世界で評価される高音質の舞台裏
ハーフスピード・マスタリングを支える重要人物 ― マイルス・ショーウェル氏(アビー・ロード・スタジオ)インタビュー
マスタリングしたレコードのサウンドで高い評価を獲得しているショーウェル氏にとって、アナログ機器と同時にデジタル機器、それもマスタークロックが極めて重要というのは興味深い話だ。「デジタルの音が限りなくアナログの音になる」というコメントのとおり、突き詰めればデジタルとアナログが目指すサウンドは「どこまで自然なサウンドに迫れるのか」ということで共通するのである。
「私が目指しているのは、可能な限り自然で音楽的に魅力的なサウンドです。常に自分がリスナーであることを忘れずに、リスナーが愛する音楽的な作品を作るべきだと思っています。ですので、もし音楽的にEQやコンプレッサーが必要となるのであれば私はそれらを使うことを恐れませんし、ミックスが手元に届いたときにそれを聴いてすごいと思えば、私はそのままハーフスピードでカッティングします」
アナログはアナログのままが一番良いとはしばしばオーディオファンの間で言われていることであるが、アナログ全盛期では存在し得なかった最先端のデジタルテクノロジーを駆使することで、まったく新しい音楽性を獲得したレコードを生み出せる可能性があるということも事実だ。
ショーウェル氏がハーフスピード・マスタリングを行ったサウンドからは、往年の名盤達から新らしい魅力を感じさせてくれる。ショーウェル氏が手がけた作品は、アビー・ロード・スタジオのサイトからチェックできる。ぜひ、アナログとデジタルが高度に融合したそのサウンドを体験してみて欲しい。