レーベル4社を直撃
<BUCK-TICK歴代アルバム全ハイレゾ化記念>製作陣が語る、B-T名曲ハイレゾ版の聴き所とは?
▼ビクターインビテーション時代作品
(1987〜1996年)
『SEVENTH HEAVEN』
『TABOO』
『惡の華(1990年オリジナル版)』(※今年2月に先行配信)
『惡の華(2015年ミックス版)』(※今年2月に先行配信)
『HURRY UP MODE(1990MIX)』
『狂った太陽』
『殺シノ調ベ 〜This is NOT Greatest Hits』
『darker than darkness -style 93-』
『Six/Nine』
『CATALOGUE 1987-1995』
『COSMOS』
<インタビュー> ビクターエンタテインメント Getting Better Records 制作グループゼネラルマネージャー/プロデューサー 横田直樹氏 |
−− というわけで、まずはBUCK-TICKがメジャーデビュー後約10年在籍したビクター時代の作品のハイレゾ化について、引き続き横田さんにお話を伺っていきたいと思います。一般にBUCK-TICKのアルバムというと、やはりビクター時代の『TABOO』や『惡の華』を真っ先に思い出す方は多いでしょうし、さらに初期の記念碑的作品である『狂った太陽』や、他に類を見ない傑作『Six/Nine』もあります。
ずっとBUCK-TICKの音楽を聴き続けてきたリスナーにとっては、ビクター時代のアルバムは特にCDの音に馴染みがある作品群だと思いますし、「ハイレゾ版はどんな音になるんだろう?」と興味を持つ方も多いと思います。今回のハイレゾ版制作にあたっては、どのように進められたのでしょうか?
横田氏: 今回はビクタースタジオが開発したK2HDマスタリングを用い、2002年のデジタルリマスター版をマスターとして採用しました。これらのマスターは2002年当時にBUCK-TICKのデビュー以来の担当ディレクターであった田中淳一さんが、彼らのメジャーデビュー15周年に際して全アルバムのデジタルリマスタリング盤を企画し、1991年ごろの作品からBUCK-TICKのレコーディングエンジニアとして定着した比留間整さんを監修役に迎えてリイシューされたときのものです。
−− アナログマスターではなく、あえて2002年のデジタルリマスター版を採用されたんですね。
横田氏: はい。このときのプロジェクトでは日本屈指のマスタリングエンジニア4名が起用され、それぞれのミックスマスターにさかのぼったリマスタリングが行われましたが、たいへん苦労された甲斐もあって素晴らしいリマスタリング作品になっています(※このときのリマスタリングエンジニアは小島康太郎氏、山崎和重氏、小泉由香氏、小鐡徹氏)。
−− 完成度の高いリマスター盤として評価も高いシリーズですよね。あえてお聞きしたいのですが、元のアナログマスターではなくこちらを採用した決定打は何だったのでしょうか?
横田氏: 今回のハイレゾ化にあたり、1987年以降のビクター時代のマスターテープを改めて調べたところ、録音から四半世紀を経過した磁気テープの状態が一部、不安定な状態であり、再生作業にリスクを伴うことがわかったんです。マスターテープは、もちろん最適な環境の下で保管されているんですが、それでも一定の年数を過ぎると、経年変化は免れないようです。どういうことかというと、イチかバチかで再生してみて、うまく再生できる可能性もありますが、場合によっては磁性体がはがれ落ちたり、テープが破損したり、というリスクも伴うわけです。ですからこの段階で、大きなリスクを冒してまですべてのマスターを再生するという手段はいったん保留しました。
そのような精査を経て、今回のハイレゾ化でいきついたのが「2002年マスター」でした。ビクターには、初期BUCK-TICKのオリジナル制作陣が監修を行った素晴らしいデジタルリマスター群があり、しかも、デビューから最新作まで、数多くのBUCK-TICK作品を生み出したビクタースタジオには、K2HDマスタリングという誇るべきハイレゾ化技術が整っているわけです(ビクターのK2HD技術について)。
−− それを伺うと、過去作品のハイレゾ化実現というのは、奇跡的なことだというのが実感できます。
横田氏: この時期の作品群を私はリアルタイムで聴いていましたが、とにかく一作一作、新しいことにチャレンジすることが当時から大好きなアーティストでした。世の中全体はまだ現在のようなデジタル社会になる前の段階でしたが、BUCK-TICKはデジタルなアプローチをいち早く音楽に取り込んだ先駆者といえるロックバンドでした。
−− プロデューサーの横田さん自身が、この時期のBUCK-TICKの音楽をリアルタイムで聴いていたリスナーの1人であったということなんですね!インダストリアル系サウンドへ早期から取り組んでいたこともわかりますし、現在に至るまで各時代の音楽的なトレンドを取り入れた作品づくりを行っているバンドだと感じます。
横田氏: そうした彼らの作品づくりの歩みからみても、この「2002年マスター」にK2HDを採用して作品の新たな可能性を開くという方法は、関わるべきスタッフとスタジオ技術とのコラボレーションという点でバンドのクリエイティブにとって必然的だと感じましたし、とてもエキサイティングな選択肢だと判断したんです。
次ページ続いて、B-T史の中で“異色作”とされる『SEXY STREAM LINER』に迫る