HOME > インタビュー > Goh Hotodaさん&NOKKOさんが語る「ATH-M50x」ー オーディオテクニカが担う“音の入口と出口”

【特別企画】世界的エンジニアが定番モニターのサウンドを分析

Goh Hotodaさん&NOKKOさんが語る「ATH-M50x」ー オーディオテクニカが担う“音の入口と出口”

公開日 2017/11/10 10:06 構成 編集部:小澤貴信
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
モニターヘッドホンに求められる能力とは?

ーー ATH-M50xのお話を伺う前に、普段Hotodaさんがお仕事でどのようにモニターヘッドホンと関わられているかについて教えてください。

Hotodaさん 基本的な音作りの作業は、私はスピーカーをメインに行っています。理由はいくつかあります。ミキシングの作業では、ステレオ再生におけるセンターイメージだけを取り出して確認したり、逆にセンターイメージを抜いて左右の音だけをチェックするという作業が必要で、これは原理的にヘッドホンでは難しい作業です。それから低音のバランスや体感的な音圧などは、やはりスピーカーでチェックする必要があります。

Hotodaさんの自宅地下に設けられたスタジオ。インターネットを介して、世界中のミュージシャンの楽曲のミキシングを行っている

一方で、いまはものすごい数のプラグインをラップトップ・パソコンの中に収めることができるので、移動中や外出先でも作業を行います。その場合は当然、ヘッドホンでモニターすることになります。スピーカーではわかりにくいノイズや歪みなどを探し出す作業にも、ヘッドホンを使いますね。

優れた帯域バランスで緻密なモニタリングが可能なATH-M50x

ーー 今回は実際にミックスやレコーディングの作業でATH-M50xを使っていただきましたが、そのサウンドについてどのような印象を持たれましたか。

Hotodaさん ATH-M50xはまず帯域バランスが非常に優れていて、音に虚飾がありません。ローもしっかりと出ています。また、コンシューマー向けのヘッドホンは聴き疲れのなさや難聴の問題に配慮し、意外とハイを落としているモデルが多いように感じますが、このヘッドホンはハイもしっかりと伸びています。オーディオテクニカのマイクとは、音の広がりやクセのなさという点で共通した傾向を備えていると感じました。奥行き感もしっかりと再現してくれます。

また、リバーブの減衰がしっかりと聴こえるという点も優れています。どこでリバーブがなくなるのか、フェードアウトのときにどこから無音になるのかを、しっかりと把握できました。

ATH-M50xの特徴を説明するHotodaさん

ーー 実際の作業における使い勝手の面ではいかがですか。

Hotodaさん これはモニターヘッドホンとして重要なポイントですが、装着した際の密閉度が高いです。また、パワーがかなり入力できるのもよいと思いました。

それから、ATH-M50xには3種類のケーブルが同梱されていますね。先ほどの話のようにモニターヘッドホンはラップトップで使うことも多いので、1.2mという短いケーブルが同梱されているのも便利です。持ち運びという点では、本機のように折りたためることも必須と言えます。

ーー 装着感などはいかがでしょうか。

Hotodaさん パッドの感触がとても良いですよね。強いて言えば、もう少しだけ軽いと長時間の作業時に、さらに気にならないかもしれません。


それから、このヘッドホンは音のタイミングの再現が優れていて、タイミングのズレを判断するのに適しています。音がふわりとしたヘッドホンだと聞き逃してしまうような、音のタイミングのズレがわかりやすいのです。ですから、打ち込みで音楽を作っているという方にも使いやすいでしょう。

ーー オーディオファンでも、音楽のタイミングや音の立ち上がりの俊敏さを重視する方が多くいらっしゃいます。そういった方が音質を判断するのに利用できそうですね。

モニターヘッドホンをリスニング用途で使うことの意義

ーー 一般の方がモニターヘッドホンをリスニング用途に使うということについてはいかがでしょうか。

Hotoda氏 リスニング目的でモニターヘッドホンを使うとなると、もちろん理由が必要となります。モニターヘッドホンを使えば、粗(あら)やディティールがよく見えます。私たちエンジニアはモニターヘッドホンを使ってそれらを探し出したり、良しとするかどうかの判断を行うのですから。

しかしモニターの音が全てという意味ではなく、スタジオで求められる音と家庭での音楽リスニングに求められる音というのは、ヘッドホンに限らずスピーカーでもやはり別物です。そういう意味で、いくつかあるうちのひとつとしてモニターヘッドホンを持っているというのは面白いと思います。

ATH-M50xを使って作業を行うHotodaさん。そのサウンドやモニターとして性能を確かめていただいた

ーー 家庭用ヘッドホンで音楽を楽しみつつ、モニターとしてのサウンドも楽しむということですね。

Hotodaさん ただし、モニターヘッドホンですから、長時間使っていると聴き疲れをします。何万色という色が全て見えている状態で画像を編集しているようなものなのですから当たり前のことです。

しかし、ミキシングで使うことを考えたら、自分がある特定の音をモニターから聴いているときに、その背後には無限の音があります。何十というトラックの中から聴きたい音だけにフォーカスして聴くとなると、一般的なヘッドホンではまずその音を見失ってしまいます。

ATH-M50xは、このひとつの音へのフォーカスする力にも優れていると思いました。このあたりも海外で受け入れられているという理由なのではないでしょうか。ミュージシャンの立場からすると、自分の音を正確に戻してくれて、なおかつその音に集中できるというのは非常に大事なのです。こういった特徴を、リスニングに活かすのも面白いです。

ーー ある音だけにフォーカスしてリスニングをするということでしょうか。

Hotodaさん アンサンブルの中からギターだけを聴いてみようとか、そういう使い方も面白いと思います。こういう聴き方はモニターヘッドホンでなければ難しいです。最初に説明した音楽ストリーミングの聴き方とは対極ですね。

ーー あるバンドの音楽を聴くとき、大好きなギタリストの手元を見つめるように聴くなど、そのような聴き方ができそうです。

Hotodaさん その通りですね。また、こういう聴き方についてはイヤホンよりヘッドホンのほうが集中して音を追えると思います。

次ページNOKKOさんの考える理想のモニタリング環境とは

前へ 1 2 3 4 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE