<山本敦のAV進化論 第78回>TOKYO SMARTCAST 武内氏インタビュー
“デジタル地上波最高音質放送”とは? 来春開始「i-dio」キーマンに訊く
「現在DTSと協力しながらデモ音源を制作しています。映画館に迫る臨場感を、放送波によるコンテンツとヘッドホン・イヤホンの組み合わせで再現するのが狙いです。おそらく音楽のライブ音源と最も親和性が高いものと想定していますが、例えば自然の環境音にもよくマッチするのではないでしょうか。番組編成としては、あるチャンネルをずっとサラウンドで流すのではなく、1日のうちに何番組かでDTS Headphone:X対応の音源が聴けるようになるイメージです」。
i-dioのコンテンツを楽しむためには専用チューナーを内蔵する受信端末が必要だ。第一弾として、i-dioのチューナーを搭載するLTE対応のSIMフリースマートフォン「i-dio Phone」が12月21日に発売された。いわゆる格安SIMを装着すればデータ通信や通話に使えるし、SIMを入れなくてもi-dioの受信端末になる。スマートフォンやタブレットは放送と通信のハイブリッドメディアであるi-dioのメリットがフルに活かせるデバイス形態だ。
例えばTS ONEの番組「PREMIUM ONE」から提供が予定されている「Now On Air」機能では、現在流れている楽曲の詳細がアプリのプレイリストメニューから確認でき、さらにリンクを辿って楽曲配信サイトからダウンロード購入ができるワンストップサービスにもフィットする。ほかにもi-dio対応のWi-Fiチューナーも製品化される。本機の価値について、武内氏はこのように説明する。
「i-dioは現状は日本国内で提供されるドメスティックなサービスなので、iPhoneなどグローバルモデルのモバイル端末にチップのレベルから組み込んでいただくことは難しい状況です」。
「Wi-Fiチューナーは、その壁を突破するために開発された端末です。スマートフォンやタブレットにi-dioアプリをインストールして、本機にWi-Fiでつないで放送波を受信、コンテンツを聴取いただけるようになります。i-dioのサービス開始当初はユーザーを増やすため、こちらのWi-Fiチューナーを無料配布するキャンペーンの計画を立てています。また将来的にはUSBスティックタイプの外付けチューナーやドングルにも対応機器のバリエーションを広げて行きたいと考えています」。
■「“パーソナルメディア”としてのラジオのDNAを大切にしたい」
オーディオビジュアル機器にもi-dioは広がっていくのだろうか。武内氏に訊ねた。
「より強化するべきカテゴリーと認識しています。ただ、オーディオビジュアル機器もスマートフォンと同様、グローバルモデルがベースになっていることが多いので、ポートフォリオの段階からi-dioを組み込んでいただくためには摺り合わせが必要になると考えています。まずは音楽業界としっかりタッグを組みながら、TS ONEのコンテンツが“高音質”であることをアピールして、マーケットに対して積極的にプロモーションを仕掛けていくところから固めていく方針です」。
i-dioの特性を活かしながら、通信の柔軟性をサービスに取り込んでいく考えについて武内氏は次のように語っている。
「例えばユーザー数がある程度増えた段階で、アプリから性別や生年月日、郵便番号など基本的な属性データをいただき、よりターゲットを絞ったサービスを展開していきます。例えば性別や年齢でフィルタリングし、ショップのチラシ情報をアプリから提供したり、特定のエリアにお住まいの方々に有用な情報をお送りするといったような方法もあるかと思います」。
i-dioは日本全国を7つのブロックに分け、ローカルと全国ネットの放送を使い分けながら提供できるところが、「県域」単位であるテレビ・ラジオとの違いだ。これに通信の特徴を組み合わせることで、ある商品のCMを全国ネットで流し、ショップなど購入先の詳細情報については属性情報を元にユーザーの最寄りのショップ情報を送り出すこともできるようになる。