レーベル4社を直撃
<BUCK-TICK歴代アルバム全ハイレゾ化記念>製作陣が語る、B-T名曲ハイレゾ版の聴き所とは?
▼マーキュリー・ミュージックエンターテイメント時代作品
(1997年)
<インタビュー> UNIVERSAL MUSIC STUDIOS TOKYO 藤野成喜氏 |
−− 2人目は、マーキュリー時代のアルバム『SEXY STREAM LINER』のハイレゾ化を担当された藤野さんです。この『SEXY STREAM LINER』は、ノイズやサンプリングを多用しデジタル要素を前面に押し出した内容で、リズムも生ドラムを使わず打ち込みで作られた曲が多数という、BUCK-TICKのディスコグラフィーでは“異色作”とされることが多い1枚かと思います。藤野さんは今回のハイレゾ化の話をきいて、最初どう思われました?
藤野氏: 当社ユニバーサルではこの1タイトルですが、正直にいうと、10数年前の音源ですので最初はマスターテープの状態自体が不安でした。
−− 20年近く前ですもんね…。ちなみに本作のマスターはどういう状態だったのでしょうか?
藤野氏: 本作はDATマスターです。それが再生できるかどうかと不安だったんですが、全てエラーもなく無事にWAVに変換できまして。OKテイクを確認後、変換したWAVデータをProToolsで再生して、その他アナログ機器を接続し、48kHz/24bitでマスタリング作業に入ったという流れでした。
−− それで無事にハイレゾ化が行われたわけだったんですね。なお、いま振り返るとマニアックな“異色作”といわれることが多い本作ですが、いちリスナーとしてはドラムンベースが流行った1997年当時のトレンドにスタイリッシュさも兼ねる、オンタイムで聴いていて格好良い1枚でした。藤野さんとして、本作のハイレゾ化を行うにあたって何かコンセプトはありましたか?
藤野氏: コンセプトは、基本的には「ミックスされた音源を生かしたマスタリング」を行うこと。あと、ハイレゾ音源は高域が伸びているので、低域と高域のバランスに気をつけてマスタリングしています。
−− 高域の再現性が高まったぶんのバランスを取りながら、ミックス音源の良さを活かしつつハイレゾならではの良さを出すようにしているわけですね。最後に、その「ハイレゾならではの良さ」について、藤野さんがエンジニアとして思うハイレゾの魅力とは何でしょうか?
藤野氏: ハイレゾは、CDとは違いオリジナルマスター音源に近く、細やかな音になります。CDでは再生できない「空気感」と「臨場感」を表現できることですね。
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