細部までこだわり抜いた新しいマイルストーン
デノンの旗艦ヘッドホン「AH-D7200」の設計思想を、開発キーマンが語り尽くす
■Hi-Fiスピーカーと同様の機構を備えるフリーエッジドライバー
ーー AH-D7200は振動板にナノファイバー素材を採用したフリーエッジ・ドライバーを搭載しています。フリーエッジ・ドライバーは、一般的なヘッドホンのドライバーと比較するとどのような点が異なりますか。
福島氏 一般的なダイナミック型ヘッドホンのドライバーユニットは、PET(ポリエチレン)による振動板を採用しています。私はこのドライバーのことを“Fixed Edge(フィックスドエッジ)”と呼んでいます。なぜなら、金型でプレスされたPET振動板の周囲が、ドライバのフレームに接着されている構造のためです。
一方のフリーエッジ・ドライバーは、いわばHi-Fiスピーカーのドライバーユニットと同じ構造です。周辺の柔らかいエッジに、コーン紙を貼り付けてあります。フリーエッジドライバーはPET振動版に比べて歪みが少なく、低域については動かせる空気の量が大きいことが特長です。
ーー フリーエッジドライバーが様々な長所を備えているのにも関わらず、一般的なヘッドホンでPET振動板が多く採用されているのは、コスト面の理由が大きいでしょうか。
福島氏 その通りです。値段でいうと、フリーエッジ・ドライバーは一般的なPET振動板の5倍以上します。
ーー フリーエッジ・ドライバーを最初に搭載したデノンのヘッドホンはどのモデルだったでしょうか。
福島氏 1番最初に搭載されたのは、2007年に登場した(「AH-D5000」)です。旗艦モデルとしては、AH-D5000に連なる上位モデルである「AH-D7000」で初めて採用されました。まさにこのフリーエッジ・ドライバーが、近年のデノン・ヘッドホンのサウンドキャラクターを作ったといってよいでしょう。ドライバーは自動車でいうところのエンジンのような存在ですからね。
密閉型ヘッドホンにおいて、抜けが良く、かつ低域にしっかりとコシがある音を出すことは、PET振動板では難しいと考えています。フリーエッジ・ドライバーだからこそ可能なサウンドは、今後もデノンのヘッドホンの特長として大事にしていきたいですね。
■振動板にナノファイバーを採用する理由
ーー ドライバーについては、振動板の素材にナノファイバーを用いていることも特徴です。
福島氏 はい。AH-D7000では振動板にマイクロファイバーを使っていましたが、前モデルのAH-D7100からナノファイバーを用いるようになりました。
なぜ振動板にナノファイバーを用いるのかというと、正確なピストンモーションを行うためには振動板は適度な硬さをもっている必要があります。硬くするためにはPETでは不十分なのですが、かといって金属を用いると素材固有の響きが付いてしまい音質には好ましくありません。
ナノファイバーは正確なピストンモーションを行う上で必要な強度を備え、なおかつ、内部損失が大きいので素材固有の響きの付帯もありません。振動板が空気を押し出すことに専念できるのです。
ちなみになぜナノファイバーが内部損失が大きいかというと、ファイバー(繊維)が絡み合って素材ができているので、絡み合うファイバー同士の摩擦で内部損失が起こるのです。この内部損失によって、素材固有の音の色付きを避けることができます。金属や陶器のコップ同士をぶつけたときの音と、紙コップ同士をぶつけたときの音のちがいを想像してもらうとわかりやすいかと思います。
ーー AH-D7200は振動板にナノファイバー素材を採用したフリーエッジ・ドライバーを搭載しています。フリーエッジ・ドライバーは、一般的なヘッドホンのドライバーと比較するとどのような点が異なりますか。
福島氏 一般的なダイナミック型ヘッドホンのドライバーユニットは、PET(ポリエチレン)による振動板を採用しています。私はこのドライバーのことを“Fixed Edge(フィックスドエッジ)”と呼んでいます。なぜなら、金型でプレスされたPET振動板の周囲が、ドライバのフレームに接着されている構造のためです。
一方のフリーエッジ・ドライバーは、いわばHi-Fiスピーカーのドライバーユニットと同じ構造です。周辺の柔らかいエッジに、コーン紙を貼り付けてあります。フリーエッジドライバーはPET振動版に比べて歪みが少なく、低域については動かせる空気の量が大きいことが特長です。
ーー フリーエッジドライバーが様々な長所を備えているのにも関わらず、一般的なヘッドホンでPET振動板が多く採用されているのは、コスト面の理由が大きいでしょうか。
福島氏 その通りです。値段でいうと、フリーエッジ・ドライバーは一般的なPET振動板の5倍以上します。
ーー フリーエッジ・ドライバーを最初に搭載したデノンのヘッドホンはどのモデルだったでしょうか。
福島氏 1番最初に搭載されたのは、2007年に登場した(「AH-D5000」)です。旗艦モデルとしては、AH-D5000に連なる上位モデルである「AH-D7000」で初めて採用されました。まさにこのフリーエッジ・ドライバーが、近年のデノン・ヘッドホンのサウンドキャラクターを作ったといってよいでしょう。ドライバーは自動車でいうところのエンジンのような存在ですからね。
密閉型ヘッドホンにおいて、抜けが良く、かつ低域にしっかりとコシがある音を出すことは、PET振動板では難しいと考えています。フリーエッジ・ドライバーだからこそ可能なサウンドは、今後もデノンのヘッドホンの特長として大事にしていきたいですね。
■振動板にナノファイバーを採用する理由
ーー ドライバーについては、振動板の素材にナノファイバーを用いていることも特徴です。
福島氏 はい。AH-D7000では振動板にマイクロファイバーを使っていましたが、前モデルのAH-D7100からナノファイバーを用いるようになりました。
なぜ振動板にナノファイバーを用いるのかというと、正確なピストンモーションを行うためには振動板は適度な硬さをもっている必要があります。硬くするためにはPETでは不十分なのですが、かといって金属を用いると素材固有の響きが付いてしまい音質には好ましくありません。
ナノファイバーは正確なピストンモーションを行う上で必要な強度を備え、なおかつ、内部損失が大きいので素材固有の響きの付帯もありません。振動板が空気を押し出すことに専念できるのです。
ちなみになぜナノファイバーが内部損失が大きいかというと、ファイバー(繊維)が絡み合って素材ができているので、絡み合うファイバー同士の摩擦で内部損失が起こるのです。この内部損失によって、素材固有の音の色付きを避けることができます。金属や陶器のコップ同士をぶつけたときの音と、紙コップ同士をぶつけたときの音のちがいを想像してもらうとわかりやすいかと思います。
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