米本社のエンジニアにインタビュー
Sonosの新サウンドバー「Arc」が“プレミアム”である理由。開発者に聞いた
■スリムな筐体にSonosの最先端技術が詰まっている
Davies氏はArcの開発において重視した「明瞭なダイアローグ再生」を、搭載するすべてのスピーカーユニットをソフトウェアで制御することで実現していると説明する。
Trueplayチューニングによりルームアコースティックを調整する際に、ユーザーがArcと正対して音を聴くスイートスポット以外の場所に移動しても、メリハリを効かせたダイアローグ、音楽のボーカルを再現できるよう、音場を整える。3基のトゥイーターは、特に高域成分の再現性を高めることや、ドルビーアトモスのコンテンツを再生する時には高さ方向の成分を力強く伸びやかに鳴らせるよう、音響設計を追い込んできた。
その上でさらにBeam等のサウンドバーも採用する「スピーチエンハンスメント(声成分の強化機能)」を合わせることにより、ハードとソフトウェアの両方で意図した性能を引き出している。なお夜間のシアター再生時には効果音の強さを抑え、ダイアローグの明瞭度を上げる「ナイトサウンド」も効果的だ。Sonosアプリから機能オンを選択できる。
Arcの筐体内部に天井側に向けて配置された2基のアップファイアリングスピーカーユニットは、ドルビーアトモスのコンテンツを再生する場面では高さ成分の立体的な音響空間を作り出す。通常の2ch、5.1ch音源を再生する時には低域を受け持ち、豊かな包囲感を作り出す役割を担うという。
Davies氏は「Arcは音楽再生を楽しむためのスピーカーとしても活用して欲しいと考えて、チューニングはニュートラルなバランスに整えることに腐心しました」と語っている。
Arcは壁掛けも、ラックの上に置く設置にも、どちらにも対応する。テレビの映像にに筐体がかぶらないよう、Arc本体の高さを押さえ込みながら、限られた筐体内部のスペースをフルに活かすため、プロダクトデザインチームと連携してトライアル&エラーを繰り返してきたとDavies氏が振り返った。
そしてArcもBeamと同様に、部屋の中の遠く離れた場所からでも、音声アシスタントがユーザーの音声コマンドを正確に認識できるよう、ファーフィールド音声キャプチャーに対応したアレイ構成のマイクユニットを内蔵している。
■インテリアと自然に調和するプロダクトデザイン
プロダクトデザインの側面から見たArcの特徴については、Simmons氏に聞いた。
横から見ると楕円形のArcの筐体を、ぐるりと270度、つなぎ目なく囲う美しいプラスチック製グリルが採用されている。グリルは全面に76,000個以上のパンチ穴を空けて音の透過性を確保し、モールド加工による繊細な曲げ加工を施した。理想的な音響特性と強度を実現するため、数年間に渡って試作とテストが繰り返されてきたという。
Arc本体の横幅は55インチ前後の薄型テレビのサイズ感に最適化している。Simmons氏は「テクノロジーを前面に打ち出すのではなく、インテリアとの自然な調和を感じられるエレガントなデザインとしています。生活空間に溶け込むオーディオのデザインを追求することは、Sonos製品に一貫するポリシーでもあります」と話している。
ArcはeARCに対応するHDMI端子を搭載しているので、同じeARC対応テレビをハブにし、複数のコンテンツプレーヤーやゲーム機、セットトップボックスなどをつなぎ、高品位で迫力あるサウンドをArcで楽しむことができる。
フロント側にはArcの稼働状態を知らせるためにLEDライトを設けているが、内蔵する明るさセンサーと連動するオートディミングコントロールも搭載している。リスニングルームの照明を落とすと自動的にLEDランプも明るさを落とす。
本体が稼働時に消費する電力はPlaybarよりも低く、4.3W駆動時で約26%もの省電力化を実現している。商品パッケージの梱包材に96.1%もの紙材料を使い、エコフレンドリーなサウンドバーとして隅々まで完成度を磨き抜いた。