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最初から正解を求めず「楽しむ」。コラボヘッドホンに現れる大黒摩季の“ポリシー”とは
■取り繕わない「ありのままの良さ」という魅力
—— 「ありのままを伝えること」が大黒さんのポリシーだというお話しがでました。ベースモデルに「SE-MHR5」を選んだのは何故でしょう。
大黒さん: 今回イヤホンやBluetooth対応モデルも含めていくつか聴き比べてみたんですけど、私の場合、フルオーケストラからゴリゴリのロック、ローエンドまで使ってるクラブミュージックとかまで割といろんなジャンルの音楽を録っていて。なのですごくレンジが広いし、音量自体もわざと全体をフラットにしないで曲ごとにレベルを変えてたりするんですよ。そういうのをちゃんと再生してくれた。
それと、比較的「個性のないもの」がよかったんです。
—— 個性のないもの。
大黒さん: 大黒摩季から「個性はいらない」とかいう言葉が出るとイメージと違うかも知れないですけど(笑)、音に関しては、クラシックとかロックとかどんなものを聴いても大丈夫な、ニュートラルなものが良かったんですよね。こちらが作った音がそのまま伝わるし。どちらかというと引き算するよりは「足りなきゃ足せばいいじゃないの!」っていう方が建設的だなって。
病気から休んで戻ってきてから、細かいことを気にしなくなって、一皮剥けたというか。たとえばオシャレするとき、自分の自信が無いところを隠すためにデフォルメする……それって疲れますよね? 自分が健康で、ありのままが綺麗であれば、着るものに翻弄されなくて済む。似合わないなら似合わないでそれでいいだろうって、最近思うようになったんですよね。
だからLOWが盛り盛りなサウンドが好きな人とかには物足りないかも知れないけど、足りなければ自分で足してください(笑)。
—— 大黒さんは昨年12月のサブスク配信開始の際もマスタリング現場に立ち会ったりと、音にはこだわりがおありだと思います。そんな大黒さんにとっての「ありのままの音」って、どんなものなのでしょう。
大黒さん: いま音楽を聴くのって、スピーカーよりもヘッドホンやイヤホンが多いですよね。サウンドを作る側としては、周りの環境に影響を受けない密閉空間で聴いてくれるようになったから、ある意味計算がつくようになったんです。
でも売ってるヘッドホンを色々聴き比べていくうちに、低音がガッツリ出るものとか高音がきれいなものとか、いろんな個性があるんだなーって。しかもそれにイコライザーをかけて調整できるわけでしょ? そうなると、音源側はデフォルメしない、本当にナチュラルでベーシックな状態にしておいた方がいいなって。フランスパンみたいなイメージ。
—— フランスパン。
大黒さん: フランスパンって、最低限度の素材の美味しさでできていて、そこにバターなんかをつけて味を盛っていくわけじゃないですか。そういう発想で、ベースになる音源をナチュラルに、ニュートラルに保っていれば、どんな個性のヘッドホンで聴いてもtoo muchになりすぎることはないなと。最初に聴くヘッドホンの音質を作り込みすぎちゃうと、もともとの楽曲の良さが伝わらないんですよね。
—— 今回のコラボヘッドホンは、そういった大黒さんの音に対するこだわりを再現できるモデルだと思いますか?
大黒さん: できていると思います。可能なら開発からやりたいくらいだったけど(笑)、今回は“コラボ”っていうことで、候補にあげていただいたなかでは比較的私の思っているものに近い音質だと思います。
私たちが普段使ってるプロのモニター用ヘッドホンよりレベル的なパワーはそんなにないけれど、音像もある程度あるし、周りの騒音も抑えてくれるし、耳にも優しいし。
イヤホンで難聴になっちゃう子が増えてるじゃないですか。音の振動を直接鼓膜に叩きつけるって、やっぱり負担が大きいと思うんです。だから、耳の周りのエアーを通して鼓膜を揺らして、体にバイブスを伝えるっていうヘッドホンの方が、私の感覚で言うとナチュラルな構造だなって感じます。
今回のコラボモデルを初めて買うヘッドホンにしてもらえると嬉しいな。良い音だから。若い頃に衝撃を受けた楽曲が耳に焼き付いているように、まず良い音を体験してみる機会になって欲しいです。
音に間違いも正解もないけど、いろんなヘッドホン、いろんな音楽がある“飽食の時代”だからこそ、チョイスに疲れた人はこのコラボヘッドホンみたいな「1」に戻ってみてほしい。そうすると「5」とか「10」とかの魅力も分かると思うんですよね。
今回のコラボヘッドホンで、「ありのままの良さ」というのをキャッチしてみて欲しいなって思います。