HOME > インタビュー > <対談>DELAはネットワークオーディオをいかに変えたのか? 参入から「N10」登場までをふり返る

【特別企画】山之内正氏と同社代表が語り尽くす

<対談>DELAはネットワークオーディオをいかに変えたのか? 参入から「N10」登場までをふり返る

公開日 2018/12/01 07:00 聞き手:山之内 正 構成:PHILE WEB編集部
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荒木 D10は開発リファレンスとしての特別仕様ですので、基本的にD100で十分な性能を発揮できます。いずれにしろ、ドライブについてもやはり一度できうることを全て投入してやりきらないと、次に繋がらないと考えました。

山之内 それでもやはり、D10が欲しいという要望はあるでしょう。再発売を喜んだファンも多かったはずです

リニア電源を搭載した「N10」とハーフサイズの「N100」

山之内 この秋には、新しいコンセプトのミュージックライブラリーとして「N10」が発売されました。

荒木 新製品のN10は、D10と同時進行していた「リニア電源ユニット」を中核としています。N1シリーズは、機械としてはUSBが5ポート、ディスクドライブが2ポート、操作部分、表示部分もあるフルインターフェースの「サーバー」であり、それを支える高速で強力な電源として、クリアダイナミックパワーサプライと呼んでいる、スイッチング電源とコンデンサバンクを組み合わせた仕組みを開発しました。

「N10」(3TB HDD搭載)648,000円/税抜

山之内 これは正しい選択ですし、このことによってコンパクトな筐体も実現しています。DELAのユーザーからの評価の高いハイエンドのネットワークプレーヤーやUSB-DACにもスイッチング電源を採用しているものがあります。

荒木 一方で、ユーザーニーズとしてはリニア電源へのご期待もいただき、またメルコシンクレッツが発足し、ノウハウの面からも検討しうる状態になったということで、研究開発に着手しました。しかし当然ながら、N1相当の仕様をリニア電源でドライブするには巨大な電源が必要になってきます。このため、電源ユニットに合わせて、本体側も機能を凝縮することになりました。

N10の電源ユニットの内部

山之内 リニア電源の採用に合わせて、本体側も最適化したわけですね。

荒木 内蔵ディスクについては、N1ZS/2Aで開発したHS-S4というマウントメカニズムを前提にドライブを選定しています。SSDも含めた検討の結果、N10に関しては3TBのHDDがベストと判断しました。

N1ZSとN1ZHについても “SSDの音がいいからドライブを変えただけのSSDモデル” という事ではなく、DELAではトータルで設計をしています。N1ZHにSSDを載せてもN1ZSにはなりませんし、逆にN1ZHは “HDDならではの製品” になっています。N100はD100やE100と対をなす製品であり、フルサイズというプラットフォームの中で、お客様が「1HDD+CD(N100+D100)」「2HDD(N100+E100)」を選択できるようにしています。

一方で、ハーフサイズとすることにより、デスクトップでも使用できるということで、前面を傾斜させ、天板までヘアラインを入れたデザインにしています。D100と縦積みすることもできますし、DAC内蔵ヘッドフォンアンプや、DAC内蔵アクティブスピーカーと組み合わせてコンパクトなシステムを構築することもできます。

山之内 ファンレスで、コンパクトに収まっているにも関わらず「N10」の電源は熱を持ちませんね。リニア電源・別筐体化のメリットにはオーディオファンならもちろん期待しますが、期待に応える製品になっています。サーバーを選ぶ上で、3TBという容量がサイズもちょうど良いです。

同時に発売されたハーフサイズの「N100」はエントリーモデルとしての位置づけということですが、このサイズはオーディオNASとしてとても導入しやすいと思います。フロントパネルの傾斜や、ディスプレイ表示についての細かい配慮も効いています。N1シリーズに加えての2機種ということで、ラインナップが広がってきましたが、それぞれの「違い」についてメーカーサイドの考え方も教えてください。

「N100」(1TB HDD搭載)138,000円/税抜

荒木 N1Aがオーディオファン向けのメインライン、おすすめ機器で、これが基準です。N1ZHは、N1Aに対する上位品という位置づけです。グレードアップをお考えの方にぜひご検討いただきたいです。システムによっては、N1ZHとN1ZSは変わらない、もしくはN1ZHのほうが良く聴こえる場合もあるかもしれません。N1ZSは、筐体前面にもリファレンスと入れていますが、デジタルソースとしてはリファレンスとなるハイエンドモデルです。

N1ZSは、特にSSDモデルが欲しいという方へ向けた、DELAでは唯一のモデルになっています。N10/N100は、これまでのN1シリーズでは充足できないニーズを持った方のための製品です。N100はコンパクトさを求める方や、ラック1段にD100と並べたい方向けです。

N1Aとの価格差は、音の差というよりは「容量やインターフェースの少なさ」とお考えいただきたいです。N10はこれまでのデジタルファイル再生ではどうしてもご満足いただけない方向けの製品であり、CDやアナログの音が好きという方に、ぜひお試しいただきたい製品です。

DELAを実現させた“オーディオメーカー”としての歴史

山之内 DELAの歩みを振り返ってみましたが、DELAはネットワークオーディオの楽しみを加速させただけでなく、起爆剤になったとも言えます。あのタイミングでN1A/N1Zが登場していなかったら、ネットワークオーディオの浸透はもっと遅れていただろうというくらいに、DELAが登場した意味は大きかったと感じます。

そして、N1Z/N1Aを実現する上で、かつてハイエンドオーディオを手がけていたバッファローの成り立ちや思想も影響したのではないかと感じています。

次ページDELAが担う領域はこれからさらに広がっていく

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