<山本敦のAV進化論 第87回>試聴レビューもお届け
11.2MHz対応も視野? キーマンたちが語るDSDストリーミング配信「PrimeSeat」実現の背景と今後の展望
「クラシックの音楽プログラムは着々と種類や数を増やしていいます。一方では『音』を色んな角度から捉えて、ハイレゾならではの臨場感を体験いただけるようなコンテンツも拡充したいと考えています。
例えば公開実験の際には、種子島宇宙センターで実施されたH2Aロケットの打ち上げの様子をDSDストリーミングで流したところ、これがハイレゾの音楽にあまり馴染みのなかったリスナーにヒットしたという実績もあります。ハイレゾで『朗読』のようなコンテンツを流してみるのも面白いのではないでしょうか」(冨米野氏)
先述の有償化については、無料・有料で楽しめるコンテンツを切り分けながら、例えば過去に配信されたコンテンツのアーカイブをいつでも好きな時に聴けるように有料会員向けに揃えることも一つ検討されているようだ。
ほかにも現在はPCでの試聴が中心のPrimeSeatを「モバイル対応」にできる可能性はあるのだろうか。冨米野氏は、現在のところ具体的な計画が明確にあるわけではないとしながら、「いつかは腰を据えて取り組まなければならないテーマ」だと述べている。
「IIJでは格安SIMカードなど個人向けのインターネットサービスとしてIIJmioを提供しているだけに、立場としてはPrimeSeatを自社ブランドのインターネットサービスでも楽しめるようにしたいという使命感は持っています。ただ、当然ながら今のところ一度に利用するデータ量がとても大きなDSDストリーミングをモバイル回線で流してしまうと、あっという間に“パケ死”してしまいますので、その解決方法も含めてこれから真剣に取り組んでいきたいと思っています」
DSD 11.2MHzでの配信についてはどうだろうか。PrimeSeatのコンテンツの中にはマスターを11.2MHzで収録して、配信時に5.6MHzにダウンサンプリングして放送しているものも多いという。
西尾氏は「すでに5.6MHzと2.8MHzを同時に配信できているので、帯域的には恐らく問題ないと思います。まだ11.2MHzにネイティブ対応しているDACチップを搭載するオーディオ機器があまり多くないので、今後製品が増えてきたときにはぜひDSD 11.2MHzの高音質を体験いただけるストリーミングもお届けしたい」と前向きな姿勢を示している。
PrimeSeatでは今年の「東京・春・音楽祭2016」のイベントについても、4月3日に東京・上野の東京文化会館で開催されるプログラム「東京春祭マラソン・コンサート vol.6 Variations(変奏)ー変容する音楽」の模様を、午前11時から20時半までノンストップでDSDライブ配信する予定だ(関連ニュース)。
また、今年からの新しい試みとして、マラソン・コンサートのライブ配信をダイナミックオーディオ 5555、オリオスペック、オーディオショップイセ、のだや仙台店、オーディオショップカンタービレの各店舗の協力を得て「パブリック・リスニング」を実施する計画もあるという。「ほかにも様々なオーディオ関連のイベントにも出展して、音楽ファンの皆様にPrimeSeatを体験してもらえる機会を増やしていきたい」と冨米野氏は意気込みを語ってくれた。
ハイレゾを聴くための環境は徐々に揃えてきたが、DSD再生への対応はまだという方も、この機会にぜひDSDによる臨場感溢れるハイレゾストリーミングの魅力に触れてみてはいかがだろうか。