<山本敦のAV進化論 第63回>
「AWA」ロングインタビュー。AppleやLINEと競うための “秘伝のタレ” とは?
プレーヤー画面ではジャケット写真を大きく使い、操作ボタンも大きくシンプルに配置している。グラフィックスをふんだんに使いながら、表示や操作がもたつくこともなく、操作感はとてもスムーズだ。
小野氏がキーポイントに上げるのは、スマホの大画面化に合わせて、大半の操作をジェスチャーで動かせるようにした点。たとえばiOS版アプリの場合、プレイリストを選択すると、ジャケット画像が上にせり上がってきて、横からプレイリストの詳細テキストがカットインしてくる。画面の左端を右に向かって軽くフリックするエッジングバックのジェスチャーが「戻る」の操作になっている。
プレーヤー画面では、ジャケット写真を掴んで下に向かってスワイプするとミニプレーヤーに格納され、メイン画面はHomeに戻る。画面をゆっくりスワイプすると、ミニプレーヤーへの縮小表示も合わせてゆっくりと動く。「これは世界的に良いユーザーインターフェースであると言われるトレンドが“ゆっくりとフワフワ動く”ものとされているので、これに合わせました。使い込むほどに、指の動きに追随するインターフェースが自然と心地良く感じられるようになって欲しい」と小野氏は語る。
ユーザーインターフェースの設計と開発はすべてAWAのスタッフが自社で行っている。「エイベックスではこれまでキャリア向けの音楽や動画配信のサービスを外部パートナーと提携して使ってきましたが、AWAではこの方法を改め、社内で 作り込むことでユーザーが望む機能をきめ細かく、素速く追加できる環境をつくりたいという思いが、松浦と藤田にはありました。ジョイントベンチャーの持ち分比率を50:50としているのも、コンテンツもアプリもフェアにつくる環境を構築することで、両社が対等の立場でサービスに対する意見を出し合いながら発展していくためです」。
■楽曲のラインナップにも「AWAらしさ」がある
アプリの使い勝手のよさも大事だが、定額制音楽配信サービスにとって何と言っても大事なのは、アーカイブの楽曲数であったり、そのプラットフォームならではの個性的な楽曲が揃っているかというポイントだ。楽曲数についてはこれから続々と増えていくことを前置きした上で、小野氏は楽曲の品揃えに「AWAらしさ」があるとアピールする。
「楽曲数を増やすことは目下最大の課題としてチーム全体で取り組んでいます。ただ、現時点でもアーカイブは“AWAらしい”品揃えになっていると思います。例えば会長の松浦がダンスミュージックに強く、社長の藤田もヒップホップが好きで業界に顔が利くので、インディーズレーベルにもご参加いただいていることから、必然的にその2つのジャンルは強くなる傾向にあります。“三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE”や“AKB48”など、人気のメジャーアーティストは基本として揃えていますが、AWAの特徴はEDMの層が厚いところにあります。例えば他サービスではランキング上位に出てこないアーティストがトップランキングに並んでいるところにも、それが表れています」。
AWAでは今後、8月中にはオフライン再生機能の導入を予定しているという。通信容量制限を気にせず、音楽を“聴き放題”で楽しみたいという声が多かったからだという。「通信容量が抑えられる反面、今度はキャッシュしたデータがスマホのストレージ容量を使ってしまうという課題も出てくると思いますが、今はとにかく両方を用意しておくことが大事だと考えて、オフライン再生機能を追加します」と小野氏。オフライン再生用にキャッシュされる楽曲ファイルはDRM付きのもので、AWA以外のアプリでは再生できなくする。
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