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<山本敦のAV進化論 第202回>

ソニー「Xperia 1 III」が到達した究極のAVクオリティ。キーパーソンに聞く進化のポイント

公開日 2021/06/16 07:00 山本 敦
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ただ、元がステレオ音声のコンテンツでも、Xperia 1 IIIのドルビーアトモス機能を使うとよりリッチなサウンドが楽しめる。 端末のオーディオ設定に入り、Dolby Atmosの項目をオンにする。詳細設定として「ダイナミック/映画/音楽/カスタム」のモードが選べる。映画モードやダイナミックモードではステレオ音声のソースをアップミックスして疑似サラウンド化した後に、コンプレッサー調整により低域を中心に音に厚みを持たせる。また、映画モードにはソニー・ピクチャーズ・エンターテインメントとの協業によりダイナミックモードより控えめなコンプレッサー調整が施され、音源の距離や方向の再現性、音の移動の再現性において、よりクリエイターの意図が忠実に再現されている。音楽モードを選ぶと、後者のコンプレッサー調整のみが働く形になるが、好みで音楽コンテンツを再生する際にパワフルなサウンドを楽しみたい時に効かせると良いだろう。

ドルビーアトモスのモード選択ができる

「360 Reality Audio」対応。ドルビーアトモスと使い分けて楽しむ方法

Xperia 1 IIIはソニー独自の立体音楽体験「360 Reality Audio」(以下:360RA)のサウンドを内蔵スピーカーで再生できる初めてのスマートフォンだ。本機には360 RA対応のハードウェアデコーダーと、2基のスピーカーで立体的な音場を作り出すバーチャライザーが内蔵されている。つまりスマホ単体で迫力あふれる360RA再生が楽しめるポテンシャルを備えている。

Xperia 1 IIIは360 Reality Audioのハードウェアデコーダーを搭載。本体の内蔵スピーカーによる360 Reality Audioコンテンツのネイティブ再生が楽しめる

ところが360RA対応のモバイルコンテンツについても、本稿を筆者が執筆している2021年5月末時点ではまだ「これからの拡大を待つ」段階にある。またドルビーアトモス対応のコンテンツと同様に、Xperiaが搭載する360RAのハードウェアデコードエンジンに処理をオフロードできるサービスに、日本国内向けのものが見当たらない現状がある。

海外を中心にサービスを展開するTIDALでは360R対応であり、かつXperia 1 III(Xperia 5 IIも対応)によるハードウェアデコードにより、鮮やかな立体音楽体験が楽しめるコンテンツとプラットフォームが整っている。もし現在個人でTIDALのアカウントを取得して、サブスクリプションサービスを利用している方は Xperia 1 IIIで試してみることをおすすめする。

なお360RA対応コンテンツを配信するアプリに、任意のヘッドホン・イヤホンを組み合わせて立体音楽体験を楽しむことも可能だ。こちらも同じくXperia 1 IIIのハードウェアデコーダーが活かせるコンテンツはTIDALのみになる。日本国内でも早く360RAをベストな環境で楽しめるようになることを期待したい。

aptX Adaptiveの96kHz/24bit再生にはソフトウェア更新で対応

Xperia 1 IIIにはステレオ音源から、360RAの効果に近づけたバーチャル再生が楽しめる「360 Spatial Sound」(以下:360SS)という新機能が載っている。例えばAmazon Music HDやSpotifyなどの音楽配信、リッピングやダウンロードによりXperiaの本体に保存して「ミュージック」アプリで再生する、ハイレゾリューションオーディオ以外の音楽コンテンツに広く対応する。

360 Spatial Sound機能が新設された

さらにソニーのアプリ「Sony | Headphones Connect」を使って、ユーザーの耳の形に最適化した「個人最適化」データを作成すると、ソニーの認定ヘッドホン・イヤホンで360 Spatial Soundを含む360RA系サウンドを再生した時に一段高いサラウンド効果が得られる。

Sony | Headphones Connectアプリからユーザーの耳の形を写真で撮影。個人最適化を行う

ドルビーアトモス機能に対する360SSの位置付けについて、ソニーの笠原氏は「スタジオで制作されたばかりのコンテンツを聴いているような体験を目指した音楽リスニングのための機能」であると説明する。

360RA独自の360度全天球に広がる音場感と、オブジェクトオーディオの移動により生まれる立体感に近い描き込みは聴き応えがある。笠原氏によると、マルチチャネル音声へのアップミックスを行った後、ヘッドホンで再生できる2chのデータに落とし込むバーチャライザーについては、360RAと同じアルゴリズムがXperiaにも組み込まれているという。コンプレッサー調整については、ドルビーアトモスよりも360SSの方はやや控えめな味付けであるようだ。声や楽器、リズム音の輪郭線の描き込みが繊細だ。音楽コンテンツをターゲットに見据えたナチュラルなサラウンド感だ。ドルビーアトモスと使い分けながら楽しみたい。

ほかにもワイヤレスオーディオ再生をハイレゾ相当のクオリティで楽しめるLDACや、無線・有線による音楽リスニングにAI処理を加えてハイレゾ相当の音質にアップコンバートしながら聴ける「DSEE Ultimate」も引き続きXperia 1 IIIに搭載した。

Xperia 1 IIIにはクアルコムのモバイル向けプレミアムSoCの最新プラットフォームである「Snapdragon 888 5G Mobile Platform」が搭載されている。Xperia 1以来、シリーズにはクアルコムの最新BluetoothオーディオコーデックであるaptX Adaptiveが採用されている。

高音質と低遅延伝送を特徴とするaptX Adaptiveコーデックに対応する

春にクアルコムが発表した「Snapdragon Sound」のサポートについて、笠原氏は検討中であり何も決まっていないと回答しているが、aptX Adaptiveの96kHz/24bitワイヤレス伝送への対応については、Xperia 1 IIIとXperia 10 IIIがともに時期は未定ながらも、将来のソフトウェアアップデートで対応を予定しているようだ。

スマホとBluetoothオーディオ機器の組み合わせによるハンズフリー通話の音質を高める技術として、クアルコムがaptX Adaptiveのサブセットという形で提供する「aptX Voice」にはXperia 1 IIIは対応を済ませた形で出荷される。あとは同じaptX Voiceに対応するBluetoothデバイスの商品化、発売を待ってその実力を試してみたい。

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