[特別企画]デザインも一新、装着性にもこだわり
解像感も両立、“パナソニックならでは”のワイヤレス+NCヘッドホン「RP-HD600N」開発者インタビュー
ーー 続いてのポイントは、Bluetoothにおける高音質コーデックの採用ですね。LDACとaptXに両対応したことには、正直言って驚きました。
桔梗氏: 最近になって、新たなBluetoothの音声コーデックが登場し、Bluetoothでもハイレゾ相当の高音質が楽しめるようになりました。
一方でお客様のご意見を伺いますと、以前の製品の印象から「ワイヤレスは音が良くない」というイメージを持たれている方も多いことがわかりました。それを払拭したいと思いました。
LDACについては、Android 8.0でコーデック自体がオープンソースになったことにより、標準的に搭載される可能性が高く、これには対応したいと考えました。一方でaptX HDについては、音にこだわったDAPに搭載されているケースが多く、それらがLDACに対応するかはわかりません。ですので、これも押さえておきたいと。より多くのお客様、多くのデバイスに対応するには、この2つのコーデックに対応するのは必須と考えました。
ーー LDACになるとビットレートが高くなりますが、音途切れへの対策でご苦労はありましたか?
鈴木氏: ビットレートが高くなると途切れやすくなるというのはその通りで、特にLDACでは最高で990kbpsと、非常に高くなります。設計開始当初から、これはしっかりケアしなければならないと考えていました。
やはり、根本的に解決するには感度を上げるしかないということで、アンテナの引き回しや位置などいろいろな工夫をし、いまできる最大限の感度を実現できました。これによって、途切れを抑えることができています。
■音質を優先しつつ、広帯域のノイズをカバーしてNC効果を高めた
ーー RP-HD600Nは、ノイズキャンセリング機能も搭載されています。これにもこだわりがあると伺いました。
桔梗氏: これまでのパナソニックのノイズキャンセリングモデルに比べ、広い帯域で効果を出せています。さらに、今回こだわったのは「ノイズキャンセリングを効かせる帯域」です。
鈴木氏: RP-HD600Nは、特に500Hz以上の高い帯域において高い性能を実現しています。ノイズキャンセリングというと飛行機、というイメージが強いのですが、実際には電車内はもちろん、カフェや家庭内などでもよく使われています。そういったところでは、比較的高い帯域の騒音がありますので、そこをいかに消せるかというのが、今回我々がチューニングでこだわったポイントです。もちろん飛行機内での帯域もカバーしており、広い帯域のノイズを抑えています。
ーー ノイズキャンセリングには、A、B、Cの3つのモードがありますね。
桔梗氏: それぞれノイズキャンセリングの効果の強さを表しており、Aは強、Bは中、Cは弱です。ノイズキャンセリングがあまりに強すぎると、お客様によっては圧迫感、閉塞感を感じる場合があります。そこまで強いノイズキャンセリングが必要でない場合には、BやCを選んでいただけたら、快適な使い方が行えます。
ーー ノイズキャンセリングには、ノイズの逆位相の音で打ち消す「アクティブノイズキャンセリング」だけでなく、外音を物理的に遮蔽する「パッシブノイズキャンセリング」がありますね。このうち、パッシブについての考え方を教えてください。
鈴木氏: RP-HD600Nでは、パッシブノイズキャンセリング性能を極限まで高めることはしていません。というのは、ノイズキャンセリング性能だけでなく、音づくりも重視しているからです。パッシブ性能を高めるには、音づくりに有用な穴まで、全部ふさぐ必要が出て来ます。そうすると音質面で妥協することになります。我々はそれをしたくなかったのです。
桔梗氏: 先ほどもご説明した、音の解像感。これはどうしても実現させたかったのです。「解像感とノイズキャンセリング性能を両立させて!」とお願いをしたので、技術も大変だったはずです(笑)。結果として、良いバランスに落とし込めたと思います。
ーー なるほど。ところで本機には便利な機能として、ボイススルー機能も搭載されていますね。
桔梗氏: これは用途がわかりやすい機能だと思います。右手でハウジングを触るだけで、外音が取り込めるというものです。電車や飛行機のアナウンスなどを聞きたいときに使えます。なお、ノイズキャンセリングボタンをダブルクリックすることで、このボイススルーモードに固定することも可能です。
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