同社のマーケティングディレクターが来日
Bluetoothでの24bit伝送を実現する「Qualcomm aptX HD」。その技術と展望を担当者が語る
■aptX HDの技術内容と音質 ー 48kHz/24bitのデータを伝送可能
aptX HDは、aptXと同様のアルゴリズムで、聴覚心理を用いず、ハイレゾ音源のデータ量増加に対応したものと考えればよい。
aptXは音源がCDクオリティー(44.1kHz/16bit)の場合、同等の352Kbpsを適用するが、aptX HDでは最大48kHz/24bitが扱え、その際のビットレートは576kbpsになる。
ここでも注目したいのは、aptX HDが全く新しい技術ではなく、スタジオなどの業務用として実績のあった「aptX Enhanced」をベースにしている点だ。aptX HDでは、Bluetooth通信向けにプロトコルなどが最適化されているが、音質に関わる基本部分はプロの信頼にも足る歴史を持っているというわけだ。
また、音質そのものについては、2015年に、サルフォード大学(イギリス/マンチェスター)で、音響工学を専攻する学生、言わば耳の肥えた被験者30人を集めて聴感テストを実施。結論として、大多数の被験者は48kHz/24bitのaptX HDでエンコードされた音と、オリジナルの96kHz/24bit音源との音質差を聴き分けることはできなかったという。
スペック上は最大1Mbps程度ながら電波状況によって転送レートが低下するBluetooth接続においては、オーディオ用途の場合は、途切れず安定して伝送するために数割の余裕を見ておく必要がある。aptX HDの576kbpsというデータレートは、現実的かつ適正に思える。しかも実質、96kHz/24bitと変わらない音質が確保できるのであれば、途切れにくさが大きなアドバンテージと言えるだろう。
ちなみにaptX HDのS/N比は129dBに達しており、これは世に存在するあらゆるA/DコンバーターやD/Aコンバーターをも上回る。充分な音質と言える根拠の1つだ。
■aptX/aptX HDの広がり ー 続々と登場する対応製品
優れたコーデックも、利用できる機器が少なければ宝の持ち腐れである。その点、aptXは、多くのソース機器(スマホやオーディオプレーヤー)とレシーバー(Bluetoothスピーカーやヘッドホン/イヤホン)に浸透していて、活躍の場が広がっている。
McClintock氏によると、aptXとaptX HDのエンコーダー実装環境はオープンソース化され、Android Oで利用可能となる。複雑な聴覚心理を用いずに圧縮を行うaptX HDは、エンコードの処理も比較的軽くて済むこともあり、今後登場するAndroidスマホの多くがaptX HDに対応する可能性が高い。
すでにaptX HD対応を表明しているスマートフォンを眺めると、世界的にシェアの高いLG製品や、高品位なAV性能で注目を集めるソニーのXperiaなどが顔を揃える。オーディオプレーヤーは、ハイレゾ時代に急伸したAstell&Kernや、ソニーWalkmanの最新モデルがサポートを表明していて、多くのユーザーは気が付けばaptX HD対応のソース機器を所持しているという状況になりそうだ。
■さらに身近になるaptX/aptX HD
aptXは長年プロの支持、民生用オーディオでも高評価を得てきた信頼に足る技術。今回のインタビューで、aptX HDも同様の実績があると分かったのは収穫だった。先述の通り、ソース機器となるスマホやオーディオプレーヤーのaptX HD対応は一気に広がりそうな状況にある。ヘッドホン・イヤホンをはじめとするオーディオレシーバー機器も、上位モデルを中心にaptX HD対応が進むと考えられる。ユーザーとしては、選択肢が広がるaptX HD対応のオーディオ機器の中か、好みの製品を選べば良く、aptX HDは身近な存在になるだろう。
ワイヤレスの利便性は明白で、しかもハイレゾ級の高音質が安定して楽しめるとなれば、ポータブルリスニングがさらに自由で楽しくなりそうだ。
(鴻池賢三)
aptX HDは、aptXと同様のアルゴリズムで、聴覚心理を用いず、ハイレゾ音源のデータ量増加に対応したものと考えればよい。
aptXは音源がCDクオリティー(44.1kHz/16bit)の場合、同等の352Kbpsを適用するが、aptX HDでは最大48kHz/24bitが扱え、その際のビットレートは576kbpsになる。
ここでも注目したいのは、aptX HDが全く新しい技術ではなく、スタジオなどの業務用として実績のあった「aptX Enhanced」をベースにしている点だ。aptX HDでは、Bluetooth通信向けにプロトコルなどが最適化されているが、音質に関わる基本部分はプロの信頼にも足る歴史を持っているというわけだ。
また、音質そのものについては、2015年に、サルフォード大学(イギリス/マンチェスター)で、音響工学を専攻する学生、言わば耳の肥えた被験者30人を集めて聴感テストを実施。結論として、大多数の被験者は48kHz/24bitのaptX HDでエンコードされた音と、オリジナルの96kHz/24bit音源との音質差を聴き分けることはできなかったという。
スペック上は最大1Mbps程度ながら電波状況によって転送レートが低下するBluetooth接続においては、オーディオ用途の場合は、途切れず安定して伝送するために数割の余裕を見ておく必要がある。aptX HDの576kbpsというデータレートは、現実的かつ適正に思える。しかも実質、96kHz/24bitと変わらない音質が確保できるのであれば、途切れにくさが大きなアドバンテージと言えるだろう。
ちなみにaptX HDのS/N比は129dBに達しており、これは世に存在するあらゆるA/DコンバーターやD/Aコンバーターをも上回る。充分な音質と言える根拠の1つだ。
■aptX/aptX HDの広がり ー 続々と登場する対応製品
優れたコーデックも、利用できる機器が少なければ宝の持ち腐れである。その点、aptXは、多くのソース機器(スマホやオーディオプレーヤー)とレシーバー(Bluetoothスピーカーやヘッドホン/イヤホン)に浸透していて、活躍の場が広がっている。
McClintock氏によると、aptXとaptX HDのエンコーダー実装環境はオープンソース化され、Android Oで利用可能となる。複雑な聴覚心理を用いずに圧縮を行うaptX HDは、エンコードの処理も比較的軽くて済むこともあり、今後登場するAndroidスマホの多くがaptX HDに対応する可能性が高い。
すでにaptX HD対応を表明しているスマートフォンを眺めると、世界的にシェアの高いLG製品や、高品位なAV性能で注目を集めるソニーのXperiaなどが顔を揃える。オーディオプレーヤーは、ハイレゾ時代に急伸したAstell&Kernや、ソニーWalkmanの最新モデルがサポートを表明していて、多くのユーザーは気が付けばaptX HD対応のソース機器を所持しているという状況になりそうだ。
■さらに身近になるaptX/aptX HD
aptXは長年プロの支持、民生用オーディオでも高評価を得てきた信頼に足る技術。今回のインタビューで、aptX HDも同様の実績があると分かったのは収穫だった。先述の通り、ソース機器となるスマホやオーディオプレーヤーのaptX HD対応は一気に広がりそうな状況にある。ヘッドホン・イヤホンをはじめとするオーディオレシーバー機器も、上位モデルを中心にaptX HD対応が進むと考えられる。ユーザーとしては、選択肢が広がるaptX HD対応のオーディオ機器の中か、好みの製品を選べば良く、aptX HDは身近な存在になるだろう。
ワイヤレスの利便性は明白で、しかもハイレゾ級の高音質が安定して楽しめるとなれば、ポータブルリスニングがさらに自由で楽しくなりそうだ。
(鴻池賢三)