名作映画のテーマ曲を作曲者が指揮
今年最注目! ジョン・ウィリアムズのライブ盤6バージョンを評論家とプロデューサーが聴きまくった
ジョン・ウィリアムズ「ライヴ・イン・ウィーン」(Amazon)が、オーディオ/ビジュアルファンの間で大きな話題になっている。
その理由として挙げられるのは、誰もが知る名作映画のテーマ曲を、作曲者自らがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(以降ウィーン・フィルと表記)を率いて演奏したアルバムであること、そして本タイトルが名門ドイツ・グラモフォンから発売されているということ。さらにCD、LP、ハイレゾでリリースされ、CDはBD付きのデラックスバージョンも用意されているなど、多彩なメディアが用意されていることも特徴だ。
もし今年、オーディオ/ビジュアルのイベントが開催されていたら、多くの現場で最も再生され、注目を浴びたタイトルになっただろう。
そこで今回は、クラシック音楽への造詣が深い音楽プロデューサーと2人のオーディオ評論家が、音と映像のクオリティチェックを行い、本作の音質・画質を評価。ただ試聴するだけではなく、制作の背景まで広く解説した鼎談をお届けする。
土方久明氏(以下、土方) 今回はオーディオ評論家の小原さん、そして音楽プロデューサーの渋谷さんをお迎えし、オーディオファイルに話題沸騰のジョン・ウィリアムズ 「ライヴ・イン・ウィーン」 について語り尽くしたいと思います。
本タイトルは、CD、アナログ、ハイレゾ、ストリーミング、そしてBDと、多数のソースが出ています。それぞれどんな音質なのか、CDの国内盤と海外盤には音の違いがあるのか。また、BD盤の映像も確認したいということもあり、小原さん宅の200インチスクリーンで徹底視聴します。渋谷さんには、プロデューサーから見た録音の特徴や、録音現場の裏側も語っていただきたいと思います。
というわけで、今日は心ゆくまで喋りまくりましょう! しかもこの企画のために、渋谷さんがウィーン・フィルから、直々にメッセージをもらっているとのことです! こちらは最後に紹介しますね。
小原由夫氏(以下、小原) まずファイルウェブ読者の皆さんにお伝えしたいのは、この企画には「様々なメディアが出ている本タイトルを、それぞれどのように楽しむべきか」という意図があるということです。
渋谷ゆう子氏(以下、渋谷) よろしくお願いいたします。
■国内盤 CD(UHQCD)と輸入盤CDを聴く
土方 まずは本タイトルの基本情報から。録音は2020年1月で、ニューイヤーコンサートの会場として著名なウィーン・フィルの本拠地、ムジークフェラインザール(楽友協会・黄金の間)で開催されました。
渋谷 アルバムは、リハーサル2回と観衆を入れた本番の録音から制作されています。
土方 それでは基本となるCDから聴いていきましょうか。CDで注目したいのは、日本国内で限定販売されているデラックス盤です。UHQCD/MQA-CDに加え、通常盤CDには含まれない6曲が追加されたDolby Atmos採用のBlu-rayディスクも付属しているのです。
今回はUHQCD/MQA-CDを通常のCD方式で聞いた後、輸入盤のCDを聴きます。視聴楽曲は「インペリアルマーチ」です。
ーー 国内盤を再生した後、輸入盤CDで同曲が流れた瞬間、一同から「音が全然違う!」と驚嘆する声が飛び交う。
渋谷 ショックなくらい音が違いますね。輸入盤は音が柔らかく繊細で、ウィーン・フィルの音楽作品として非常によくできていると思います。好き嫌いでいうと、輸入盤の音の出方が好きです。
土方 国内盤は高域が若干アグレッシブに感じます。ここまで違うと、マスターが違う可能性もありますね。
渋谷 プレスマスターの違いでしょう。差がここまで出ると比べる楽しさは増しますが、制作側にとっては怖さもありますね。
小原 国内盤は音が硬いですね。なおかつ若干粗く聴こえます。
土方 特に今回のような音を出し切るシステムで聴いた場合の音の差は大きかったですね。アキュレイトなバランスの出方は輸入盤かな、という気もしますが、音にメリハリがある印象の国内盤を好む人もいるかもしれません。
渋谷 国内盤は、良い意味でマイクで録れた生素材の良さが出ているように聞こえます。非常にクリアという感じです。どちらもサウンドステージの表現が素晴らしい。第一、第二バイオリンが向かって左、右にビオラを客席側にしたオーケストラ配置の定位が非常に明確に表現されています。なおかつこのホールの響きの特性をうまく捉えている。さすがの録音と編集です。
小原 ここで分かったことは、国内盤と輸入盤で大きく音色が違うということで、輸入盤はマスタリングで整えられたような音がしましたね。今回はMQA-CDを通常のCD再生で聴いていて、MQAデコード無しの状態ですので、そこは差し引きしたいところです。そして両者とも、ステージングの表現には差がないように聞こえます。どちらにせよ、改めて素晴らしい録音だと思いました。
渋谷 本タイトルの録音を担当したチームは、ニューイヤーコンサートも担当しているドイツのテルデックススタジオです。ニューイヤーコンサートの時にチーフエンンジニアだった方が、本タイトルでもエンジニアとして参画しています。プロデューサーはギュントラー氏で、ドイツのデルモルト音楽大学でトーンマイスターコースの教授もされている方。つまり、録音から編集まで、ウィーン・フィルの録音に精通した、クラシック録音のプロフェッショナルで構成されているんですよ。しかもサラウンドの制作としては世界的に認められている高いスキルを持つチームですね。
