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世界で評価される高音質の舞台裏

ハーフスピード・マスタリングを支える重要人物 ― マイルス・ショーウェル氏(アビー・ロード・スタジオ)インタビュー

公開日 2019/06/21 18:29 季刊・アナログ編集部
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ショーウェル氏がハーフスピード・マスタリングを手がけた作品のなかで、近年最も話題を集めたのがビートルズの『ホワイト・アルバム』である。その製作時について、彼はこう振り返る。

「『ホワイト・アルバム』の新しいリミックスは、ジャイルス・マーティンとサム・オケルによってアビー・ロード・スタジオで行われました。特筆すべきは、彼らはビートルズのすべてのリールをアーカイブしてあるということです。つまり、マルチトラックテープのスペースを確保するためにバウンスされたトラックであっても、曲の要素をそれぞれで引き出すことができるんです。『ホワイト・アルバム』の中には、4トラックのものもあれば8トラックのものもありますが、レコーディングの際はいずれもテープのチャンネルをすぐに使い果たしてしまうので、新しいテープにコピーしながらオーバーダブのためのスペースを確保していたんです。この事前にバウンスされたテープはすべてアーカイブ内にあるので、最新のDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)を使えばより広い範囲でリミックスできることになります。ジャイルスとサムによる新しいミックスは、私の手元に来た段階で素晴らしいものでしたので、実はマスタリング工程でそれほど多くのことはしていません」

カッティング中のショーウェル氏

ショーウェル氏によると、この『ホワイト・アルバム』のようにアナログマスターから作業できることは極めて稀で、アナログ盤の場合もハイレゾリューションのデジタルマスターから作業を行うことが多いそうだ。

「どのレコード会社も貴重なマスターテープが輸送中に万が一にでも紛失してしまったら……と考えるのは当然です。特に海外からの仕事に関しては、マスタリング前のハイレゾリューション・スペックによるデジタルコピーから仕事をすることになります。その一例がABBAの『アライバル』と『ジ・アルバム』です。ABBAのマスターテープはスウェーデンからでることは決してありません」

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