HOME > インタビュー > 【開発者インタビュー】「DCD-2500NE」はディスク再生に特化して“価格帯最強”を狙った

上位モデルとの並行開発によって得たメリットとは?

【開発者インタビュー】「DCD-2500NE」はディスク再生に特化して“価格帯最強”を狙った

公開日 2016/05/26 10:50 構成:編集部 小澤貴信
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
DCD-1650REの開発技術を、上位モデル経由でブラッシュアップして搭載

ーー DCD-SX11と強い関連のあるモデルであることがよくわかりました。従来モデルであるDCD-1650REとの関係はいかがでしょうか。

出口氏 実はDCD-1650REでは、その前のモデルであるDCD-1650SEをベースに、様々な音質改善アプローチを行っています。今回本機にも使ったフットも、そこで得た成果のひとつです。高密度かつ高剛性のBMC(Bulk Molding Compound)に、ガラス繊維を加えた素材で構成され、下部には高密度フェルトが施されています。

音元出版試聴室に設置したDCD-2500NE。評論家からもそのサウンドは高い評価を得た

このフットは10種類もの試作を重ねて完成させたもので、その効果には自信がありましたが、これまで上位モデルでは使う機会がなかったのです。しかし今回は、DNP-2500NE、PMA-2500NEとあわせて3機種で採用されることになりました。

ーー アンプにもネットワークプレーヤーにも採用されるということは、それだけの性能が認められたということですよね。

出口氏 DCD-1650REの脚を完成させた時に、当時のサウンドマネージャーであった米田(米田晋氏)からもお墨付きをもらいました。DCD-SX11でも使いたかったのですが、PMA-SX11で鋳鉄を使用するということもあり、こちらで違うものを使うというのはおかしいということで鋳鉄に揃えたという経緯がありました。このフットは鋳鉄とはまた違った方向性で、非常に良い音がしています。

DCD-1650REで出口氏が開発したフットは、2500シリーズの3機種全てで採用されることとなった

素材のBMCは樹脂ですが、一般的な樹脂に比べて密度が高いので、それだけでは叩くとプラスチックのような音がします。そのため、BMCにガラス繊維を配合することで、内部損失を調整していきました。すると出音がまるっきり変わるのです。傾向としては、非常にポップで明るくて弾んだ楽しい音がします。フットの底に貼るフェルトの素材も厚みを変えるなど試行錯誤をしたのですが、最終的には東レ株式会社様のGSフェルトを採用することにしました。最後までエクセーヌ生地と迷ったのは今でも鮮明に覚えています。こういった検討を経て、結果的に華やかさがあって、音質担当の山内が掲げる”ビビッド”な音に適したフットになり得たのだと思っています。

価格帯のベストを目指して、高いゴールを設定して設計

ーー 目指した音作りという観点では、DCD-SX11とDCD-2500NEでアプローチの違いはあったのでしょうか。

出口氏 SX11を目指しても、SX11の廉価版にしかなりません。ですから、この価格帯におけるベストを目指して音作りも試行錯誤しました。

それから本機では、超低位相雑音クリスタルの採用や、クロックの電源回路に部品メーカー様と共同開発して音質カスタマイズを行った導電性高分子コンデンサーを用いるなど、クロック周辺についても様々な改善を行っていますが、こうしたクロックへの取り組みはDCD-1650REから着手したものです。これがDCD-SX1とDCD-SX11を経て一巡して、本機でその成果が結実したと自負しています。

DCD-2500NEの筐体内部

ーー 電源部については、2トランス構成のデジタル/アナログ独立電源トランスを搭載しています。

出口氏 トランスはDCD-1650REと同一のものをあえて採用しています。DCD-1650REにはUSB-A、USB-B、同軸、光デジタルの入力がありましたが、それだけの機能を十分に賄える容量を持ったトランスを本機にそのまま搭載しているので、DCD-2500NEでは電源にかなりの余裕があります。電源周りの基板についても、見た目こそDCD-1650REと同じようには見えますが、実はパターン設計が全然違います。この辺りはノイズ対策も含め、上位モデルで得た成果を反映したことで、性能や音質を大きく改善できています。

ーー モデルごとにその開発過程についてお話を伺っていますが、どのモデルでも音質面やノイズ対策の追い込みに時間をかけられているとのことです、今回も最終調整にかなり時間をかけらたのでしょうか。

出口氏 ノイズ対策については、先行するDCD-SX11の成果が反映できた部分もあったの非常にスムーズでした。ですから、音質面により時間を割くことができました。音質を左右するパーツの選定については、測定上の数値が良ければいいというわけにはいきませんので、多くの時間を費やしました。音質検討に充てた時間はSX11よりも長かったかもしれません。

DCD-2500NEにおいて音質検討に用いた時間は、DCD-SX11より長かったのではと語る出口氏

ーー 音質担当である山内氏が徹頭徹尾、開発に関わったモデルであることも、音質検討に時間がかかった理由でしょうか。

出口氏 そうですね。山内の事実上の初担当モデルということもあって、最初からゴールは非常に高いところに設定されていました。

ーー 最後に読者へメッセージをお願いします。

出口氏 DCD-2500NEは、機能こそ絞り込まれていますが、その分のコストは全て音質の向上に投入しています、もしDCD-1650REと聴き比べていただける環境があれば、どれだけ音が変わったのか実感していただけるでしょう。

ただ、それはDCD-1650REが悪かったというのではなく、山内の新しい方向性が結実したということだと思います。“ビビッド”と“スペーシャス”という点を私自身も相当意識しましたが、確かに音楽がとても鮮やかに出てきます、一方で、これまでのデノンの低域のどっしりした部分も継承していますが、音がすごく瑞々しく明るくなっているのは、誰が聴いても明らかだと思います。ぜひ店頭にお好きなCDやSACDをお持ちいただいて、一度ご自身の耳で聴いていただきたいですね。

ーー 本日はありがとうございました。

前へ 1 2

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE