開発者インタビュー「常に完璧を目指す」
Shureの新Bluetoothケーブル「RMCE-BT2」、“ワイヤード並みの音質” はこうして生まれた
■Shureの開発理念「常に完璧を目指して挑戦し続ける。」
ーー RMCE-BT2が加わったことで、ケーブル製品もかなり充実しましたね。こうした製品展開は当初から考えにあったのでしょうか?
ショーン氏:Shureのイヤホンは、1997年発売の「E1」に始まり、モデルチェンジの度に改良を重ねてきました。その中で、イヤホン故障の最大の理由として挙げられる「断線」の問題を解決すべく、リケーブルによってイヤホンをより長く使ってもらえるよう、SE535からイヤホン側端子にMMCXコネクターを採用し、プラットフォームとしてスタートさせました。おそらくMMCXを初めて採用したのはShureだと思います。
Shureのイヤホンは、ユーザーにとって決して安いものではないでしょう。断線のたびに再び買い替えなくてはならないというのは難しいことです。リケーブルを可能にすることで、核となるイヤホン部は残したまま、より長く使い続けられる付加価値として、またそれがイヤホン購入へのきっかけとなればと考えました。
今現在では、スマートフォンが普及するなど再生デバイスも大きく進化しました。当初は想像もつかなかったことですが、MMCXコネクターの採用により、ケーブルを変えられることだけでなく、Shureのエンジニアたちの技術の蓄積を用いて、ケーブル自体もアップデートを重ねることで、こうした時代の進化に対応できることは、さらなる付加価値へと繋がる素晴らしい結果であり、非常に面白いことだと思っています。
ーー SEシリーズのイヤホンは発売以来、型番が変わらなくても、中身が何か変更されているのでしょうか?
ショーン氏:イヤホン本体の部分は変えていませんが、イヤーチップに関しては、実は細かな変更を施しています。独自のイヤーチップは耐久性の確保のために、少し取り外しがしにくい点もあるので、着脱のしやすさを逐次追求していますし、耳垢が中に入らないようフィルターを搭載するなど、ブラッシュアップしています。
ケーブルなども大きくは変わっていませんが、私たちは2000年に発売した「E5」の頃からクリアケーブルを採用していて、ユーザーから長期間使うと経年劣化で変色してしまうという指摘があり、この点については変色が起きにくい素材に変更しています。
これは創業者であるシドニー・シュアの言葉なのですが、当社には「完璧な製品を作ることは不可能だとわかっている。それでも常に完璧を目指して挑戦し続ける。」というフィロソフィーがあります。Shureで働く全員がこの想いのもと、一つ一つの製品作りを行っています。ですから、SEシリーズのように、すでに完成した商品であっても、先に説明した通り細かなアップデートを施しながら、常に100%を目指しているのです。
ーー それでは最後に、今後の展開についてお伺いします。今年4月のコンデンサー型イヤホン「KSE1200」、そして今回のBLUETOOTHアクセサリーケーブル「RMCE-BT2」と、精力的に製品を発表してきました。
ショーン氏:はい。私たちは主にプロユース向け製品ブランドとして成長してきました。プロ向け製品ももちろん、これからはコンシューマー市場に目を向け、積極的に製品開発を行っていきたいと考えています。
ーー 先ほどお話にあった完全ワイヤレスイヤホンには、ぜひ期待したいです。それから、そろそろモニターヘッドホンの新モデルなども期待してしまうのですが...。
ショーン氏:そうですね、まだ詳細は言えませんが、私たちは常に多くの製品開発を進めています。
コンデンサー型イヤホンについても、それは静電型のドライバーを採用しているからよいというわけではなく、私たちは静電型が最高の技術だと思っていますが、イヤホンとしてはあくまでも作り方次第だと考えています。静電型は開発が難しいものですが、Shureには世界最高の技術をもったエンジニアたちが揃っていて、だからこそ最高クラスの製品が作り出せるのです。
最近のトレンドとして平面磁界駆動型ヘッドホンなども注目されているのは、もちろん認識しています。常にマーケットを注視して、様々な可能性を模索しながら研究をしています。Shureの持つ最高の技術力をもって、より良い製品を届けていきたいと思っていますので、ぜひ今後にも期待していてください。
(インタビュー:SP DIVISION 平野勇樹/構成:PHILE WEB編集部 川田菜月)