目指しています。膨大なアーカイブからランダムに音楽をストリーミング再生できるサービスならではの工夫としては、何百万曲のアーカイブはそれぞれにボリュームレベルにバラツキがありますので、エンコーディングの段階でボリュームを調整して揃えています。(ボリューム調整作業によって)曲によっては迫力が失われてしまうものもあるので難しいところではありますが、AWAの中ではボリュームを気にせず快適に使えることを優先しました」。
ほかにもAWAではストリーミング再生時の通信容量を低く抑える独自の技術があるという。その詳細は“秘伝のタレ”であるとのことで教えてもらえなかったが、他サービスにもラインナップされている同じ楽曲を、同一条件下で再生すると、通信時の消費データ量が少なくて済むという。試しに手元のiPhone 5sを使って、AWAとLINE MUSICとで比較してみた。いずれもLTE通信環境で、音質は64kbpsの最低音質を選んだ。どちらのサービスでも配信されている、マイケル・ジャクソンのアルバム「Off The Wall」からタイトル曲の『Off The Wall』(4分05秒)を1曲まるごと再生した後で、アプリ「Dataman Next」で消費したデータ量を計測しところ、結果はAWAの「4.4MB」に対して、LINE MUSICでは「16.5MB」と確かに差が付いた。念のためもう一曲、きゃりーぱみゅぱみゅの「にんじゃりばんばん」(シングル版 4分26秒)も再生してみたが、やはりAWAの「3.4MB」に対して、LINE MUSICは「16.3MB」となり、AWAではデータ通信容量が低く抑えられることがわかった。
■ユーザーのプレイリスト公開を促進する仕組みも
オフライン再生に続き、9月から「PC対応」もAWAのロードマップに組み入れられている。Win/Macともにネイティブアプリとして提供されるようだ。ローンチ当初は対応しない見込みだが、ゆくゆくはPC内に音源をキャッシュできるような仕組みも検討しているとのこと。1アカウントで同時に再生できるデバイスは1台に限られるところは、Apple MusicやLINE MUSICと同じだ。
ほかにもこの日、小野氏は将来のプランとしてマルチデバイス対応への展開についても言及してくれた。特に車載端末については、グーグルの「Android Auto」やアップルの「CarPlay」プラットフォームがローンチされるタイミングに合わせられるよう鋭意開発中だという。小野氏は「スマホでプレイリストを作って、ドライブ中にカーナビで流したり、生活の動線上でスムーズにAWAが楽しめる環境をつくりたい」とした。
ほかにもAWAの強みであるプレイリスト機能やレコメンド機能を強化するため、例えば公開されたプレイリストを、現在ある「TOP100」よりもさらに細かく音楽ジャンルごとにランキング付けし、ユーザーの参加を促進する仕組みなども検討されているようだ。
なお、楽曲のダウンロード購入との連携については今のところ考えていないという。小野氏は「音楽配信のユーザー体験を、よりシンプルに感じてもらいたいからです。ダウンロード購入した曲と混在してしまうとサービスが複雑になるから」と理由を説明する。
AWAのコンセプトは「出会いと再会」。昔よく聴いていた音楽や、知らなかったけれど好きになれそうな音楽とも新しく出会うことができ、音楽の器を広げられることが定額制音楽配信サービスの醍醐味だが、そこにユーザー参加型のプレイリスト機能を組み込むことでAWAは独自性を打ち出している。今後の機能拡張やアーカイブの拡大によってAWAらしさがより発揮されることになるのか。動向が楽しみだ。