土方 のちほど聴くブルーレイディスクの再生が楽しみになりました。
その理由として挙げられるのは、誰もが知る名作映画のテーマ曲を、作曲者自らがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(以降ウィーン・フィルと表記)を率いて演奏したアルバムであること、そして本タイトルが名門ドイツ・グラモフォンから発売されているということ。さらにCD、LP、ハイレゾでリリースされ、CDはBD付きのデラックスバージョンも用意されているなど、多彩なメディアが用意されていることも特徴だ。
もし今年、オーディオ/ビジュアルのイベントが開催されていたら、多くの現場で最も再生され、注目を浴びたタイトルになっただろう。
そこで今回は、クラシック音楽への造詣が深い音楽プロデューサーと2人のオーディオ評論家が、音と映像のクオリティチェックを行い、本作の音質・画質を評価。ただ試聴するだけではなく、制作の背景まで広く解説した鼎談をお届けする。
土方久明氏(以下、土方) 今回はオーディオ評論家の小原さん、そして音楽プロデューサーの渋谷さんをお迎えし、オーディオファイルに話題沸騰のジョン・ウィリアムズ 「ライヴ・イン・ウィーン」 について語り尽くしたいと思います。
本タイトルは、CD、アナログ、ハイレゾ、ストリーミング、そしてBDと、多数のソースが出ています。それぞれどんな音質なのか、CDの国内盤と海外盤には音の違いがあるのか。また、BD盤の映像も確認したいということもあり、小原さん宅の200インチスクリーンで徹底視聴します。渋谷さんには、プロデューサーから見た録音の特徴や、録音現場の裏側も語っていただきたいと思います。
というわけで、今日は心ゆくまで喋りまくりましょう! しかもこの企画のために、渋谷さんがウィーン・フィルから、直々にメッセージをもらっているとのことです! こちらは最後に紹介しますね。
小原由夫氏(以下、小原) まずファイルウェブ読者の皆さんにお伝えしたいのは、この企画には「様々なメディアが出ている本タイトルを、それぞれどのように楽しむべきか」という意図があるということです。
渋谷ゆう子氏(以下、渋谷) よろしくお願いいたします。
■国内盤 CD(UHQCD)と輸入盤CDを聴く
土方 まずは本タイトルの基本情報から。録音は2020年1月で、ニューイヤーコンサートの会場として著名なウィーン・フィルの本拠地、ムジークフェラインザール(楽友協会・黄金の間)で開催されました。
渋谷 アルバムは、リハーサル2回と観衆を入れた本番の録音から制作されています。
土方 それでは基本となるCDから聴いていきましょうか。CDで注目したいのは、日本国内で限定販売されているデラックス盤です。UHQCD/MQA-CDに加え、通常盤CDには含まれない6曲が追加されたDolby Atmos採用のBlu-rayディスクも付属しているのです。
今回はUHQCD/MQA-CDを通常のCD方式で聞いた後、輸入盤のCDを聴きます。視聴楽曲は「インペリアルマーチ」です。
ーー 国内盤を再生した後、輸入盤CDで同曲が流れた瞬間、一同から「音が全然違う!」と驚嘆する声が飛び交う。
渋谷 ショックなくらい音が違いますね。輸入盤は音が柔らかく繊細で、ウィーン・フィルの音楽作品として非常によくできていると思います。好き嫌いでいうと、輸入盤の音の出方が好きです。
土方 国内盤は高域が若干アグレッシブに感じます。ここまで違うと、マスターが違う可能性もありますね。
渋谷 プレスマスターの違いでしょう。差がここまで出ると比べる楽しさは増しますが、制作側にとっては怖さもありますね。
小原 国内盤は音が硬いですね。なおかつ若干粗く聴こえます。
土方 特に今回のような音を出し切るシステムで聴いた場合の音の差は大きかったですね。アキュレイトなバランスの出方は輸入盤かな、という気もしますが、音にメリハリがある印象の国内盤を好む人もいるかもしれません。
渋谷 国内盤は、良い意味でマイクで録れた生素材の良さが出ているように聞こえます。非常にクリアという感じです。どちらもサウンドステージの表現が素晴らしい。第一、第二バイオリンが向かって左、右にビオラを客席側にしたオーケストラ配置の定位が非常に明確に表現されています。なおかつこのホールの響きの特性をうまく捉えている。さすがの録音と編集です。
小原 ここで分かったことは、国内盤と輸入盤で大きく音色が違うということで、輸入盤はマスタリングで整えられたような音がしましたね。今回はMQA-CDを通常のCD再生で聴いていて、MQAデコード無しの状態ですので、そこは差し引きしたいところです。そして両者とも、ステージングの表現には差がないように聞こえます。どちらにせよ、改めて素晴らしい録音だと思いました。
渋谷 本タイトルの録音を担当したチームは、ニューイヤーコンサートも担当しているドイツのテルデックススタジオです。ニューイヤーコンサートの時にチーフエンンジニアだった方が、本タイトルでもエンジニアとして参画しています。プロデューサーはギュントラー氏で、ドイツのデルモルト音楽大学でトーンマイスターコースの教授もされている方。つまり、録音から編集まで、ウィーン・フィルの録音に精通した、クラシック録音のプロフェッショナルで構成されているんですよ。しかもサラウンドの制作としては世界的に認められている高いスキルを持つチームですね。
土方 のちほど聴くブルーレイディスクの再生が楽しみになりました。