コンサートで音にこだわる難しさとメリット
鳥山雄司インタヴュー 。世界的ヴァイオリニスト、葉加瀬太郎コンサートの舞台裏を聞く
■再生機器の能力を引き上げることで、良いバランスが取れるようになる
こうした鳥山氏の音に対するアイデアと、それを具現化できる製品が揃ったことで葉加瀬太郎のコンサートは、サウンド面でも高い注目を集めるに至った。「ものすごいリスキー」と言いながら鳥山氏が音響面でこの環境にこだわり続けたのは「葉加瀬太郎を観にいらっしゃる方は、彼のヴァイオリンを聴きに来ている」ということである。
鳥山 正直にいうと、こういうアクセサリーがないなら、ないなりにきちんとやるんです。「これがないとできない」っていうふうになるのは、舞台音響にとっては良くないことですから。ただ、結局何が問題かというと、コンサートではメインスピーカーに加えてステージで音が鳴っているので、メインスピーカーだけではコントロールできない要素が必ずあるんですよ。それを差し引いたうえでも、PAエンジニアがフェーダー立ち上げてミックスして、それを自分がヘッドフォンをして聴いて、いいバランスだと思ったものがそのままメインスピーカーから出ればそれが一番良いんです。最初にアコースティック・リヴァイブ製品を使ってみようと思いついたのは、高級オーディオアクセサリーを使うと皆さんは奥行きがでると言うんですけど、その半面、センターがちょっと引っ込むんですよ。前に張り付いていたものが後ろに行くというか。それですごい極端にいうと、RchとLchがあるじゃないですか。センターってものすごい擬似なんですよ。例えばメインスピーカーでCDを再生した時に「いかに真ん中に音がくるか」っていうのが勝負なんですよ。なんとなく、L/Rに音が散っているのではなくて、L/R、そしてセンターって、バッチリいるみたいな。アコースティック・リヴァイブとかを使うと、これでなおかつ奥行きが出てくるんですよ。この奥行きが出た分だけ、ステージの中で実際に演奏したらちゃんと聴こえるからバランスが取りやすいんです。ちなみに、僕と葉加瀬くんが仕事をする前までは、彼はちゃんと聴こえていなかったみたい(笑)。それをブラッシュアップしようと彼のモニター用にボーズのトールボーイを彼専用に立てるところから始めたんですけど、そのボーズの再生能力を100%引き出す、つまり音響機器の再生能力を上げるのがアコースティック・リヴァイブは得意なんだろうな、と思います。
この4月から始まるツアーは葉加瀬太郎、高嶋ちさ子、古澤 巌を中心としたアコースティックセットになるため、鳥山氏は音響のみの担当となるそうだが、「楽器編成が変われば、またプランを考えなきゃいけない」とアイデアを練っているところである。ギタリストとしてさまざまなジャンルのステージやレコーディングに関わり続けた彼だからこそのアイデアが、また再び葉加瀬太郎のコンサートを彩ってくれることは間違いない。世界最高のプレイとそのサウンドを最高の水準で楽しめる。そんなコンサートをぜひ一度体験してみて欲しい。
鳥山雄司
●プロフィール:1981年慶応大学在学中にセルフプロデュースによるソロ・デビューアルバムを発表。その後1996年にスタートしたTBS系ドキュメンタリー番組「世界遺産」にテーマ曲「The Song of Life」を提供、大ヒットオムニバスアルバム「image」にも収録され、自身の代表曲となる。ほか、フジテレビ系「フジサンケイクラシック」ゴルフ中継テーマ曲「Let me go」をはじめとする数多くの名曲をリリース。現在までにソロアルバムを15枚、また、学生時代からの朋友 神保彰(ds)、和泉宏隆(key)とのユニット「PYRAMID」によるアルバムを5枚発表している。アレンジャー、プロデューサーとしても松田聖子、吉田拓郎、葉加瀬太郎、CHARA、宮本笑里、宮本文昭、伊東たけし、小松亮太、WeiWei Wuu等、幅広いジャンルのアーティストを数多く手掛ける一方で、アニメーション「ストリートファイターII MOVIE」「鋼鉄三国志」、ゲーム「幻想水滸伝V」、映画「神様のパズル」「クヌート」等のサウンドトラックも担当。2014年には自身のレーベル「Super Paw」を設立。精力的にその活動の幅を広げている。
http://www.toriyamayuji.com
2月21〜22日、26日の三日間、東名阪ツアー「LIVE PYRAMID4」も注目!
鳥山雄司が参加するPYRAMIDの最新作として、実に7年振りのリリースとなった『PYRAMID4』。神保彰(ドラム)、泉宏隆(ピアノ)、そして鳥山雄司による実力派メンバーがPYRAMIDのために作曲した新曲を始め、自身が影響を受けたバンドのカバー曲も含む全11曲を収録! ゲストには葉加瀬太郎(ヴァイオリン)のほかHanah Spring(ヴォーカル)、有坂美香(ヴォーカル)、mabanua(ヴォーカル)も参加するなど、圧倒的なエネルギーを感じられる一枚となっている。
本作を引っさげ、来週21日からは東名阪ツアーも決定! ぜひ新作も合わせて、そのサウンドを存分に楽しんで欲しい。
●2019年2月21日(木)ビルボードライヴ大阪
[1st] Open5:30pm Start6:30pm / [2nd] Open8:30pm Start9:30pm
●2019年2月22日(金)ブルーノート名古屋
[1st] Open5:30pm Start6:30pm / [2nd] Open8:30pm Start9:15pm
●2019年2月26日(火)ブルーノート東京
[1st] Open5:30pm Start6:30pm / [2nd] Open8:20pm Start9:00pm
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