欧州では曲面型テレビ人気が上昇
<IFA>“次のブラビア”戦略をソニーVPに直撃。HDR対応+有機EL採用は?
■HDRの技術は業界の標準化をイニシアティブを取って推進
−− IFAの会場では、4Kの次のトレンドとして「HDR」が積極アピールされていました。特に御社のプレスカンファレンスで平井社長がHDRの解説をしていたのが印象的でした。
長尾: プレスカンファレンスの前に「どれだけの人にHDRの話が伝わるか」と議論になりまして、その高画質の背景を詳しく説明することにしたんです。なおソニーでは、HDRに関しては以前から取り組んでいますが、現在も大きく2つのアクティビティを進行中です。
アクティビティーの一つは映像配信に関するものです。Amazonが北米とイギリスでHDR映像の配信をしているので、これへの対応を進めています。また、同じようにNetflixとも協議しています。
もう一つは各社のHDR対応フォーマットやスペックを集約していく活動もしていまして、UHD AllianceやCEA(米国家電協会)などと、HDRの収録方式「HDR10」や規格化・標準化などに取り組んでいます。あとは放送系でもHDRをめぐる動きがありますので、BBCなどと議論を進めているところです。
−− HDR対応でBRAVIAの技術はどう活かされるのでしょうか。
長尾: 現在、HDRとともに3つの領域で画質向上を進めています。4K解像度の色域にあわせ、BT.709からBT.2020へのカラースペース拡張はトリルミナスで先行して取り入れていましたし、HDR技術に関しても、ソニーではコントラストを拡大するXDRという技術を昨年から導入しています。信号処理についても、従来から100nit以上の情報を補間するHDRに近い技術を導入してきていました。我々が先行してテレビに搭載してきた技術が活かされる段階に入ったと思います。
■Android TVはソフトウェアアップデートを継続。有機ELの採用予定は現時点ではナシ
−− BRAVIAのソフトウェアについてですが、昨年からAndroid TVに変わりましたね。導入後の反応はいかがでしょうか?
長尾: Android TVの導入を本格的に始めたのは、アメリカが先行して4月から、その他地域では6月以降で、現在はお客様によるフィードバックの、最初の一巡目をいただいている段階です。特に欧米や、アジアを始めた新興国では、Android自体にスマートフォンで親しみがあるので、Google Playからアプリをインストールするといった使い方など「Android TVがどういうものか」ということを最初から理解してもらいやすく、抵抗感なく使えると評価されています。
一方、従来通りのテレビ機能をメインで使用される方からは、チャンネルを変えたりなどの操作性について、少し違和感があるといったフィードバックもいただいていますので、改善できるところは改善していこうとしている段階です。BRAVIAが目指すのは、Android TVとしての使い方を、より良くミックスしたもの。今後もソフトウェアアップデートで、パフォーマンス向上に継続して取り組んでいきたいと思います。
−− パナソニックのブースでは4K有機ELテレビの展示が注目を集めていましたが、ソニーとして、有機ELに対してどのようなスタンスでしょうか。
長尾: 基本的にSVPとしては、液晶テレビに集中する戦略をとっています。もちろん有機ELには有機ELならではの良さもありますが、液晶のバックライト技術が成熟していきている今、価格のバランスも考えると、同じコストであれば有機ELより液晶のほうが強みを発揮できると考えています。
現時点では、ソニーで有機ELを採用するという具体的なプランはありません。ただし、将来的にはあらゆる可能性がありますので、その時々でベストな商品となるようデバイスを評価し、選択していくという考え方で臨んでいきます。